第349話 揉め事
突然の機械種べリアルによる仲間への間引き宣言。
あまりの脈絡もない内容の提案に呆気にとられる俺達。
しかし、そんな俺達を他所に自説を展開するべリアル。
「レジェンドタイプ、グレーターデーモンは良いとして、後は……そのストロングタイプまでかな。それ以下はマスターには不要。マテリアルと従属容量の無駄だと思うよ」
微笑を絶やさず、朝食のメニューについて感想を述べるような気安い口調。
「機械種使いには従属限界があるのだから、従属する機械種は厳選すべきだよ。いくら軽量級だって数が集まれば、容量を圧迫する。だから、そこのエンジェル、エルフ、グレムリン……、まあ、そのラビットはマスターのお気に入りみたいだから1機くらいは残しておいても構わないかな。何せ筆頭……なんだよね。ははははっ」
朗らかに笑うべリアル。
しかし、完全に目が笑っていない。
その青い目から迸るのは、おそらくは嫉妬の光。
魔王を差し置いて、ラビットが筆頭と言うのは我慢ならないということか。
「というわけで、早速、君達は自壊してくれないかい?そんなことまでマスターの手を煩わすのは本望ではないだろう?マスターのことを思うのであれば潔くここで散るべきだよ」
べリアルは優雅な所作で片手を前に翳して、笑みを深くする。
それは舞台で独り芝居を演じているかのような振る舞い。
しかし、その機体から立ち昇る威圧感は正しく魔王そのもの。
魔王の笑みを向けられた森羅達は、蛇に睨まれた蛙のごとく身を固くするのみ。
反論もできず悔し気に奥歯を噛みしめる森羅。
今にも泣きそうな表情を浮かべている天琉。
ただ一機、廻斗だけはムッとした顔でべリアルを睨み返している。
そんな様子の森羅達を歯牙にもかけず淡々と話を進めていくべリアル。
「おや、不服なのかい?それはいけないな。従属する機械種なら、一番にマスターのことを考えるべきだ。もし、君達にそんな度胸が無いのなら……」
その目に狂気にも似た殺意が宿る。
それだけで辺りの空気が凍り付いたような錯覚に陥ってしまいそうだ。
べリアルは一歩だけ森羅達へと足を進めて、傲慢な態度で言い放つ。
「ボクが君達の介錯をしてあげようじゃないか。光栄に思うといいよ」
べリアルの翳した手の平から生まれる青白い光球。
ただ存在しているだけで夜の闇を払う光量を称えたエネルギーの塊。
それはやがて十数個に分割し、蛍のようにフワフワと舞いながら、べリアルの周りを漂い始める。
一つ一つの大きさはビー玉で程度でしかないが、その中に潜む熱量はいかほどのものなのか。
べリアルが得意とするのはマテリアル燃焼器による獄炎と、原子核を操るマテリアル量子器によって行使される限定的な核融合。
あの白の遺跡を吹っ飛ばした核熱であれば、その熱量は数万度は下るまい。
ただの一つ光球でさえ、森羅はおろか天琉でも耐えきることはできないだろう。
「さあ、頭を垂れて死を受け入れよ。君達はその死を以ってマスターのお役に立てるんだ。後のことはこのボクに……」
「そこまでです」
ピョンピョン
その時、べリアルの前に立ち塞がったのは、2機の機械種。
俺の筆頭従属機械種たる白兎。
そして、次席であるヨシツネ。
我が悠久の刃メンバーの1番と2番。
これ以上の狼藉は許さないとばかりにべリアルの前に立ちあがった。
また、さり気なく豪魔が腕組みを解き、片膝を立てた状態へと移行。
そして、秘彗も俺を庇うような位置へと移動。
おそらく豪魔はイザとなれば森羅達の盾となる準備をしているのだろう。
秘彗は起こるかもしれない戦闘の余波から俺を庇おうとしているようだ。
自分が従属する機械種の仲間の絆に、思わず笑みが零れそうになる。
今まで築き上げた関係は無駄ではなかったのだと嬉しさがこみ上げてくる。
さて、俺達の仲間へ突きつけられた今回の課題。
俺が出て行けば話は早いが、ここまず白兎達に任せることにしよう。
俺は一歩だけ後ろに下がり、この後の展開をしばらく見守ることに決めた。
森羅、天琉、廻斗に向け酷薄な笑みを浮かべていたべリアルは、自分の前の2機の姿に怪訝な表情を向ける。
「ふうん……、レジェンドタイプ、邪魔をするんだ?」
「勝手が過ぎますよ、べリアル殿。我らの生死を決めるのは主様のみ。貴君の行動は従属機械種の権限を逸脱しています。それ以上事を進めるようなら拙者が相手になりましょう」
右手を軽く刀の柄頭に置きながら、べリアルの行いに対し警告するヨシツネ。
「へえ?ボクを止められるとでも思っているの?君一人で」
「何をおっしゃる。ここには我らの筆頭もいらっしゃいます」
ピョンピョン
ヨシツネは足元の白兎をさり気なくアピール。
白兎も自分を無視しないで!とばかりにその場で飛び跳ねている。
「………分からないな。どうしてマスターも………君達も、そのラビットを特別扱いするのか……」
冷たい目でパタパタと跳ねる白兎を見据えるべリアル。
「それはもう………ハクト殿であるからとしか言いようがありません」
しみじみとべリアルの問いに答えるヨシツネ。
その声からはどこか苦笑じみたニュアンスがにじみ出ている。
俺を除けば白兎との付き合いが一番長いからな。
白兎の今までの不可思議な行動が頭を過れば、そんな感じになるのも仕方が無い。
「フン!たかが軽量級のクセに……」
ピコピコ
べリアルの悪態に耳を振って一言申し入れる白兎。
「…………ああ、それは分からないでもないが、所詮……」
フリフリ
「たかが人間相手だろう?それに何の意味が………」
パタパタ
「!!! 言うじゃないか?後悔しても知らないよ」
ピョンピョン
「ほう…、分かってるのか。しかし…」
耳をパタパタ、足とトントン。
稀にピョンピョン跳ねながら、身体全体を使ってべリアルと話し込む白兎。
……白兎の奴、べリアル相手に一歩も引かずに良くやるなあ。
相手は魔王にして、元緋王。
元ネタである魔王べリアルは、弁舌に優れ、法律に精通する弁士という一面も持つ。
何せ、悪魔側がキリストを告訴した裁判では、サタンの代わりに代理人としてべリアルが出席し、その弁舌を振るったくらいだ。
機械種べリアルのスキル構成もそれに倣い、『交渉(最上級)』『弁論(最上級)』といった話術系スキルから、『法学(最上級)』『犯罪学(最上級)』『心理学(上級)』という学術系スキル、そして、『詐欺(最上級)』『欺瞞(最上級)』『演技(上級)』『外交(上級)』までそろっている。
白兎が交渉人(機械種限定)のスキルを持つとはいえ、口で言い負かし、納得させるのは並大抵のことではない。
それでも仲間としてこれからやって行く為には絶対に避けられない道ではある。
ここはボルトとディアの仲を取り持った白兎の手腕に期待してみるか…
まあ、傍から見たら、耳をフリフリ踊っているだけの白兎相手に、べリアルが独り言をつぶやいているようにしか見えないけどな。
白兎の交渉人スキルは機械種限定だから、人間相手には通じない。
辛うじてマスターである俺には白兎の言いたいことが理解できるのだが、ここに他の人間がいたら、何をやっているのかさっぱりだろう。
べリアルと白兎の奇妙なやり取りは数分間続けられ、やがて……
「ふうん。口では何とでも言えるよ。そんな大口ばかり叩いて・・・…」
突然、何かに気づいたかのように目をハッとさせて黙り込むべリアル。
その繊手を顎に当てて、考え込むポーズを取ったと思えば………
「……おかしい。ラビットがこんなに流暢にボクと論争するのもそうだけど……そもそも、コイツ、喋ってないのに何で言っている意味が分かるんだ?」
あ……………
そこに疑問を持ったのね。
そう言えば、いつの間にか白兎がボディランゲージで会話できるようになったことを、誰も疑問に思わなかったなあ。
「……思念を飛ばしているのか?しかし、受信したログは無い。電波を発信した様子も見えない。亜空間通信か?だが、空間マテリアルを使用すればボクに分からないわけがない」
じっと白兎を見据えながら、べリアルは思案顔でブツブツと検証を続けている。
「どういう方法を使ったのか分からないが、ボクの晶脳にコイツの言いたいことが届いているのは間違いない。ボクが故障でもしていない限り……」
形の良い眉を顰めて、悩ましい表情。
高貴な美貌が歪む光景は、ともすれば淫靡な雰囲気にも感じられる。
その仕草だけで、下心を以って助けようとする人間が群れを成すのではないだろうか。
魔王だけあって、一つ一つの所作が酷く人間の欲望を刺激する。
コイツを従属させたマスターは、いずれ悪の道に誘惑され堕落していくのではないかと思わせるほどに。
「なるほど……、ただのラビットではないということか。我がマスターの戯れで筆頭の任を受けているのではなさそうだ…………面白い!」
突然、表情を一変させ、歓喜に打ち震えるように破顔するべリアル。
「では、我らの筆頭のお力を拝見させてもらうことにしよう!さあ、その塵芥どもをレジェンドタイプとともに庇うと良い!ボクの劫火に耐えられるのであれば!」
べリアルの周りを漂う青白色の光が勢いをつけて旋回し始める。
グルグルと規則性を以って、獲物を狙う群体のように。
その様子を受けて、ふう…とため息一つ、やれやれとばかりに首を左右に振る白兎。
これ以上の交渉は不可能と判断し、獲物を狙う四足獣ごとき低い姿勢を取る。
また、隣のヨシツネもゆっくりと腰を落とし、刀の柄を握りしめた。
理から逸脱した規格外の仙獣機、白兎。
伝説に謳われた剣豪機種たるヨシツネ。
我がチームの頂点である2機が対するのは、古より封印されていた魔王型。
炎と法則を司る地獄の公爵 べリアル。
彼らがぶつかり合えば、その勝敗の行方は当然……
「白兎とヨシツネが組めば、ベリアルを抑えることができるだろう。ただし、白兎もヨシツネも無傷では済まない。一機ずつならベリアルの方が戦力では上だからな。ここで白兎の実力を示すと言うのも一つの手ではあるが・・・・・・」
口の中だけで予想を呟きながら、俺の前の秘彗を横切り、向かい合う3機の間へと向かう。
「マスター!危ないです」
「大丈夫。ここからは俺の仕事だ」
留めようとする秘彗を手で制止して、そのまま足を進める。
流石にこの辺りが限界だ。
言い争いまでは黙認しても、仲間同士での戦闘は厳禁。
しかも相手は魔王。
廻斗、ボルトとディアの時のような試合で決着なんて、期待する方が難しい。
3機がぶつかり合えば、間違いなく中破、大破以上の損傷を双方が負うであろう。
場合によっては五色石ですら修復できないような状態になるかもしれない。
とても容認できるものではない。
白兎、ヨシツネで止められないのであれば、もう俺が出て行くしかないのだ。
向かう先は無形の戦気がぶつかり合う戦場。
僅かな切っ掛けを以って、戦塵の火蓋が切って降ろされる寸前の鉄火場。
ただの一機で街や軍隊、時には国さえ滅ぼせる力を持った超高位機種同士のにらみ合いの最中へと進む。
ただ無造作に。
コンビニにおやつを買いに行くくらいの気軽さで。
なぜならどちらも俺の仲間であるのは間違いないのだから。
ただ、先にべリアルには釘を刺しておかないといけない。
それはもちろん……
「え!マ、マスター!近づくと危ないよ。ボクの周りには超高熱のエネルギー体が……」
フラッと無防備に自分へと近づく俺に、血相を変えて慌てるべリアル。
「ああ、それは気にするな」
「気にするなって……」
しかし、そんなことはどうでも良いとばかりに返す俺に困惑の表情を見せる。
「こんなモノは………ホレッ!」
「あ、危ない!」
ベリアルの警告を無視して軽く手を振るい、ハエでも払うかのように旋回する青白い光球を払い落とす。
パシュ パシュ パシュ
ボフウウウウウッ!!!!
俺の手に触れた瞬間、膨大な熱量が発生。
辺りの空気中に含まれた水分が一瞬で蒸発し、俺の周囲気温が一気に数百度近くまで上昇。
機械種であればともかく、こんな間近でこの熱量を浴びたら、通常の人間ならば全身火ぶくれ状態でのたうち回るだろう。
……ふむ、こんなものか?
光球が俺の手に触れた部分はもっと温度が高かったはず。
少なくとも数万度はあったと思うけど、その熱量が影響を及ぼしたのは、直接触れた部分のみ。
どういう原理かわからないけど、マスターである俺に影響が出ないよう、範囲が限定されたエネルギー体であったようだ。
普通に考えて数万度の熱がこの地上に顕現したら、数十mの範囲は即死圏内だ。
森羅達だけを破壊して、近くにいる俺への影響を最小限に抑える為のコイツなりの配慮と言うことか。
どうやらベリアルはかなりの精度で熱量をコントロールできるらしい。
その配慮も超危険区域内に飛び込んできた俺のせいで無意味になったけど。
数万度の熱など、俺にとってはお湯がかかった程度の熱さしか感じない。
平然とした態度でべリアルへと向き直る。
「………良かった、無事だった。でも、なぜ?」
そんな様子の俺にベリアルは呆然としたままの表情で呟いた。
「なぜ…と言われてもな。こういう仕様だとしか言いようがない。お前のマスターは、お前が思っているよりも規格外なんだよ」
「規格外……、でも、人間、いや、機械種ですら耐えられる熱量ではないのに……」
目の前の信じられない現象に、唖然とした顔を見せるベリアル。
今まで散々偉そうに宣っていた美貌の貴公子とは思えない表情を晒している。
コイツと出会った際に喰らったあの核爆発に比べれば、屁みたいなものだろう。
あの時の記憶はブルーオーダーによって消し飛んでしまっているから、ベリアルにとっては俺の力を見るのは初めてのこと。
ただの人間が自分の能力を歯牙にもかけないというのは、理解の範疇外であるのは間違いない。
さて、ベリアルの間抜け面を皆に晒してやったから、俺としてはこれくらいで済ませてやりたいが……
そっと片手を伸ばし、ベリアルの細首を正面からガシっと掴む。
「な、なに?」
「ちょいとオイタが過ぎたみたいだな」
俺はベリアルの首を握りしめたまま、機体ごと片手で持ち上げる。
片手ネックハンキングツリーとでも言うのだろうか。
姿は俺と同じ年くらいの少年に過ぎないが、機体の重量は流石に機械種と言うこともあり、100kg以上はありそうだ。
それでも俺の闘神パワーを以ってすれば、片手どころか指一本でも持ち上げることができる。
「ぐっ……マ、マスター……」
ベリアルは俺に首を締め上げられて、苦し気に顔を歪ませる。
少女と思えるくらいの細い首であるが、その強度は流石に魔王型。
俺の手に感じられる強度は鉄や鋼などとは比べ物にならない程強固なモノ。
俺も知らない特殊合金製なのであろう。
たとえ重量級の怪力でも、コイツの首をへし折るのは不可能なのではないだろうか。
ただ、俺の前では何の違いない。
物理に限定すれば、俺の手が届く範囲ならば、俺の力に不可能は無いのだから。
ミシミシミシ
徐々に手の力を強めていくと、ベリアルの首から金属が軋む音が響いてくる。
全力で握りしめれば間違いなくこの細首を握りつぶすことができるが・・・
別にベリアルを破壊するつもりはない。
コイツの発言は皆を傷つけ、俺を苛つかせたものの、俺の為を思っての提案なのだし、間違ったことを言ったわけじゃない。
感情の面を別にすれば、ベリアルの言う間引きも機械種使いであれば、良くある話なのだ。
機械種使いに従属限界がある以上、強い機種を手に入れたら、弱い機種を破棄していくのが当たり前。
大抵の場合は仲間に譲ったり、売却したりするが、それができない場合は現地で破壊することもある。
なぜなら従属限界を超えれば、溢れた機種がレッドオーダーする危険性があるから。
機械種使いにとって、機械種はかけがえのない相棒であり、同時に、便利に使い捨てられる存在。
この世知辛いアポカリプス世界を生き抜くためには、仕方のないことなのだ。
俺は真っ平ごめんだが。
「うーん……、言いたいことは白兎が全部言ってくれたからなあ」
俺は俺流で従属する機械種を扱う。
それは俺の心の安定の為でもあり、俺が俺である為だ。
なぜなら、俺が従属する機械種達は俺のモノだから。
機械種の効率的な運用や、世界の仕様なんかに俺のモノは奪わせない。
そう、ウバワセルワケニハイカナイ!!!
「なあ、ベリアル……」
持ち上げていたベリアルを首を掴んだまま降ろし、無理やり真正面に向かい合わせる。
その大きく見開いた青氷の瞳を覗き込みながら、ただ、俺の心の底からの声を聞かせてやる。
「一言しか言わないぞ……………オレカラウバウナ!!」
!!!!!!!!!
雷に打たれたかのように機体を震わせるベリアル。
その顔に浮かぶのは驚愕と恐れ。
また、俺の一言に、周りのメンバー達も一斉に身を固くしたようだ。
俺の中の内なる咆哮から発せられる覇気は、魔王にさえ立ち向かった勇者達でさえ慄かせた。
辺りに生まれた奇妙な沈黙。
それは本来月夜の荒野には相応しいモノであったのだろう。
その沈黙は1分少々続き、それを破ったのは、俺の目の前の、今回の元凶であるベリアル。
「我が君。了解した。ボクの忠誠の全ては貴方に」
陶酔したのような上気した顔で俺への忠誠の言葉を口にする。
「……その言葉、嘘じゃないだろうな」
「もちろん。今後、彼等には手を出さないよ。マスターにとって害にならない限り」
「…………害になるとお前が判断したら、破壊するのか?」
「まさか。きちんと確認はとるさ。信じられなければ、このまま破壊してくれて良いよ」
ベリアルは俺の問いに対し、忠誠と敬意が溢れた瞳で見返してくる。
その態度、その言葉に一片の曇りもなく、到底嘘をついているようにも思えないが……
コイツの忠誠は確かなのだろうが、森羅を狙わないと言った部分については不安が残る。
忠誠心が暴走する奴なんて、物語でも腐る程いる。
俺に良かれと思って、戦場で誤射を装うことだってあるかもしれない。
当面の間は、コイツを戦闘で使うのは止めておいた方が良さそうだ。
………というか、普段外に出しておくのも良くないな。
何せ、アライメントは極悪。
虚飾と邪悪の申し子。
いつ、また良からぬことを企んでもおかしくは無い。
「ベリアル、命令だ。スリープ状態へ移行せよ」
とりあえず、七宝袋へ収納しておこう。
完全に問題が無いと確信できるまでは、眠ってもらうことにしよう。
「ふふふ、了解したよ。冷たく暗い微睡の中で呼んでもらえるのを待っているから。おやすみなさい、愛しい我が君よ」
余韻を引く儚い笑みを浮かべながら、囁くように眠る前の別れの言葉を口にするベリアル。
青氷の瞳の光量がプツンと落ちて、薄い朧光を灯すだけとなり、その活動を停止。
俺の命令通りスリープ状態へと移行した。
「ふう……、全く、厄介な奴が仲間に入ったモノだ」
ベリアルを七宝袋へと収納してから、大きくため息をつく俺。
これから新たな旅が始まると言うのに、開始早々チームが崩壊しかねない大トラブル。
「先が思いやられるね、こりゃあ」
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