スラム編

第1話 スキル選択

 闇の中、光るモニターの前に座っていた。


 画面には「あなたはこれから異世界へ飛ばされます。生き抜く為のスキルを選んでください」というメッセージとともに見覚えのある文言が並んでいた。



「弓兵」、「耕作」、「計略」、「奇襲」、「猛将」、「妖術」、「官吏」……



 これ、古代中華系戦略シミュレーションゲームの「スキル」か?


 武将となり、「スキル」を身に着けて、立身出世しながら、天下統一を目指していくやつ。まあ、身に着けるといっても最大5つまでしか覚えられないが。


 どうやらモニターの前のマウスとキーボードで選択できるようになっているようだ。


 とりあえず、ゲームを始めた時のように「スキル」一覧から有用そうなものを選んでみる。

 やはり戦国の世に出るのであれば、武力系と軍略系は押さえておきたいが。


 ん?「スキル」一覧からここに載っているとは思わなかった「スキル」群を見つけた。これらは天下統一を一定条件以上で達成しないと出てこないはずだが。



「武神」、「謀神」、「殺神」、「軍神」、「農神」、「千計」、「海王」……



 これらを選んでもいいのだろうか?チート「スキル」ばっかりだが。




 よし、これだな。


「闘神」と「仙術」





「闘神」

 軍を率いるのであれば「軍神」の方が強いし、一騎討ちに強く、周りの部下をどんどん育成していく「武神」も魅力的だ。また、戦略・戦術・軍政等バランスよく軍事系が強化される「戦神」も良かったかもしれないが、ここはやはり、武力最高であり、戦場で一騎当千の力量を発揮する「闘神」がいいだろう。なにせゲームでは個人戦最強を公式でうたわれていたし。

 まあ、軍を率いるより、一人で暴れている方が楽だからな。



 そして、「仙術」


 仙術を使えるようになることはもちろん、取得すると体調を崩すことがなくなり、実質寿命を持たなくなる。また、あらゆる行動で仙術ボーナスを得られるようになり、正しくチート「スキル」最高峰と言える。

 戦場での天候変化や風向き変更、果ては雷雲を呼んでの落雷攻撃等、まさに大魔導士のごとき活躍を披露することとなるだろう。


 この二つを選択したところで、「スキル」の文字が薄くなり、選択できなくなってしまった。

 そりゃ、この2大チートスキルを選択したからなあ。スキルポイント?がなくなってしまったか。これでキャラ作成は終了なのだろうか?



 いや、まだ、画面の下の方に文字の入力欄があったようだ。



【あなたは選んだスキルとともに異世界に飛ばされます。「スキル」の他に望みたい能力・環境・アイテムはありませんか?】



 うーむ。他に望みたいものはないかと言われてもなあ。昔のネット小説でよくあった「宝物庫」や「剣製造」なんかは中華系戦国シミュレーションとイメージが合わないし。ここは絶対正義の「アイテムボックス」や「鑑定」かなあ。



 ………ちょっと待てよ。異世界に行ってしまうと俺の人生といってもいいネット小説巡りはどうなるんだ。さすがに「仙術」でもどうにもならないだろう。それに日本食や現代スイーツなんかは絶対手に入らない。チョコレートやケーキ、ポテチにコーラ無しの生活に俺は耐えられるのか。いや、絶対に耐えられない自信がある。



 ならば、答えは一つ。



「異世界に行っても今の生活環境(衣・食・住と娯楽を含む)を維持したい」



 これで良し!完璧だな。



 さあ、いつでも異世界に飛ばすがよい!



 画面から光があふれ、一面が白に染まっていく……







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