第13話 桜の下でリスタート
私は単位制高校に転校した。特急電車で2駅の距離だった。最低でも20分は電車の中にいなければならない。駅から学校は近く、2番目の高校のような激しい坂はなかった。
単位制なので、1日2コマから4コマくらいで帰宅することができた。さらに始業は10時。朝が弱い私にはよい環境で、負担は格段に減った。さらに課題と呼べる課題はほぼなく、長期休暇のときの宿題もないと聞いていた(それは本当だった)。
万が一留年しても、5年まで学校にいることができた。3年で卒業する人もいれば、4年や5年かけて卒業する人もいた。同級生が10代とは限らず、20代や30代の人もいた。聴講生といって、単位を取るわけではないけれども授業を聞きに来る人もいて、その人たちは大概が主婦だった。私の新しい学校での新しい友達は、その聴講生の方たちだった。
多くの人が中学卒業後に直接そこに進学してくる人たちだったが、私達のクラスは編転入の人たちだけのクラスだった。つまり、前どこか別の高校に在籍していたことのある人たちが、何らかの事情で、その高校に来たということだ。そのクラスにも友達ができた。彼女たちは腐女子で、アニメや同人誌に詳しかった。いわゆるボーイズラブの本も読んでいた。私はさっぱりわからなかったが、見せてもらった同人誌の作家さんはとても絵が上手だった。
少なくとも1番目の高校の受験までは、勉強しかしてこなかったような私だった。私の知らない世界を知っている彼女たちを心からすごいと思った。世界にはこんなものもあるのだと、興味がわいた。そもそも同人誌がどこで売っているのかもわからなかったし、家庭の事情により通販サイトは基本的に使えなかったため、買うことはなかった。
4月は順調に過ぎた。友達もできたし、学校は負担が少なく通いやすかった。居心地もすごくよかった。私は存分に楽しんだ。
担任の先生に海外の大学に行きたいというとびっくりされたが応援してくれた。多様な事情を抱えたその高校で長年教鞭をとっていても、海外の大学に行きたいという人はいなかったようだった。
私は日本の大学に進学してから交換留学をするか少し迷いがあったのだが、先生は私が日本に戻る気がないことを知っていたので、それならもう海外に行っちゃったほうがよいのでは?と背中を押してくれた。
もしも合格したら先生を家に招待して、一緒にワインでも飲もうと笑い合っていた。私が行く予定の国はワインが有名で、先生はワインが好きなようだった。
調子が再びおかしくなるのは、ゴールデンウイークが明けたころだった。
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