TURN.15「リターンマッチ目前」

 ------運命の日。

 20時を経過した今、ついに運営より発表が言い渡される。


 特定のエリアでのみ出現した謎の黒騎士。

 あれは。それの先行登場であったのだ。


 その名は【黒騎士・トリニティ】。

 世界創造に携わったと言われる伝説の神の従者。そんな騎士が魔物となって蘇った怪物なのだという。


  ----弱点不明。衝撃的な強さ。

  -----腕に自信あるプレイヤーたちよ、この強敵に勝てるか……。


 煽り文句。運営が言うには“歴代最強のモンスター”だという。

 推奨レベルも90以上と高めに設定されている。このゲームにある程度どころか、特別上級職を手に入れるくらいにはやり慣れたプレイヤーしか挑戦権は得られないというのだ。


 既に日本全国の有名プレイヤーなどが参加表明を上げている。すでにいろんな動画チャンネルや掲示板でも、この謎のモンスター・黒騎士トリニティについての攻略予測が開始される。


 今までにないタイプの状態異常や攻撃パターン。そしてウィークポイント。

 ありとあらゆる点で不明な箇所が多いイベントを前、M.V.P.sの精鋭達は雄たけびを上げる。運営からの挑戦状に挑む気満々な人達がほとんどだった。


 ここ、スター・ライダーの面々も当然名乗りを上げていた。

 スノーハイトに暗日は奇跡的に休みが取れた。エイラもアップデートの日は休みであるらしく参加することが出来る。そしてゴーストとJACKの二人も忙しい用事もないために参加可能だ。


 あとは中学生組のホッパー達である。

 あれからレベルも上がっていき、それぞれ参加レベルに達成している。ただ問題があるとすれば……推奨レベルギリギリの参戦。そして実力と自信。

 ボーダーラインすれすれの参加となる三人には厳しいミッションとなるだろう。


 -----参加するかどうか。

 スノーハイトは三人に答えを求めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 会議が終わり、それぞれ解散。 

 スノーハイトは明日も仕事なので早めにログアウト。暗日とエイラの二人も夜勤の仕事が控えているために離脱。ゴーストとJACKの二人は別のイベントをこなすためにギルドハウスを後にした。



 残されたのはホッパーとユーキとメグの三人。

「あはは……言っちゃったね」

 高難易度ミッション。黒騎士トリニティの討伐。

「最近になって凄く自信がついたというか……行けると思って」

 ホッパーとユーキ、メグの三人は……当然の如く、参加を決意したのだ。

「だけど出来るかな? 私達に」

 推奨レベルギリギリである自分たちにクリアは出来るのだろうかとメグは首をかしげている。運営のメッセージによれば、弱点などが分かれば推奨レベルギリギリのメンツでも勝てるようには設定されているらしい。

「まぁ見た感じメチャクチャ強そうだよね。根性と度胸でいつも窮地を脱っしてきたわけだけど……はてさて~。今回ばかりは上手く行くかどうか~?」

 弱点や攻撃パターン、他諸々の情報は全て控えているために以前の“隠しステージ”にて黒騎士と対峙していないメンツ、ネットで情報を集めていないメンツには超絶不利。しかも肝心なことにその情報ページを見ても、弱点を発見できたメンツはほとんどいないらしい。たった三十分程度の出現という事もあって、その短い時間で攻略できる面々は早々いなかった。

 それほどのステージにクリアが望めるのだろうかとメグは当然不安にもなる。

「……次は、勝つ」

 ホッパーは立ち上がり、拳を鳴らす。

「絶対に勝つ!! 勝つぞぉおおーーーっ!!」

 彼は一度黒騎士の手によってコンティニューされている。それどころか新しい状態異常の餌食にもなってしまっている。

 これだけの失態を繰り返し、彼の心には深い傷を負っている。だがそんな彼にリベンジのチャンスがこんなにも早くやってきた。


 勝てるか勝てないかどうかじゃない。

 勝つ。ホッパーは次こそ勝利して見せると言い切ったのだ。


「おおっ!? いつにもまして気合入ってるねぇ~! カケル!!」

 いつもと違って気持ちの度合いが違う。ついさっきまでの沈んだ彼がいないことを前にユーキは喜んで腰を上げる。

「凄い気迫……うん! 絶対に! クリアしようね!」

 ユーキはホッパーとメグ二人の肩に手を伸ばし、そっと姿勢を降ろす。

 異性であることも気にしない。友人として当然の距離感とスキンシップと言わんばかり、ユーキは満面の笑みで二人と気合を入れなおす。

「大丈夫! 私達三人、それにギルドの皆さんも力を貸してくれるんだ! 絶対にクリアできる!」

「私達三人の凄いところ! 絶対ッ、ぜぇえーーったいに! 見せつけよう!!」

 いつもユーキについてきた。

 ユーキに元気づけられてきた。メグは彼女からのエールにぐっと両手を掲げる。

「……ああ!」

 ホッパーもユーキの思いを前、胸に手を寄せた。


「「「CLEARするぞーーー! おーーーーーっ!!」


 -----今度こそ。

 二人の力になってみせる、と。

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