第483話 新たなお嫁さん候補は “ 戦利品 ” です
エルフ――――――前世だと自然を大切にし、共にいきるため森に住み、植物や動物の声を聞き、なんなら自然の精霊と亜人の中間的な意味合いすら持たせるような設定まであったりなんかして……とにかく自然と共にあり、大切にする種族って印象だった。
だけどこの世界のエルフは人間よりかは確かに自然寄りではあるけど、文明や技術を高め、かつては大国を築くほど―――悪い言い方をするなら僕の中のエルフのイメージよりはるかに世俗的な種族だ。
「……」
馬車でちょこんと座るエルフの少女―――オールリィリィは落ち着かない様子で固まっていた。
「どうしました? そんなに緊張しなくてもいいんですよ……」
なんて言葉をかけてみる僕だけど、彼女が緊張しているのは僕のせいだったりする。
他のお嫁さん達にも話してオールリィリィを僕のお嫁さんの1人にする事が決まった。
……ただし、彼女は普通にお嫁さんの一人になるわけじゃない。
“ 服従者 ”
簡単に言えば罪を犯した相手を絶対服従という強制の鎖で縛る。
今回の場合だとオールリィリィには人権がなく
なんでそうしたかといえば、王都でエルフへの反感が高まっているから。措置としてそうしないと彼女の身柄の安全を確保しきれないからだ。
「普通に迎えると人々は殿下、ならびに王室にも反感を抱くことでしょう。ですがそうではなく
同乗しているセレナがオールリィリィに関する僕の意図を聞いてとても感心し、何度も頷く。
服従者なので後宮には入れても基本はお嫁さん扱いにはならないし、王弟妃の地位も与えられない。
だけど王弟の僕が所有する者という事で人々のエルフに対する反感をなだめる材料になる―――早い話が、
ただ、それだけだと乱暴者でしかないので保護という意味合いも含ませなくちゃいけない。
そこで今回捕虜にした生き残りのエルフの中でも僕とほとんど同じ背丈で、僕よりも華奢なオールリィリィを服従者に選んだ。
見た目にも庇護対象として十分だし、何よりこの手でキャッチしたからには僕も彼女を逃がす気はないもんね。
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トーア平原の戦後処理を終えたセレナも合流し、みんな揃ってルヴオンスクまで南下した後、ようやく一心地ついた僕は、ある事を決めて発表した。
「今回の事件を機に北端3下領を併合します」
ルクートヴァーリング地方北端の3下領は東からヘンザック領、ロイオウ領、マンコック領と別れていたけど、ロイオウ家とマンコック家は取り潰しが確定している。
残るヘンザック領も、ヘンザック家はまだ取り潰しの裁定こそ出してはいないけど一連の北方の騒乱にまったく関わってなかったわけじゃない。
なのでこの際、北端3下領は完全に一度潰してしまい、まとめた上で一つの下領にしちゃった方が僕も分かりやすくていい。
「そして併合後の新たな下領は……オルコド=ザブリ=ヘンザック。貴方にその治政を任命、領名もヘンザック領とします」
僕にいきなりそう言われた彼は最初、自分のことだとは思わなかったようで、一度左右を見てから間の抜けた顔で自分を指さした。
それに対して僕が頷いて見せると……
「はへぇっ!!? 俺……いや、じ、自分がですかぁ!!!?」
「はい。貴殿が決して優れている治政者であるとは思ってはいません。ですがヘンザック領を一度取り上げたその後の働き、さほど悪くはないものでした。その事を評価して今一度、貴方にこの北端の地をお任せしようと思います」
ヘンザックは僕の
「権限などは以前と変わらず同じです。ただし治めるべき地は3倍以上になりますので相当大変になりますし、貴方の旧ヘンザック領での悪政の過去が消え去るわけではありません。もし何か悪いことをしたなら次は……意味は当然、わかりますね?」
「は、はいいい!! このオルコド、心を入れ替えて殿下のご期待に応えられるよう、頑張らせていただきますぅっ!!」
僕が彼を抜擢したのは、まず旧ヘンザック領の統治経験からこの辺りに慣れ、理解がある人物だということ。さらに彼くらいなら今後、何か問題を起こしたとしても対処はしやすいだろうということ。
……そして基本は小心者なタイプだから、たぶん
僕は北端3下領の併合に加え、このルクートヴァーリング地方全体におけるコロック氏の後釜にしようと考えていた “ 名代領主 ” 候補の事も含め、この人事を決定した。
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