第484話 新たな “ 名代領主 ” を任命します



 ルクートヴァーリング地方の中央やや南の、エイミーの実家跡地。



 真新しい大きめの館が建っているのが見えてきた街道上―――多くの護衛の騎兵を伴う豪華な王家の馬車は一路、その建物に向かって走っていた。



「なるほど。あれが再建されたエイミー様のご実家ですか」

「これからは、あそこが領主のお仕事をする場所になる……ってお話なんだよね、リジュちゃん?」

「うん、そうだよお姉ちゃん。殿下たちも待っているそうだから……フフ、少し久しぶりだね」

「ぅー、まーぅまぅー、ふぁぅふぁうー」

「レイアさまもパパとママに久しぶりに会えるの、楽しみだよね」


 馬車にはシェスクルーナとリジュムアータ、そしてレイアが乗っている。和気あいあいとしながら、窓から顔をだして向かう先にある建物を覗き見ていた。



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「うん、構わないよ。ボクが “ 名代領主 ” を務めればいいんだね?」

 レイア達が到着したのを迎えて久々にレイアと遊んだ後、アイリーンがおっぱいをあげにいってる間、僕は今回の人事について、シェスクルーナとリジュムアータに説明していた。


「ええ、セレナの時もそうでしたが―――」

「ボク達をお嫁さんにするためには、マックリンガル子爵家のお嬢様といっても、他の貴族を黙らせるだけのモノを示す必要がある―――だね?」

 僕の言いたいことを先読みされ、相変わらずの才幹に感服……ううん、さらにキレが増してるんじゃ??


「さすが。リジュは聡く、こちらの言いたい事をすぐ把握してくれるので助かりますよ」

「状況と流れ、ボク達姉妹と殿下および殿下の後宮ハレムの状況や立場を考えたなら当然の白羽の矢だからね。ボクが殿下でもそう考えるよ」

 なにせリジュムアータは、このルクートヴァーリング地方よりも広いマックリンガル領の書類仕事を長年、一手にこなしていた。

 その能力を考えれば、彼女ならこの地の “ 名代領主 ” は余裕でこなせるだろう。亡くなった前の名代領主であるコロック氏には申し訳ないけど、天才っていうのはいるところにはいるものだ。


「シェスカは彼女のサポートをしてあげてください。色々と勉強になるでしょうし、地元貴族の階級は低いですから、社交界の練習にもなるでしょう」

「う、うん、が、頑張りますっ」

 この姉妹をルクートヴァーリング地方の名代領主として据えることで、将来はほぼ僕の後宮に入る人間であるという事を確定的にすると同時に、おおやけに示すことにもなる。

 外堀を埋める、ってほどじゃあないけれど、王弟殿下の実質婚約者な二人ともなれば、アプローチしようっていう貴族男性は少なくなるはずだ。


 なにせ王城でレイアのお世話をしてくれていた際、王都の社交界で彼女たちに迫った男性がいたようで、リジュムアータはさすがの返しと物怖じしない態度で塩対応を決め込み、簡単に撃退していた。

 けど内気で優しい性格のシェスクルーナは、上手く追い払えず、かなり苦戦したらしい。


「(常に妹が一緒にいて手助けしてくれる状況にあるとは限らないし、シェスカにも練習は必要だもんね)」

 将来的に僕のお嫁さんの1人になった時、王弟妃として社交界で立ち回る必要も出て来るだろうから、苦手なままにもしておけない。

 なのでシェスクルーナとリジュムアータのマックリンガル姉妹には今回、名代領主としての事務仕事だけでなく、ルクートヴァーリング地方における貴族交流にも頑張ってもらう事にした。





 その夜。


「はっ、はっ、はっぁ……すごいよ、殿下……。ぁっ、あっ」

「リジュの抱き心地もとても良いですよ。体はもうすっかり大丈夫のようですね」

 僕は二人を抱いた。

 僕にかわって “ 名代領主 ” を務めてもらうから、そのご褒美の前払いだ。


「はあ、ひぃ、はぁ……ひぃ……、はぅうう~、私の中、殿下でいっぱいだよぉ~」

 先にひと汗かき終えたシェスクルーナが、すぐ隣でいつまでも息を乱したまま、いかにも降参といった感じで、シーツに包まりながら仰向けに寝転がってる。


「はっ、はっ……んんっ、……いいのかい、殿下? お姉ちゃんともども、ボクたちがここで赤ちゃんを身籠ったら、クララ様やセレナ様に妬まれてしまいそうだけど?」

「そうなったらそれで構いませんよ、お二人にも産んでもらう事に変わりはありませんから……もちろん、あなた達にもです」

 そう言って、僕はリジュムアータの唇を奪う。

 深く深く、舌を絡ませ奥へ奥へ……体も何もかもをしっかりと密着させながら、一切の考慮も遠慮も忘れ、情動のままに彼女に僕の愛を与えた。


「はー、はー……はー………、少しは……てか、げん……してほしい、かな……。ボク達はさすがに、はー、はー……アイリーン様達ほど、丈夫じゃない……から、さ……」

 口を離しても、互いの舌をなめ合うように絡ませ合い続ける。

 リジュムアータも負けないとばかりに頑張ってるけれど、さすがの彼女も前世の知識ある僕に、ベッドの上では敵わない。


 僕がまだまだ余裕あるのに対して、彼女は僕の愛を受け止めきるのに必死で、かなり意識がフワついてた。


「では次はシェスカと2回目ですね」

「ふぇっ!? も、もう終わったんじゃないの??」

「フフ、こと夫婦の営みに関しましては、アイリーンも降参させてしまえる僕ですからね、覚悟してください」

 ニッコリと微笑む。

 僕に愛してもらえるのは嬉しい、けれど同時に身体がもたないよ~っていまにも泣き言を言い出しそうな、そんな複雑な感情を顔に浮かべるシェスクルーナを、僕は遠慮なく押し倒した。



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