第432話 日々成長著しいマイドーターです
シュー……パチ、パチン
カチャ、カシャン
ガチャガチャ、カチン
「ぉうっぉぉ~……まぅまぅ、ぁうぅ~」
「フフッ、ありがとうレイア。ママ、カッコいいでしょ~?」
洗練された流線形のロボット的な鎧っていうか―――なんだっけ、こういうのあったよね?
「(なんか女の子の一部がロボットみたいな人形……ヲタク向けのアニメかプラモかの広告で見た事あるよーな……)」
アイリーンお母様がくるっと回って見せる新しい鎧姿は確かにカッコイイ。
だけどやっぱりその、どこまでいってもベースはビキニアーマーなんだね……。
「レイアにも褒めてもらえるなら、新調した甲斐があったね~。でもゴメンねレイア、ママまたお出かけしてこなくちゃいけなくなったから、寂しい想いをさせちゃうね」
そう言ってアイリーンお母様はグリグリと頬ずりしてくる。
「おうぁうぁうおぅうぶぶぅ~~~……」
うん、大丈夫だから。お母様が私のことすっごく愛してくれてるのは分かってるから。だから鎧つけた状態で頬ずりはやめてー、金属の凹凸がグリグリするからー!
―――なんでもマイファザーのお仕事で、難儀な敵がいるかもしれないとかで、アイリーンお母様が急行する事になったみたいで、今はそのための準備中なわけですよ。
「(お父様も色々大変なんだなー……あんなにショタっこカワイイのに)」
どういう理屈だ、っていうツッコミは不要でお願いします。
っと、挨拶忘れてたっ! そんなわけでどもども、先日1歳の誕生日を無事、迎えました、レイアちゃんでっす。
「(相変わらず、誰に行ってるんだ私www)」
1年経ってベイビーライフも随分馴染んだもので、ちょっとずつだけど言葉らしい声も出せるようになってきたし、身体もだいぶ動けるようになってきたけれど、それでもまだまだ無力な赤ん坊。
マイファザー&マザーのお仕事大変なのは気になるけれど、何が出来る身でもないので大人しくお世話されて、せめて手のかからないイイ子でおりましょうとも。うむ。
「心配はいらないよ、ボク達もいるから寂しさは……うん、おっぱいの方は諦めてもらうしかないけど、ね」
お、リジュムアータ師匠! お疲れ様です!
いやいや、確かに胸は薄うございますけれども、その肌艶は素晴らしいですよ! ぜひ見習いたい……いや、秘訣を教えていただきたい!!
「あ、あはは……それは確かにそうだね。うん、でも私達もレイアちゃんが寂しくならないようにちゃんと留守を守っているから、安心して頑張ってきてくださいね、アイリーン様!」
おおう、やっぱりこの姉妹はカワえ~……そんでもって姉妹揃ってすんごい美肌&美髪。
シェスクルーナちゃんは、私から言ったらお姉さまとでも呼ぶべき年齢差なのは分かってるけど、ついちゃん付けで呼びたくなっちゃうんだよねぇ~……ほっこり♪
「うん、旦那さまの敵は、ぜーんぶ私がぶっ飛ばしてくるね!」
そしてすっごく眩しい笑顔のマイマザー―――何だろう、すっごく嬉々としてる気がするんだけど、普通は戦いになるかもって思ったら、不安や恐怖っていうのがくるんじゃあないですかね?
「(時々お父様が口にしてる、 “ アイリーンは規格外 ” っていう言葉が、何だか少しずつ分かって来た気がする今日この頃~、なんちって)」
そんなこんなでアイリーンお母様は、私から見ると
「まぅまぅ~、うあぅあ~ぃ」
表向きは、ルクートヴァーリング地方の名代領主とかいうお父様の代理を務めてる、ヘカチェリーナのパパさんのお見舞いに行く形とかうんたらかんたら話してたっけ……だから馬車に乗ってお城を出て行くんだね。
う~ん、なんだか色々と面倒そうな事情があるんだなぁ。
「(私もお姫様身分なわけだし、そういう面倒なのは避けて通れなさそうだよね、やっぱし?)」
物心つくお年頃になったら、厳しい教育とか始まるのかな―――今は考えないようにしよう、うん。
「さてさて、それじゃあお見送りも終わったことだしお姫様、ボク達と遊ぼうか」
待ってました、リジュムアータ師匠!
え? なんで私がリジュムアータちゃんの事を師匠と呼ぶかって? それは……
・
・
・
「はい、それじゃあここね~? それっ」
「ぁーう、あーうっ、うっ!」
お父様が考えた、石を弾いて相手の石に当てる対戦ゲームに、最近ハマってるのだ!
カツンッ
「黒い石が外に出たからー、これはレイア様のモノだね」
「うっ、うー、ぁーい!」
やる事はとても簡単。
白と黒の石を並べて、交互に自分の石を弾いて移動させる。
下に敷いた、線が書かれてる布のステージで行って、線の外に出した相手の石を貰える、っていうルールなんだけど……これが意外を奥深くって、面白い。
「はーい、じゃあボクはその石を狙いますねー、はいっ」
カツン
「うー、ぶーぅ」
さっき、私が黒い石に当てた白い石が、外に出されてしまう。しかも当たった黒い石は、跳ね返りで線から少し遠い位置まで移動した。
「フフフ、これを出すのは難しいんじゃないかなー?」
「リジュちゃん、赤ちゃん相手に大人げないよぉ?」
いえいえシェスクルーナちゃん、これは真剣勝負! 赤ん坊だからとてお気遣いは無用ですとも、ええ!!
「うー、ぶー……、まっ!」
私はまだ、指ではじくって動作が出来ないから、石の上に手を乗せて、身体全体で押し滑らせてる。
それでも赤ちゃんの力だから、指ではじくのとあんまり変わらないパワーだけど……
カツッンッ
「わー、すごいすごい!」
「っやりますね、お姫様。……さすがアイリーン様の御息女と言うべきかな?」
「キャッキャッキャッ♪」
出すのが厳しいと思われていた位置の黒い石を、見事1投で線の外に出して見せた私。ふっふっふ、赤ちゃんの成長は早いのだ! いつまでもリジュムアータ師匠に負け続ける私ではないのだー♪
そんなこんなで私ことレイアは、お父様たちが頑張っている間、簡単なゲームでご機嫌になっていたのでした、まる。
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