第111話 忙しさと怪しさが増しています
そして、また大量の魔物が発生する事件が起こった。
「殿下。仰せの通りに我らの中から戦える者50名の組み込みも終えました、いつでも出陣できます」
「ご苦労様でした。では王都からの
「「ハハッ!」」
場所は王都防衛圏の先、ナードラー少将担当の第一中間防衛圏内。王都からだいたい70kmほど先。発生した魔物の軍勢はおよそ1万6000ほどで、さっそく軍の再配備の効果が出ているようで、今のところ被害は軽微に収まっているらしい。
王都防衛圏担当のセレナからも2000の援軍が数日前に出発したし、さらに先にある第二中間防衛圏のメルドック中将も、合わせ8000の兵力を2回に分けて送ったと報告が来た。
前回と違って素早く戦力を動かせた分、食糧をはじめとした物資がまだ不十分らしく、王都からも1隊送ることになったのが今、出発したというわけだ。
今回は臨月が近づいてきたアイリーンのこともあるので僕は出ない。
代わりに僕の名で
全員合わせてきっちり1000人。なので獣人さん達を組み込んだ分、あぶれた兵士さん達は彼らの留守中、代わりに僕の身辺警護の任務を正式に与える形で、上手く処理した。
アイリーンの出産までだいたいあと2ヵ月を切った。さすがに僕のお嫁さんも、そろそろ辛くなってくるだろうなぁ――――――なんて、思ってた時期が僕にもありました。
「う~、いいなぁ……私も戦場いきたかったですよぅ!」
なんで
「(世の妊婦さん達が見たら、怒られそうなくらい元気過ぎるんだよなぁ、アイリーンは)」
むしろお腹が膨らむにつれて、元気になってる気さえする。
おかしいな、僕の常識が間違ってるんだろうか?? それともこの世界の妊婦さんはみんなこうなのかな??
「アイリーン様は、本当にお元気であらせられ、私どもも少々困惑しております』
って、アイリーン世話役のメイドさんが呆れながら言ったので、やっぱりアイリーンが特殊な例だと僕は納得する。
「(もしかして、アイリーンのスキルの効果だったりするのかな?)」
もしそうだとしたら、僕のお嫁さんはホントに世の女性達からしたら垂涎の存在だ。
一生のうち、一番大変な妊娠と出産。それがまるっきり苦労なしだとしたら、女性としてチートもいいところ。
「……一応、気を付けてはおいてください。一部食物に反応するなど
「はい、心得ております、殿下」
むしろ元気でいてくれて助かった。何せこのところ、怪しい動きが活発化してるから注意しなさいって、兄上様からたびたび注意されてる。
なのでこのところ僕は、特に人事に気を配って神経をすり減らしてた。今は夫として、奥さんの妊娠の苦しみに寄り添えるような精神的余裕がない。
「やっほー殿下ー。はいコレ、頼まれてたものっ」
ヘカチェリーナが持ってきたのは、直近の僕たち周辺で務めてる人間のリストと詳細な資料のメイド編だ。
「ありがとうございます。早速検めますね」
「お待たせいたしました殿下。食料品とお飲物の詳細な資料を頂いてきましたのです」
続いてエイミーが持ってきたのは、僕達が口にする飲食物に関する資料だ。予定のメニューや使用する食材、それらがいつのモノで誰が納品・購入・運び入れしたかなどが記載されてる。
「ご苦労様です、エイミー。机の上に置いてくれますか?」
「はいなのですっ」
こうした資料を検めるのは、アイリーンを守るためでもあるけれど、同時にイザという時、使用人達を守るためにもなる。
「(僕が詳細まで把握しておけば、イザって時に犯人にも辿り着きやすいはずだし、アイリーンの口に入れるものを制限もしやすい。それに近づける人間も……)」
もちろんこういった事は執事や近衛兵さん達も行ってくれてる。
だけど、その警戒を行ってくれてる人が怪しい誰かさんだったりしたら?
それを言い出したら誰もかれもが怪しいけれど、それで言ったら全ての人間の中でアイリーンから見たもっとも怪しくない一番の人間は僕になる。
夫として、そして一番信頼できる僕が常日頃からそばにいてあげて、必要に応じて鋭く怪しいものはシャットアウトできなきゃダメなんだ。
「……ヘカチェリーナ、この人とこの人は入れ替えてもらうようにお願いしてきてください。このお二人は反王室派でもこじらせてる御家の子女です」
「おっけー、執事さんに言えばいい感じ?」
「はい。可能なら宰相の兄上様に―――いえ、そちらは僕から言っておきましょう。とりあえず執事さんにお願いしてきてください、僕からの
アイリーンの周辺のあれこれの権限を今、僕が握らせてもらってる。
なので安全をかためることができるけど、同時に責任も重大。だけどここが頑張り時だ、僕のお嫁さんと赤ちゃんは、絶対に守りぬいて見せる!
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