第14話 覚悟を決めたのです




 僕のお嫁さんアイリーンが二十歳を迎えるまでもう半年もなくなった。



 二十歳になるから何だというのか? そう言われてしまうとそれまでのことなんだろうけど、男の僕にとっては気にならなくっても女性のアイリーンは年齢の節目を感じてるはず。



 結局僕は結婚してから4年もの間、夫婦の営みはまったくしてこなかった。


 最近はアイリーンも諦めた…というより、状況に慣れたといった感じで、何とかして妻としてのつとめを果たそうとしたがる素振りもしなくなってる。



「(でもこのままじゃダメだし、やっぱりするべき事はしなくちゃいけないよね)」

 クララがいい感じに仕上がってきたのを学校で確認して、僕は将来のハーレムに向けたお嫁さん達の序列というものを、意識するようになった。


 そして、そのためにはまず絶対にどうしてもアイリーンが、最初に僕の赤ちゃんを産まなくちゃいけない。

 万が一、他のが先に身籠ったりしたら、ハーレムの序列が成り立たなくなっちゃうし、お嫁さん同士の間で対立の火種になる。


「(それに、王様じゃないからそんな事は起こらないと思いたいけど…)」

 たくさんの赤ちゃんが出来た時、家臣や兵士といった仲間内で次代の推しによる派閥別れとか起こっても困る。


 なので序列でいえば一番上の、僕の最初のお嫁さんであるアイリーンが、まず赤ちゃんを作り、産んで、お嫁さんとしても奥さんとしても、僕の後宮ハーレム第一位にしなくちゃならないんだ。




「でも…ううーん……」

 女将軍のセレナを僕のお嫁さんに迎える工作も進んでる。だから今、アイリーンが妊娠する分にはまだ周囲に危険を感じることはないし、逆に僕がしかるべき地位に就く前に子供を設けてしまえば、アイリーンが戦列復帰する事も可能かもしれない。


 けれど、子を産んだお妃さまの地位に立つ人が、旦那様の隣に肩を並べて戦場に…なんて出来るだろうか?



「(やっぱり武勇に優れた男の人とかも、引き込まないとダメなのかな…)」

 難しい。

 女性相手なら僕にメロメロになるように頑張れるけれど、同性である男性の臣下に並々ならない忠節を尽くしてもらえるようには出来る気がしない。


 なぜなら男性の場合、僕のショタ魅力は通用しない。

 しかも武勇に優れたタイプの男性は実力主義的なところがある。つまり、彼らが忠誠を誓いたくなる主とは、僕のようなカワイイけど男としては軟弱と言えるような人間とは真逆のタイプなんだ。


「とにかくもうアイリーンはこれ以上おあずけはできない…今晩きめよう」




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 ・


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 そもそもヤったからといって必ずデキるものじゃない。


「(それに、僕のアレに種は含まれているのかどうかも分からないし…)」

 この世界の性知識では、若すぎるとそもそも精子も卵子もまだ出ないので子供が出来ない、という前世での一般人ですら知っている常識的なところすら誰も知らない。


 貴族のご令嬢などに至っては本気で、ただ一緒に寝るだけで子供が出来るだとか、キスするだけでも出来るだとかを信じてる人もいるくらいに性的な、あるいは人間の身体の仕組みという分野についてお粗末らしい。



「それでは旦那様、明かりを消しますね」



 ちなみに子作りにしても、男性のアレを女性のアソコに挿して、子種が出るまでじっとしている――――と、教本に書いてあったのを見た時、僕は目を丸くした。


 教育係が “ 大変恥ずかしいでしょうが、とても重要なことですのでしっかりとお学びくださいませ ” と本気の羞恥に耐えながら授業してくれる様子に、笑ってしまうのを堪えるのが大変だった。


 しかも、世に広く知られているものも、そのレベルだというのだから抱腹絶倒だ。




「(でも、それって逆にいえば……)」

 快楽をむさぼるようなセックスを知らない。あらゆる性のテクニックも、性感帯という言葉すらも、彼女らは知らないんだ。


 エイミーはともかく、貴族のクララやセレナが拍子抜けするほど簡単に僕の魅力にかけることができた理由に納得いって、同時に、相手が女性なら――――そう、女性ならば、前世の性知識は今世では、最強の武器に化けてくれると確信した。



「ふわぁぁ~……おやすみなさ~い、旦那様ぁ…むにゃむにゃ…」

 もう慣れたもの。互いに全裸だけれど今日も今日とて夫婦の営みはなく、そのまま眠りにつく。

 僕のお嫁さんはそのつもりでいる。だけどこの夜は違うよ。



「―――――ふにゃぁっん!? え、えっ? えええ?? あ、あの…だ、だん…ん…~~~~~んんんぅっ!?!?」

 僕は布団の中へもぐり、アイリーンの肢体に絡みついた。そしてアイリーンの敏感なところへと攻め込んでいく。

 今宵は遠慮は一切なし。今までのように、他の娘たちにしてきたような、一線を越えない範囲には留めない。


 色々と懸念もあるけれど、全部忘れて……僕は、獣になると決めた。








 翌朝。


「……ええ、殿下のお部屋から」

「そんなに? 一晩中!? いったいどのような御営みを…?」

「これは、殿下に御子ができるのも時間の問題かしら」

 噂好きの下級メイド達のヒソヒソ話を耳聡く聞きながら、僕は何事もなかったようにいつも通りの毎日をスタートする。



 だけどアイリーンはこの日ずっと、それはもうほうけて赤らんだ顔で、どこを見ているのかも定まらない視線のまま、ぽや~っとしたままだった。何をするにしても上の空。

 どこかで僕と視線があったりしようものなら、全身から煙を噴き出すかのように真っ赤になって卒倒する。


「うん、効果は抜群だね、やっぱり」

 かなり激しい営みだったと思うんだけれど、お嫁さんアイリーンは歩く時、左右にフラフラしてはいるけれど、腰を庇ったりしている様子は一切なかった。


 いまの締まりのない蕩け惚けた表情、年齢より幾分か子供っぽさを残すその顔からは想像できないけれど、さすが世に名高い戦士。

 僕の全力に一晩中付き合ったって大丈夫なほど鍛えられてるそのカラダ―――改めて僕は、アイリーンをお嫁さんに選んで良かったと思い、食事の席で彼女と視線があった瞬間、ニコっと微笑んだ。


 途端に顔が燃え上がって気絶するアイリーンが面白くて、今度は楽しさから声を漏らして笑ってしまった。




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