第13話 嫁入り前に仕立てておきます



「―――とこのように、力点にこの方向へと力が入ることで、作用点はこちらの方向へと力が生じ、移動する事になるわけです」

 僕にとって、お城を出られる数少ない機会の一つが学校。お城では6歳まで教育係が、それからは帝王学と貴族教養以外の学問は学校で修める。




 わざわざお城ではなく学校に通うのは他者との交流を持ち、社交性を高めるためと最近おそわった。


「言われてみますとたしかに。学校はちょっとした社会ですわね」

 初等部を卒業し、僕たちは今年から中等部に上がった。


 同級生の女子、クララことクルリラ=フィン=エイルネストとは9歳の初等部の頃からの仲だ。

 今も彼女が持参したバスケットお弁当を囲んで一緒に昼食をとっている。



 相変わらず周囲には高飛車御嬢様な彼女だけれど、僕に対してはすっかり様変わりした。


「あ、お茶のおかわりはいかがでしょう? すぐお入れいたしますわ」

「うん、ありがとうクララ」

 ニッコリと微笑んでお礼を述べ、名前を呼ぶ事も忘れない。


「お、お礼など……当然の行いですわ、私はその…あなた様の…ゴニョゴニョ」

 クララは顔を真っ赤にして人差し指同士を自分の胸の前で突っつき合わせ、恥ずかしそうに俯く。それでいて口元は笑っている―――――僕の特別な存在でありたい彼女にとって、二人で昼食のひと時はそれを感じられる幸せな時間なのだろう。


「(かなり仕上がってきたね、よしよし)」

 クララを僕の味方に引き込むと決めてから2年。その間、彼女にある事を徹底して施してきた。


「いいコには、ご褒美をあげなくっちゃね」

 僕は彼女の注いでくれたおかわりのお茶を口に含むと、流れるように対面していた彼女の横へ移動する。そして――――


「んんんっ。……んく、んく……んはぁ、んんっ、はぁはぁ…っ、ンっン!」

 口移し。そのまま深く舌を絡ませて背中に手を回し、クララを軽く倒すようにして僕が上から口を抑え込む形をとった。

 ヒザの上に抱えあげた眠り姫のような恰好で、絶対に逃げられない激しいキスを受ける彼女。だけど、これが初めてじゃない。




「(最初の頃は手を繋いだだけで失神しかけてたのに。フフっ、本当にいい顔するようになったなぁ)」

 高慢不遜なワガママ御嬢様かと思えば、異性ごとに関してはビックリするほど純情だったクララ。それがこの2年の間に、ベロチューだけで白目をむくほどイっちゃえるようになった。

 俗にいうアヘ顔を浮かべるクララの反応を楽しみながら、僕は一切緩まずに彼女の口を奪い続ける。移したお茶がぜんぶ飲み干されても許さない。何ならこのまま気絶しちゃうまで続ける。



 完全に落とす。それも対等な異性としてじゃない。僕に従順な、下僕のような忠誠心と愛欲性を持たせるつもりで。

 もちろん兄上様や隠居した父上様に働きかけ、彼女を側室の一人に迎える工作は着々と行ってる。


 でもクララをアイリーン達と同列に見る気はない。徹底的に僕に尽くす従属的な側室に仕立て上げる。なので自分が愛玩される側だということを分からせるように徹底して施すんだ。


 キスを受けるとき、彼女は顔を赤らめてるけど僕は平然としている。同じように羞恥心を見せる事はダメだから。そして徹底的に僕が上だとするためにも彼女からはさせないし、時には厳しくもする。


「んんっ、んんっ……ん、んあ………ンんんんんんん――――――」

 羞恥心と快感と幸福感。その三重奏がフィナーレを迎えたらしい。

 クララは完全に白目をむいて、貴族の令嬢としてはこの上なくみっともない表情を晒したまま気を失った。







 5分後。


「……んァッ……、ぁ…あれ、わ、わたくし…。…ぁッ!! そ、そのようなところをおさわりにッ?!」

 気が付いて早々、クララはビックリして身をふるわせた。

 当然だ。何せ僕は彼女の服の中に両手を入れて、意識を失っている間ずっと上下の敏感なところをまさぐり続けていたのだから。


「ダメじゃないか。僕をほったらかしにして気を失うなんて…」

「それは申し訳…っァんっ!! ハァハァ、な、なんですの…このかんか…くぅッ」

 こうして地肌に触れるのはさすがに初めてだ。激しい口付けキスの手応えを感じた僕はこの日、一歩踏み込む。


「これは罰だから。でもおかしいね、すごく気持ちよさそうな顔してるけど?」

「そ、そのようなことっ…はッ、ああ、ご、ご無体な…おやめくださいましっ、ハァハァッ―――――……へ?」

 僕は本当にそこでやめる、彼女の望み通りに。拍子抜けした様子で呆気にとられているクララもなかなか可愛い。けれど、彼女が本当に大変なのはこの後だ。



「うん、このくらいで許してあげる。次は容赦しないからね? …あ、ホラ、そろそろ午後の授業が始まる時間だよ、片付けて行こうか」

「は…はぁ……、わかりましたわ」

 なんとも気の抜けた返事。

 だけどクララのカラダは、先ほどの激しいキスからの流れで十分出来上がっている。


 最後まで突っ切ることなく中断した、行き場のない昂ぶり。

 その影響がどれほどのものかは、皮肉にもお嫁さんアイリーンで実証済みだ。


「(毎日全裸で一緒に寝てるのに手を出してもらえない結果が、八つ当たり気味なスパルタ訓練……ならクララも…)」





 僕の読み通り、クララは午後の授業にまったく身が入らないようだった。初めて感じたカラダの高揚、その処理の仕方が分からないんだ。


 僕はこれから、彼女に事あるごとに施していくことにする。

 なぜなら彼女はもともと傲慢不遜。側室に迎えた時、僕のお嫁さん達の中で一番問題を起こしそうな性格をしている彼女には、申し訳ないけど徹底的に堕ちてもらおうと、前々から決めていた。


 そして今日、自信が付いた。


 授業が終わった後、全身上気立ってすがりついてくるように僕のところへ来たクララの姿に、彼女を徹底的に従属させようと、あらためてイロイロ施していくことを決意した。



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