オアシスに向かって

 一休みがてら、俺はラクダの口元に餌をやっていた。

 ラクダの涎はダラダラと、食む枯草を伝って、地面へと落ちてゆく。

 そしてラクダが咀嚼する度にラクダに乗せた荷物は大きな音を立てつつ揺れた。

 俺は水筒の蓋を開けて少し口を潤し、ラクダがまだ疲れていないことを見越すと、先に進み始めた。

 その時、声がした。

 見ると、八百屋の老婆が手を振っていた。「ライチが安い」というので、俺は財布から数枚の硬貨を渡し、貰った。

 さらに進むと、今度は自転車屋の親父が「そんなのよりこっちはどうだい?」と声をかけてきたので、私は手を横に振った。

 マウンテンバイク等には乗らないし、13万は高すぎる。

 更に歩くと、人混みが多くなって来た。

 私は手綱を引きながらその喧騒を何とか通過し、ようやく戸越銀座商店街を抜けた。

 そして俺達は、行きつけの公園に辿り着いた。

 すると早速、散歩仲間の山口さんと出会った。

 山口さんは、

「今日もラクダちゃん元気ねえ」

 と言ってくれた。

 山口さんは旦那さんと一緒にトイプードルの「チーちゃん」の散歩に来ていたようで、俺は旦那さんと軽く挨拶をして別れた。

「あんな夫婦憧れるなあ」

 直ぐ傍で声が聞こえた。

 俺は彼女のその言葉に微笑んだ。

 何故なら、いつか俺もラクダと結婚したいと思っていたからだ。

ラクダは続けて言った。

「あんな夫婦になりたいって、そう思わない?」

 その時、通りすがりの子供が俺を指さし、言った。

「チンパンジーだ!」

 事実だが、俺は無視した。

 ふと気になって振り返ると、ターミネーターまだ俺達を追いかけて来ている。

 その時ラクダが躓き、大荷物の蓋が開いて中からピーナッツの妖精達が逃げて行った。

 それを乗っていた戦車で全て撃ち殺すと、女の乗っていたクラーケン清掃員がそれを掃除した。

 そして俺達は行きつけのラブホテル、「オアシス」に向かって行った。了。

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小説再現小説 きりん後 @zoumaekiringo

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