事件3

「あら、つい長話してしまいました、ごめんなさい」


「いえ、それは全然構わないんですが、今のは?」


「今のは、お友達の池照さんですよ?」


「いえ、そういう事ではなく.......なにやら事件の事をその.......相談を受けていたような?」


「あ、そうですね、たまにかかって来るんです、ある事件で池照さんとはお友達になりまして」


「あの.......なんでお嬢様に?」


「それはわかりませんけど、たぶん.......」


「たぶん?」


「池照さんが真面目なのではないでしょうか?」


わからん.......俺がバカすぎるのか、この質問と答えの中にある埋めがたいミゾはなんだろう?


「あの、なぜ、真面目だとお嬢様に連絡が来るんでしょう?自殺かどうか警察が調べればスグにわかるような気がするんですが」


「それは、自殺ではないと明らかにわかる場合はでしょう?たしかにその場合は鑑識が動いて自殺では無いことがはっきりとわかりますね」


「ですよね?」


「でも日本では変死体ですら必ずしも鑑識が動くわけではないので」


「え?そうなんですか?」


「事件性がない.......あるいは希薄であると判断されたものはそのまま書類だけで処理される場合も多いんです」


「え?変死体で事件性がないなんて事があるんですか?ていうか.......誰が判断するんです?」


「現場に赴いた刑事、もしくは警察官でしょう」


「そんな.......」


「腑に落ちませんか?」


「え?ええまぁ.......あ、そうだ話を戻しますけどもそのような事があるとしてなぜお嬢様に?」


「ですから、自殺で処理をしても良かった案件に池照さんが疑問を持った」


「はい」


「それで、わたしに連絡をしようと思った」


「はい」


「それは、自分の感じた違和感を理屈で説明してくれる誰かが欲しかったのではないでしょうか?」


「なるほど、だから.......」


「そう、だから池照さんは真面目なんです」


俺は少し魂が抜かれた様になっていた。


なんなんだこのお嬢様。


自分の中にあった常識ってやつを何度も 飛ばされた気がした。

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