事件2

如鏡しきょうはバアヤから携帯を受け取ると受付嬢の様な落ち着いたトーンで応対した。


「はい、変わりました如月です」


「あ、突然すみません、裏山の件はありがとうございました」


「いえ、こちらもバアヤが執拗しつこくて、どうしてもボディガードを探してましたので池照さんのご友人に適任者がいらして助かりました」


「ありがとうございます.......それはそれとして、ちょっと変な事件が発生しまして」


「あら、どんな?」


「コンビニのトイレで自殺がありまして、30代くらいなんですけど、その.......」


「遠慮なく仰って下さい。子供とか女性のとかいう先入観は捨てて下さると助かります」


「はぁ.......ですよね?前の事件の時にそれは物凄く肝に銘じたんですが.......では、遠慮なく」


「どうぞ」


「そのトイレというのが内側から鍵が掛かっているので自殺の線で落ち着きそうなんですけどね.......ちょっと変わってるのはその男ズボンを脱いでるんですよ。まあ、ズボンのベルトで首を吊っているのでそれで自然に脱げたとも考えられるんですが」


「.......コンビニのトイレの鍵はどの様なタイプなんですか?」


「それは.......確か回転式で爪に引っ掛けるタイプです」


「ああ、よくあるタイプですね......実際に見て見ないとなんとも言えませんが、密室というには些か弱いですね」


「やはりそうですよね.......それと持ち物から眠剤が出てきてました、ハルシオンです」


「あら、即効性のある睡眠導入剤ですね。だとしたら、殺人の可能性が高いかも」


「え?それはなぜでしょう」


「眠剤を用意していたのなら計画的な自殺ですが、コンビニのトイレで自分のベルトで首を吊るのは客観的に見て衝動的です、そこが矛盾してます」


「なるほど.......ありがとうございます、またなにかありましたらお願いします」


「あ、ちょっと」


「はい、なんでしょう?」


「どちらのコンビニですか?」


「え?来られるんですか?それはちょっと.......」


「不味いですか?」


「一応、現場を仕切ってるのが僕ではないので」


「あら残念」


「なにかあったらまた連絡します」


そういうと電話は切れた。


俺は呆気に取られてそのやり取りを見ていた。

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