理由2

「あの、そういえば、お嬢様の...名前を聞いていなかったですね。」


「しきょう」


「え?し、きょう、ですか?」


「そう、鏡の如くと書いて如鏡。」


「はぁ...。なんというか…。」


「変な名前でしょ?笑わないでね。」


そういうと、お嬢様は紅茶を口に運んだ。


「いやいや、笑わないですよ、俺なんて詩歌だし、裏山詩歌ですよ?」


「ふふ、本当、変な名前ね。」


「いや、それは反則でしょ?」


「ふふふ、ごめんなさい。」


「いや、いいんですけど...。」


ゴホン...。


咳払いがしたので後ろを振り向いて見ると桜庭さんが物凄い目で俺を睨んでいた。


僭越せんえつながら、お嬢様、たかだかボディガードとあまり馴れ馴れしくするのはどうかと思います。」


「あらそう?」


お嬢様はそのあたりにはこだわらないらしい。


「まぁ、いいじゃない、バアヤもこちらに来て一服したら?」


「え?あ、はい、そうですね、ではお言葉に甘えて。」


なんだよ、自分だって馴れ馴れしいじゃんか?


という目をして俺は桜庭さんを見た。


その視線の意図に気付いたのか、桜庭彩は、やおら弁明を始めた。


「わたしは長年のキャリアと蓄積と信頼があってこのような待遇なんですからね!勘違いしないでくださいね!」


そういうとバアヤはお嬢様に一礼してその横に座った。


俺はそういえば、ばあやは何歳なんだろう?と、今更ながら思った。パッと見は30代かとおもったが、20代にもみえるし、下手すると40代かもしれない。


長年探偵をしててもこの辺の年齢不詳の女性は何歳か見抜けないのだった。


「なにジロジロみてるんですか?」


「いえ、別に.......」


俺はバッシングされた女優の様な受け答えをした。


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