理由1
裏山詩歌は禁煙したことを見抜かれて、様々な憶測を立てたが解答を見つけられずにいた。
「とりあえず、ティータイムにしません?」
という依頼主の言葉で詩歌の疑問は一旦保留にさせられたが…。
全てには理由があった。
俺は如月家のお嬢様がテレパスなのではないかという疑惑を抱えながら紅茶をご馳走になっていた。
「あの...。」
「なに?砂糖ならないですよ、代わりに蜂蜜ならそこに...。」
「いや、そうじゃなくてさっきの質問に答えて貰ってませんが...。」
「あ、そうでしたね…わすれてました。でも御自分で言ってるんですけどね。禁煙してると…。」
え?いや言ってないし!
知らない間に言ってたらヤバイやつだし!
「あの…生憎ですが…オカルトとか超能力は信じない質でして。」
「オカルトではなく推論という奴です…。探偵さん、このお屋敷に入る前に背広の胸ポケットをチラリと覗きましたよね?」
やっぱり監視されてたのか!
まぁ、それはいいか…。
「それで?」
「初めは何かの記録用の装置、もしくは非常用の武器でも仕込んでいらっしゃるのかと思ってましたが...。そうではなかった。」
「もちろん。」
「だとするとそれは、なにかを探したんですね、でも、本気で探すなら全身を探すはずですね?しかし、そうはしなかった。」
「まあ」
「それは、そんな事をしても無駄なことを知っているから、つまり、持っていない事を思い出したからです。」
「なるほど」
「しかし、同じ仕草をさっきもしましたよね?」
「たしかに」
「それはもう常習性があるなにかを持っていないにも関わらずつい探してしまうほど癖がついているということになりますね」
「それで、煙草か.......でもさ、たまたま切らしているだけかもしれませんよ」
「だとしたらライターを持ってないのは不自然ね」
「ライターもたまたま持っていないのを吸おうとするタイミングで思い出していただけかも」
「もしそうなら、ワイシャツにシワがひとつもないのは変よね?」
「え?それのどこが変なんです?」
「癖になってしまうほどの常習者が朝から、今までの間に一度もタバコを胸ポケットに入れた形跡がない事」
「......なるほど」
なるほど、なぜ威圧感を感じたのかわかった。
この信じ難いほどの洞察力と全てを見透かすような瞳...。
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