池照2
池照はもう1度被害者の服装に目を落とした。
「ん?あれなんですかね?」
「ん?なんや?」
池照が指を指した先には不自然に膨らんだ被害者の上着のポケットがあった。
「気になるなら調べて見たらどないや?ただ気いつけてな…先っちょに猛毒のぬってあるイガグリが入ってるかも知れへんからなあ?」
「Xの悲劇ですか?脅かすなら、もっと現実的な事を言って下さいよ。」
「いや、あれも充分現実的な凶器やろ?まあ、やったやつは見たことないんやけど…。」
そう言って岩井はフッと笑った。
池照は何故か岩井と組まされる事が多いのだが、一体どこまで本気でどこから冗談なのか未だに理解できないでいる。
それでも、多少なりとも気味の悪さを感じた若い刑事は、恐る恐るポケットの中身を調べた。
「ん?これって...。」
「くすり...やな。」
「ですね。」
中から出てきたのはビニールの袋に入った錠剤だった。
「ハルシオン...。」
「ほう...。眠剤か。」
「ガイシャは不眠症だったみたいですね。」
即効性の高い睡眠導入剤を見つけて池照はそう言った。
「いやあ、この場合違う使い方をしたって可能性の方が高いやろ。」
そういうと、岩井は首をコキッと鳴らした。
「違う使い方というと?」
「こういう自殺の場合はやる前に眠剤を飲むって奴も多いんよ。」
「え?なぜです?」
「なぜって...そのほうが、確実やし、くるしくなさそうだからやないか?」
「くるしくないんですか?」
「え?...知らんよそんなもん!やった事あらへんのやから!」
「…ですよね。」
若い刑事はそうは言ってみたものの、釈然としない不協和音の様なものを感じていた。
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