如月4

「では、なんとお呼びすればいいですか?」


「それは普通に桜庭さんで良いですわ」


「はい、了解しました、サクラさん」


「サクラではなくてサクラバさん!」


「り.......了解」


俺はまた、背広の下のワイシャツのポケットをチラッと見るような仕草をした。


「なに?拳銃でも隠し持ってるの?」


バアヤにそう言われて勢いよくかぶりを振った。


「まさか、武器なんてもってませんよ」


「バアヤ、それは廊下を歩いてくる時に分かってるはずでしょ?意地悪はよくないわ」


「え?なんで?」


なんで、廊下を歩いてくるだけでそれがわかるのか俺には分からなかった。


「にぶいね、あんたが通ってきた廊下にちょっとした仕掛けがしてあるの、あんた携帯くらいしかもってないわね?」


「え?」


ばあやは誇らしげに続けた。


「いわゆる、X線のようなもので武器をもってないかAIが判断して」


「ちょ、ちょっとまってエーアイって?」


「この家を守っているAIのKISARAGIさん、もしも武器を持っていたらあんたは自動的に隔離されて無力化されてたところよ」


「む、無力化とは?」


「んー、それは聞かない方がいいんじゃない?」


俺は生唾をゴクリと飲み込むと言葉を続けた。


「それは、すごいね.......でも、他の方法で入ってきたりしたら」


「この家にほかの出入口はないわ」


なるほど、すごいセキュリティだ.......大方、ドアが横にスライドするのも訪問者がドアの後ろに隠れる死角を無くす為なのかもしれないな。


「なるほどね、たしかにこれは、ある意味お城、、いや、小さな要塞って感じだな」


俺にここを紹介してくれた奴も多分外見の見た目というよりこのセキュリティの事をお城に例えたのかもしれない。


それはそうと、俺は1番聞きたい事を聞くことにした。


「あの、それで、、俺は、、いや、私めは採用って事でよろしいので?」


俺は一応、おそるおそる聞いた。


今のところ大きなチョンボもしてないので自信はあるのだが。


「そうね」


お嬢様は少し考えて言った。


「禁煙をこのまま続けるなら採用しようかしら」


「え?そりゃどうも.......え?」


俺はちょっと混乱して言った。


なぜ、禁煙してる事を知ってるんだろう?


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