焼き餃子と元女神
カナコは衝動的に家を飛び出してきたのか。
行く宛もないくせに、カナコは旦那に離婚届を突きつけて。
◇◆◇
ボクは市内の焼き餃子が美味い店『
風が冷たく、ポツポツと雨とみぞれが空から落ちて来る。
傘をさしながら、餃子屋の店主の威勢の良い掛け声や客とのやり取りをボヤ〜っと聞いていた。
ショウスケにカナコが離婚してないことを聞いて、旦那がヨリを戻したがってることも知った。
カナコにきちんと話をしよう。
そう思っても言えなかった。
香ばしい匂い。
今日は二人して中華の気分だった。今頃、カナコはボクの家で麻婆豆腐を作ってる。
餃子はどうしても『
ここの餃子は肉汁がジューシーで野菜もたっぷり。ニラにキャベツに白菜にんにく生姜……。食べごたえ抜群!
皮は薄いので底は羽根つきパリパリだが、閉じ目の波々の部分はもっちりとしている。
ボクはカナコの美味そうに食べる姿を想像した。
恋でもない。愛ではない。じゃあ、なんなのだろう。
もうしばらくは二人で居たい。
そう願ってる。
ボクの元女神は、ボクの孤独を消し去った。
傷や弱さの舐め合いでも良い。
歪んだ関係だとしても良いじゃないか。
白黒はっきりさせるだけが人の関係だとは思わない。
友人、恋人、家族。
そのどれでもないボクとカナコの関係は続いたら駄目なんだろうか?
――いや、分かってるよ。
心のどこかで答えは出てたんだ。
もうすぐこの同居生活も終わりにしなくちゃいけないね。
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