探りを入れるショウスケ

 僕の部屋でショウスケはしたり顔で笑った。

「やっぱり。夏吉と部屋の雰囲気が変だなと思ったんだよな。浮かれた感じ? っての? そうだ、俺が探りを入れてやるよ」


 やめてくれ。

 僕はカナコに捨てられた身だが、もう恨みや悲しみはなく。

 ただ、守ってやりたかった。


「そうそう、家出の原因は旦那が浮気したらしいね。自分もやった事が巡ってきたんだ。罰があたったんじゃないのか?」

「ボクのことは良いんだ」

「お人好しだな、夏吉は。カナコさん、一人も女友達もいないって話」

「ショウスケ、なんでそんなに詳しいんだよ?」

「カナコさんの働いてる接骨院さ、俺の親戚のおばさんがやってんの。おばさん、お喋りだから」

「そっか……」


 案外、世界は狭いもんかもしれない。

 どこでどう繋がっているのか分からないもんだ。


「反省してんじゃないのかな? 少しは」

「甘いねぇ、夏吉は。女はしたたかだ。特にカナコさんみたいなタイプはね。取って食われんなよ、夏吉」


 ハハハッと笑うショウスケの顔が憎たらしかった。



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