カナコにコーンスープ
僕はカナコをそのままにしておけずに、部屋に上がらせた。
彼女の口数は少ない。
「朝ごはん食べてないよな?」
「うん」
彼女の顔色は悪い。血の気がひいたように青白い。長時間外にいたのだろう。唇は紫色だ。
僕はエアコンとこたつの温度を上げて、カナコを座らせた。
熱いコーンスープを淹れてあげようと立ち上がり、キッチンに向かう。
「僕、朝ごはん買ってくるからさ、風呂入りなよ。温まりな。……風邪ひかれたらたまんないから」
「覗かないでよ?」
「誰が覗くかっ! 頼まれたって覗かねぇぞ」
もちろん、カナコ相手に風呂をすすめたのはやましいことなんか考えていないから、腹が立っていた。
「なんなんだよ? いきなり来といて、その言い方ある?」
僕はカナコの前に、ほかほか湯気がのぼる即席のコーンスープを淹れた白いマグカップを置いてから、彼女の口をつまんだ。
しまった……。付き合ってた時のテンションで接してしまった。
「夏吉くん」
潤んだカナコの瞳に吸い込まれそうになったが、振りきり玄関に向かう。
「親子丼かパンどっちが良い?」
「パン」
僕はどこかソワソワしながら、パン屋さんに向かった。
部屋に残したカナコのことばかり考えながら。
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