Loop3 5/18(水) 10:36【油甲怪獣】
ウラサカは一人逃げる気は無いと言った。知らない土地で一人になるのにもリスクが伴うからだという。僕がダイダロに負けるって思わないの? ジュンペイが聞くと。
「死ぬときは、一緒に死んでやるわ」
彼女にそう、鼻で笑われた。
2022年 5/18 (水) 10:36『天羽沢商店街外れ』
「……死にたくないんじゃなかったの?」
「安心なさい、死ぬ気なんてさらさら無いから」
どっちなんだよ、ジュンペイはそう問いかけようとして止めた。つまるところ、ジュンペイは死なないしウラサカも死なない。そう言いたいのだろう多分。
「さっき言ったでしょ、マイティはじゃんけんに負けているって」
破壊された商店街を歩き、15分と少し。ジュンペイとウラサカは目的の場所に到着した。すなわちダイダロの足元、そこから規制線が張られるギリギリの位置。距離にして1キロメートルぐらいだろうか?
「勝つためには相性を覆す必要がある。あらゆる手段を使ってね」
「……まさか、寝込みを殴るの?」
ジュンペイは未だ動かないダイダロを見上げた。寝てるというよりは氷づけにされたように固まっている。これなら、その顎に一撃を叩き込むのも容易いだろう。
「手段としては悪くないわね。それでダイダロを確実に倒せるなら」
ウラサカの推測では、ダイダロは非常に効率よく余熱を利用している可能性があると言う。というのも、ダイダロの表皮は淡く蒸気を発しているのがスタンダードな状態らしい。だが今はそれが見られない、漆黒の表皮がその体を包むばかりである。
「ダイダロは自らのジュール熱を活かして、体表の石油物質を溶かしながら動いているのじゃないかしら?」
つまりこうだ。ダイダロはまるでリンゴ飴のように表面をアスファルトでコーティングしている。普段はそれを電流が循環する際の熱で軟らかくして動き、休眠時には熱がなくなるので冷えて鎧となる。ダイダロが一ミリも動かないのは冷えたアスファルトでガチガチに固まっているからだという。
「厄介ね。他の超人ならともかく、マイティじゃあの甲殻を突破できないし……」
「ごめんなさい……」
その時、ジュンペイの頭にある案が浮かんだ。
「他の超人を探せ——?」
「バカね」
即答。即否定。ウラサカは論外と言わんばかりにジュンペイに冷めた目を向ける。
「一、学生の半数近くがすでに市外へ避難している。二、まだ残っている学生も市内に散り散りになっている。三、そもそも時間が——」
「すみません僕がバカでした申し訳ありません」
要するに、学生がバラバラになっているのに二日で超人が見つかるわけないでしょ、というのがウラサカの答えだ。ぐうの音も出ない正論に、ジュンペイはひたすら撤回した。
「とにかく、今は貴方がダイダロを倒す方法を考えるの。無い手札を欲しがっても、何の意味も——」
「ちょ、ごめんウラサカ!」
その時、ジュンペイが何かを見つけ駆け出した。ウラサカが待てと言う暇もなく、ジュンペイは飛ぶようにウラサカの背後へ消えていく。いったい何なのよ!? ウラサカが振り返ると、そこには鉄パイプを握った夢高生と自衛隊員が取っ組み合う姿が目に入る。
「はぁ……もうちょっと考えて行動しなさいよ……」
ウラサカはため息を吐きながら、小走りにジュンペイの後を追った。
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