Loop2 5/16(月) 15:52【ウラサカ】

『十二位は天秤座のあなた! 今週は運勢最悪、特に不幸な出会いに巻き込まれる可能性が! 知らない人と会うときは要注意?』


 その占いをもう一度聞いたとき、ようやくジュンペイは戻ってきたという実感がわいた。流れるニュースもキャスターが喋る言葉も寸分たがわず一緒である。みんな死ぬんだからどの運勢も最悪だろ。ジュンペイは、やっぱり占いを信じなかった。

 

 学校に着くと二回目の小テストが待っていた。もう答えを知っているので悩む必要はない。手短に済ませてペンを置くと、担任が白い目でジュンペイを見つめる。


「うおっ、ジュンペイ満点じゃん!? どうしたんだよ!」


 満点のテスト。それを眺めるミゾグチの言葉さえも一緒だったとき、ジュンペイは筆舌につくしがたい恐怖を覚えた。



 2022年 5/16 (月) 15:52『瀬戸ノ夢学園 屋上』


「どう、二週目の世界は? なかなか愉快でしょ?」


 放課後。ジュンペイとオモテザカ、二人の姿は高等部第三校舎の屋上にあった。オモテザカの中の彼女は柵にもたれかかり、腕を組みながらふんぞり返っている。


「言っとくけど、僕は君をオモテザカさん扱いはしないからな。ウラサカ」

「……え、なにそれ私のこと?」

「うん、オモテザカさんの裏にいるからウラサカ」

「……だっさ」

 

 オモテザカ改めウラサカは、冷めきった目でジュンペイを見下した。


「……この際呼び名は何でもいいわ。とにかく本題に入るわよ」


 ——超人。僅かな静寂の後、ウラサカは静かにそう告げた。


「私の目的は、超人の力を使ってこの世界の滅亡を回避することよ」


 それがこの世界に残された希望だから。ウラサカはそう続ける。


「超人は神秘の力の塊、いわば存在そのものが奇跡みたいなもの。超人ならきっとこの絶望を打ち破れるわ」


 ジュンペイの頬を冷や汗が伝っていく。


「私にある時間を操る力がある。けどそれ以外はただの女の子、怪獣を倒すなんて出来やしない。そこで札森純平、貴方に宿ったその力を借りることにした」

「ちょっと待ってよ!」


 ジュンペイは言葉を堪えきれなかった。日曜日に味わった死の恐怖。それがジュンペイの心音を早める。


「そこら辺の怪獣にも勝てなかったんだよ!? 僕一人でどうにかなる問題じゃないよ!」

「誰が貴方だけなんて言ったの?」

 

 ——え? ジュンペイはうつ向いていた顔をゆっくりと上げた。そこには手のひらを向け、指を七本立てるウラサカの姿があった。


「七人。貴方を含めてね」


 超人は七人。ウラサカの言葉は、ジュンペイの心に吸い込まれるようだ。


「この学校に、あと六人の超人が眠っている。全員たたき起こしてこの世界を救うのよ」


 信じられない事だった。ジュンペイの近くに、まだ超人がいるという。それも六人。偶然な訳がない。運命か、それとも誰かの意図か。確かにジュンペイの目の前の少女は、それぐらいしてしまいそうだ。


「幸いにも私には時を巻き戻す力がある。超人になった人間は時間を戻しても記憶を保持するから、私が死なない限り時間は巻き戻し放題。あせる必要もないわ」

「……時間はたっぷりあるんだね。で、どうやって超人を見つけるの?」


 当然の疑問だった。人探しには特徴が必要だ。三毛猫と黒猫。どっちが見分けやすいかと問われれば、誰だって三毛猫と答えるだろう。


 だが、ウラサカの答えは非情なものだった。


「気合いよ」

「……はい?」

「特徴はない。性別、学年、顔。全て不明」


 強いて言うなら、前のジュンペイの様にうっすらと記憶を保持していることが特徴だとウラサカは言う。


「この学校、小中高等部あわせて4000人以上いるのですが……」

「大丈夫、時間はたっぷりとあるわ。実質永遠にね」


 嘘でしょ……。悪魔のように口元を歪めるウラサカに、ジュンペイは思わず立ちくらんだ。


 ジュンペイを取り巻く問題は二つあった。いずれも深刻な問題だ。この終わらない人探しにジュンペイは耐えることが出来るのか? そしてジュンペイはまた死ぬことになるのか? あとついでにマスクドオンシノビの最強フォームお披露目回。ジュンペイは黙示録とゴルフを乗り越え、それを観ることは出来るのか? 


——黙示録まであと5日と23時間57分32秒

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