020205【チンパンジー】
まさか家に帰ると知らない女性が居るとは思わなかった。最初は部屋なんか間違ったと思って、大人っぽく謝罪などして直ぐに扉を閉めたりした。
けれど、何度確認したって私の住み慣れた部屋であることには変わり無かったし、もう一度開けてみると慌ただしく服なんて着てるものだから驚いてしまった。裸で外に出たくは無いという羞恥心はあるのかと。また、そこによく見慣れた彼が居るものだから尚の事驚いた。
私はあえて何事も無かったかのように振る舞った。いつも通り元気な声でただいまの挨拶をして、手洗いにうがいをきちんとした。途中、女が走ってすれ違うように外へ飛び出していったけれど、その顔なんて笑いをこらえろっていう方が難しいようなものだった。
男は必死で私に早口で伝えようとするけれど、下着が裏表逆なことにばかりに意識がいってしまいうまく聞き取ることが出来なかった。
蝶、豚、チンパンジー。
ああ、なんて素晴らしい生き物たち。
それにも関わらずこの人間ときたらなんという堕落。人間が嫌になる自己矛盾。
この自己矛盾憐憫人間野郎め。
私は一番お気に入りの服へ着替えて、優雅に外へ出た。外にはきっとこれ以上愉快な事で満ちているんだろう。ああ神様、そうじゃなきゃあ、私が可哀想だろうよ。
そんなに意地悪をするのなら、私がその椅子に座ってやろうか。
私は追いかけてくる男から逃げるように走って、走って、必死に自己矛盾から逃げた。
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