020116【遊園地と黒い馬】
眠れないので外に出た。
既に人の気配はなく、空気は冷たい。道に連なる家々からは寝息さえ聞こえそうなほどだ。
歩いていると遠くにぼんやりと光っている場所がある事に気がついた。
目的地があるわけではないので、自然とそちらへ向かって歩いている。
見慣れない道を何も考えずに右へ左へ曲がりながら、ただその方向へ歩いた。
そのうち、一つの角を曲がって、その正体が遊園地であることを認識した。
園内は周囲が暗いためなのか一際明るく、陽炎のように見えた。
入ってみようと近づくと身の丈ほどの刺々しい柵があり、どうやらチケットが無いと入れないようになっているらしかった。私は立っていた係の女性だと思われる人物に話かけた。
「どこで売っているのですか」
女性はちらと私を見てその後は見ようとしない。
「ここに入るためのチケットはどこで売っているのですか」
私は追って質問をしたが、既に私の存在など最初からなかったのかと誤るほどに反応が無い。
不愉快になった私はもう諦めようと、身を翻して戻ろうとした。
最初は暗闇が濡れているのかと思われた。次第に目が慣れてくると、それが黒い毛並みの馬であることが分かった。
彼は私に向かって走ってきたかと思うと、一瞥し、遊園地の柵を越えてみせた。先程の女性はたじろいでいた。
そしてそのまま、彼は幻想的な明かりの中へと走り去ってしまった。
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