3話:再びゆうりさんの話
15歳の時分に話を戻します。
太陽さんから名古屋に戻るという話を聞いた私は、泰輝さんに連絡をとりました。
太陽さんとルームシェアしている泰輝さんは、東京へ行くとの事でした。
私は泰輝さんが東京へ行く前に告白しようと思い、しかし、勇気が無かったので、メールにて「好きです。付き合って下さい」
と思いの丈をぶつけました。
当然、当時の告白したメール内容はもっと拗らせた長文だったのでしょうが、今は覚えていません。
そして、泰輝さんからの返事も、振られたという事以外思い出せません。
これらは黒歴史だったのです。
振られてエネルギーの行き場を無くした...と言えば聞こえは良いですが、率直に言えば自暴自棄になっていた私は、
ゆうりさんに「好きな人に振られました。もう終わりだ、もう終わりだ」
などと面倒くさいラインを送りつけました。
ゆうりさんからは「それは辛かったね」
などの慰めのラインが返って来ましたが、相変わらず自暴自棄に、いや、自分に酔っている私は、ゆうりさんをラインでブロックして悦に入りました。
(今考えると、ゆうりさんもこの時私がどんな人物か薄々気付いていたように思えます。
というのも、ゆうりさんからのラインの返事は、歯切れが悪いというか、腫れ物に触るような態度だったように思えてならないのです。)
ところで、何故私はゆうりさんをブロックした事で悦に入ったのか?
それは私の面倒くさいメンヘラ気質が関係しているように思えます。
私はゆうりさんをブロックした事で、相手が困ったり傷つくだろう事を想像し、相手に自分の思い出を刻み込ませたかったのでは?
それは泰輝さんとのファミレスの件と全く同じ、とどのつまり承認欲求の塊。
これはメンヘラが手首をリストカットするのと全く変わらない、言い方を変えれば精神的なリストカット。
私が後に風俗店(ウリセン)に入った時の話ですが、店のトイレに貼ってあるボーイ紹介のポスターの自分の顔の部分だけをマジックで黒く塗り潰し、素知らぬ顔をしていました。
これはゆうりさんや泰輝さんの件と全く同じで、自分の顔だけを塗り潰す事で誰かに気づいて欲しかったのでしょう。
「自分はここにいるんだ!」という事を。
(ところで、書いていて気付いたのですが、2話の泰輝さんを通して浮かび上がった私自身の現実性の無さは、1話のあやとさんの現実性と正反対に、対を成しているように思えます。)
結論を言うと、3話も長々と書いてきて分かったのは、当時の私が劇場型人間だという事、
常に誰かに見られているように振る舞う演技型人間、極端な自意識過剰人間。
私が泰輝さんに恋をしたのも、その恋の仕方(ファミレスのナイフの件)も、極端に非現実的です。
まるで当時の私は演劇の中にでもいるかのように振る舞っている。
常に現実感が無くて、非現実に生きている人間。
それは強姦されていた時何も感じなかった事や、神田川を歌ってしまう感性にも現れているように思えます。
話を戻します。
後日、ゆうりさんからメールが届きました。
「ごめん、ついて行けない」
と、一言だけ。
これがラインをブロックした直後ではなく数日経った後だったのは、ゆうりさんにも心の整理する時間が有ったのでしょう。
ゆうりさんは現実的だった。泰輝さんは天才だった。当時の私は非現実の中で生きていた。
私はゆうりさんからのメールを削除した後、(ここでは悦に入りませんでした。)
ただただ苦虫を噛み潰したような、なんとも言えない後味の悪さを心に残しながら眠りについたのでした。
(追記:この僅か2年後に、私はゆうりさんの友人と偶然会う事になります。
しかし、今はこの友人に対して、「何故抱いてくれなかったのか」と電話した話は割愛し、後にする事にします。
次回からはいよいよ売春についての話が始まりますので、最後までお付き合い下さると幸いです。)
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