第11話 巡検
視界の良い日には、規則で月に二回以上と定められた砂上巡検に出ることもある。防砂服のフードを頭にかぶってゴーグルを掛け、バックパックを背負って一枚板の砂スキーを片足に
担当地区は監砂台である家を
たまにだけど、まだ新しいロープや手袋、用途不明の金具といったものが砂上に落ちていることがあって、これはどうやら侵入者の落とし物らしく、もちろん監砂員以外の人間が無許可で浜を歩き回ることは禁じられているのだが、砂スキーやウインドボードを使って無断で浜に出て、時には砂を掘り返したりして物品を探し集めている人々が複数いるのは、砂の上に残る痕跡からも明らかだし、一度だけそれらしい姿を見たこともある。
いつだったか、砂上巡検で相当遠くまで出た折に、少し風が出てきたので帆走で監砂台に引き返そうとセイルを張っていたとき、さらに沖のほうで何かがちらちらと動くのが視界の端にとまり、目を凝らすと、地平線の近くを、砂と空の間を滑るように、また別の三角形のセイルの、そこにあるはずのない小さな影が過ぎてゆくのが見え、あわてて双眼鏡で追ってみると、セイルを操る人の姿まで見分けることができたのだ。
やや逆光気味のそのシルエットが、少女か、あるいは少年みたいに見えて、一瞬、言い知れない人恋しさと、胸の奥が引きつるような痛みを感じたのだったけど、次の瞬間にはひどく腹が立ちはじめた。断りもなくこの街に足を踏み入れて、掘り返したり荒らしたり物を持ち去ったりする、そんな者のことを戯れに「砂委員」と呼んだりもするらしいのだけど、あの子の靴や、あの子の制服、あの子のリボン、あの子の眼鏡、そしてあの子自身もどこかできっと眠りについているこの砂を踏み荒らし、掘り返し、盗みをはたらく者たちを、その懐かしい名で呼ぶなんて、決して受け入れられないことだった。
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