どうして、こんな事になってしまった?
さて、突然ではあるが……俺は今、白くて簡素なトランクスのようなパンツ1枚、裸同然の格好で、カーテンで仕切られただけの非常に狭い空間にいる。
そして俺の前には、下半身は同じようなパンツで上半身はブラウス姿のマリオンがいた。
マリオンは頬をほんのり赤く染め、上目遣いで俺を見ながら呟く。
「恥ずかしいから、あんまり見るなよぉ……!」
「あわわわ。ご、ごめん!」
俺は慌てて視線を逸らす。マリオンは若干の
マリオンの差し出すブラウスを受け取り、脱衣カゴに入れようとして……そこで、気づく。
「あ? マリオン、それっ!?」
マリオンの腹には、大型のスタンプでも押したように『一期一会』の奴隷刻印があった。
そう言えば、奴隷商人のランドルフから移し取った時、同じ場所に刻印があったのを思い出す。
マリオンが、泣きそうな顔になる。
「あはは……。さ、さっき言ったのも本当なんだけど……これも、人前で脱ぎたくない理由のひとつなんだ。この無様な刻印、恥ずかしくって人に見られたくないからさ……ま、オレはまだ、服で隠せるとこだからマシなんだけどな」
それから俺の左手を掴んで言う。
「でも今は、この忌まわしい刻印も……前ほどムカつかなくなってるよ!」
とか言ってるマリオンの指先はプルプルと震え、目はキョドキョドと踊っている。冷や汗もダラダラ流れていた。
うわあ……マリオン、すんげえビビってんじゃん!?
なんだか俺も、急に情けなくなってしまった。
俺は、こんな展開を望んでない。マリオンも、この通り超ビビってる。そして今からやろうとしてるのは、『特にやらなくてもいい事』のはずである。
なら、なんのために俺らは恥ずかしい思いを……こんな格好で、裸同然の大勢の男達がいる場所に……入って行かなければならないのだろう!?
俺は
「ねえ、マリオン。やっぱ、やめない?」
やめない? という疑問系ではあるが。
そこには、どうかやめると言って! という切なる思いが込められていた。
しかし俺の嫌そうな顔が、マリオンには気に入らなかったようで、ムスッとした顔になる。
「な、なんだよ、ジュータ! お前、俺の事を守るって言ってくれただろ? あれ、嘘だったのかよっ!?」
「いやぁ、嘘とかじゃなくってさー。本人がビビってるのに、やる事ないって言ってんだよね」
「ビ、ビビ!? ビビってねーよ! ビビってねーしっ! 全っ然っビビってねーわ! ……よ、よーし、お前がそんなこと言うなら、オレがちっともビビってないって証明してやるよっ! ほら、いくぞ!」
そう言うとマリオンは手ぬぐいで髪をまとめ、俺の手を掴んでカーテンから引っ張り出そうとしてくる。
……あちゃー。説得の仕方を間違えた。これもうマリオン、明らかに意地張ってるだけだよなー?
きっと本人も、バカな事を言っちゃったと後悔してるはず。でもまあ、本人がやりたいと言ってる以上、付き合うしかないのが辛いところだ。
俺は、脱衣カゴをカーテンの向こうに押しやると、交換で番号の書かれた木札を受け取る。帰る際は、これを使って着替えを貰うのだ。
貴族の指輪を外して、木札と一緒に袋に入れて首から提げると、諦めにも似た気持ちで足を踏み出しながら、「どうして、こんな事になっちまったんだろう?」と頭の中で繰り返した。
なぜ、こんな事になったのか……話は、3時間前に
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