開かずの間のミステリー
その晩、俺は『銀の三角亭』でしこたま酒を飲み、上機嫌で帰宅した。
そろそろ、夜の十二時を回ろうとしてる。マリオンの『一期一会』は、出かける前に許可しておいたので、特に問題ないだろう。
「うーいっ、ちょっと飲みすぎたかなぁ……?」
フォクシーのおかげで、『銀の三角亭』でウスダージャを使った料理が食べられるようになった。といっても、たったの1品だけだが。イモを細切れ肉と一緒に煮込んだその料理は、いわゆる肉じゃがにトマトを足した味付けで、中々に美味だった。
なんでも、西のモンスターはすでに大半が
なんと酔っ払ったエルフ娘が、またもパンツを脱いだのだが、今夜は客が多すぎたのでフォクシーも手が回らず、酒場の一角が露出エルフの
デビットと122才の魔女が最前列に陣取って、すっぽんぽんでエロチックに舞うエルフ娘に歓声を浴びせ、脚を上げる度に拍手をしては、大喜びでチップを押し付ける。ったく、公共の場で何してんだよ、こいつらは……。
とか言う俺も、本音は近くで見たかったのだが、フォクシーがいたので恥ずかしくって、とてもじゃないができなかった……ああ、悔しい!
だって、この間の夜が気になって、よーーーく観察してみたのだが……実はフォクシー、俺の料理や酒を運ぶ時だけ、尻尾の振り幅が大きくなるんだぜ!? それに俺の顔を見ると、嬉しそうにニコっと微笑んでくるんだ!
どうやらあれは冗談でもなんでもなく、本気の言葉だったようだ。
……えー、マジかよぉ、照れちゃうなー? そんな子の前でさぁ、他の女の裸なんて……ほんのちょっとしか見れないだろー!? いやーっ、色男は辛いぜっ! えっへっへー。
なんて事を思いつつ、フラフラと千鳥足で屋敷に入ろうとした時、ふと気づく。
「……ん? あれ……? 一階の部屋の灯りが点いている……?」
珍しい事だ。マリオンは夜、自分の部屋にいる事がほどんどだから。
そして俺はある事に気づき、再度首をひねる。
「っていうか、あそこ……『開かずの間』じゃないか!?」
一体、どういう事だろう?
なぜ、『開かずの間』に灯りが点いてるのだ?
あそこは、マリオンしか入れないはずなのに……まさか、泥棒!?
名前は『開かずの間』でも、物理的にはただの部屋。窓を破れば、簡単に入れる。まあ、置いてあるのは大人のオモチャやら拷問器具ばっかで、金になるとは思えないが。
だけど……もしもマリオンが物音に気づいて中に入り、泥棒と鉢合わせたら……?
万が一の可能性を考えて、俺の背筋が凍る。足音を殺し、そっと部屋の窓に近づいた。
と、その時だ。
「……にゃあっ」
「!?」
な、なんだ……部屋の中から……子ネコの鳴き声?
まさかマリオン、捨て猫でも拾ってきて、俺に内緒で飼ってるのか?
「なんだよ……そんなの言えばいいのに。俺、猫くらいで反対しねーよ……猫の名前、なんにしよう?」
酒でぼやける頭でそんな事を呟いてると、また。
「マンガンだにゃー!」
……い、いや。これ、猫じゃねーな。
っていうかこれ、マリオンの声だな。
マ、マンガン……電池??
はぁ? ……このファンタジーな異世界で???
喉をゴクリと上下させてから、ひとりごちる。
「な、なんだそれ……? 一体、中で何が行われてるんだ!? ……すんげえ気になんだけどっ!」
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