マリオン、秘密のひとり遊び
気にはなる。でもそれは、見てはいけない……。
これは多分、マリオンのプライバシーに関わる事だ。見たらなんか、すごく可哀想になる事をやっているに違いない。
誰だって秘密くらい、あるに決まってるじゃないか。それを外から覗かれるなんて、あまりに気の毒だ。なにせ俺は、『恥ずかしい板』を見られた男。
恥を見られる苦しみを、誰よりも知っているのだから……。
そう、賢く理性的に判断し、黙って
かぼそく、歌が響いた。
「戦略ういろう
それを聞いた瞬間、俺の身体を電流が突き抜けた!
そ、それはーっ!? エロゲメーカー『ライオネル』より発売された脱衣麻雀RPG『名古屋が征服♀
『名古屋が征服♀雀くふうど』はゲームそのものよりも、軽快なメロディのキャッチーな主題歌が有名になり、YOUTUBEやニコニコ動画などで、大量のMADが作られる事になったエロゲーである。ゲームはプレイしてないが、曲だけ知ってるって人は多いだろう。
壮大かつ感動的な美しい
俺はバッと振り向いて、窓にカサカサ走り寄る。申し訳ないけども、悲しいことに自分の意思では止められなかった。もう本当に反射的に身体が動き、窓に顔を押し付けていた。いやマリオン、マジごめんってば!
で、覗いた先は……例の『大人のオモチャ箱』が邪魔でよく見えないが、どうやら髪型をツインテールにしてメイド服を着て鞭を持ったマリオンが、姿見の前でポーズを取っているらしい。首をひねって、ブツブツ言ってる。
「あー、いや。……ここって確か、こうだっけ? ……ラララー♪」
そして身体を動かし、また歌いだす。箱の上にはブランデーを入れたグラスと、描きかけの絵が置いてあった。酔っ払ってるのか、なんだか動きがフラフラしている。
俺はマリオンの姿を見て、息を呑む。
「メ、メイド服に鞭……しかも髪型はツインテール! あれはまさか、『名古屋が征服♀
名古屋ニャア子は、脱衣マージャンで世界征服を狙う名古屋
脱衣マージャンでどうして世界征服できるのかは謎なのだが、かくあれ『名古屋が征服♀雀くふうど』の世界では、フィールドを
そして脱がしたヒロインに味噌煮込みうどんをぶっ掛けて、エビフライをたらふく食わせる事で、洗脳して部下にできるのである。
断っておくが、味噌煮込みうどんもエビフライも、何かのメタファーではない。ごく普通の食べ物という設定で、薬物も含まれてない。
まったく意味がわからないだろうが、そういうゲームなので受け入れて欲しい。大丈夫、こんなの理解できる奴は絶対いないから。
とにかく今、酒に酔ったマリオンは、そのエロゲのオープニング曲を歌い、コスプレで鏡の前でダンスして、それを絵に描く一人遊びに
……っていうか、よく聞こえないけど。マリオン、歌うめえ。
俺はなんとか覗こうと、必死になって顔を窓に押し付けるが、箱のせいで後姿が半分ほどしか見えない。
やはりどう頑張っても、この窓からは全容が見えないようだ……歌も、やっぱりよく聞こえない……しばらくしてから俺は立ち上がり、ふらりとその場を後にする。
胸に、ある決意を秘めて……。
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