四日目「ばんさんかい」

暗いレストランの中にオオミミギツネはリョコウバトと僕を押していれる。僕らが中に入るとドアを閉める。


「え?なになに?」


バチッという音。その後に電気がついて明るくなった。


「え?なんですの?これ?」

「ようこそ!ブタのレストランへ!」


色とりどりの野菜とスープなどがいっぱい並んでいる。ジャパリまんも真ん中にある。


「す、すごい!ごちそうだ!」

「すごいですわ…」


僕らは歓声をあげていると、中からブタが出てきた。


「どうもこんにちは!どうですか?この食事と施設は?」

「すごいよ!」

「私も興奮しますわ!すごいですわ!!」


僕とリョコウバトはすごい興奮してキョロキョロしている。


「それじゃあ、本当はちゃんとレクリエーションやるべきなんでしょうけど…」

「まあ皆さん顔見知りですし…それに今日は元々内々の予定でしたから、普通にご飯食べましょうか?」

「うん」「はい!」「はーい」


僕とリョコウバトとオオミミギツネが返事をした。


ざあああ…ざあああ…

波の音が聴こえる。レストランの窓際に僕たち四人は座っている。お客はいないから貸し切りだ。僕たちはご飯を食べ始める。隣の席のリョコウバトさんはスープをとってスプーンで掬う。リョコウバトは美味しそうにご飯を食べる。


「おいしいですわねキュルルさん!」

「うん!」


リョコウバトは僕の視線に気づいて話す。僕は返事をする。


「ブタありがとう!」


僕は嬉しさが溢れてお礼をいう。


「え、えーと…どうもです!」

「あ、呼び捨て!」

「あっごめん、つい…」

「別に大丈夫というかむしろその方が私は良いと思いますよ」

「ブタさんが良いならいいわ」


「え、本当?じゃあブタ!オオミミギツネ!」

「ふふ」

「ちょっとだけ距離が縮まった気がして嬉しいかも!」


僕も親近感が沸いてきた。


「私も呼んでほしいですわ!」

「え?」


リョコウバトさんは緋色の瞳で僕を見ながら期待の目を向ける。


「えーと…じゃあリョコウバトさんは…」

「キュルル君やっぱすこし恥ずかしいのね」

「そうですの?」

「う、うん」


僕は正直にいった。


「キュルル君はリョコウバトさんのことが好きだから恥ずかしいのよね」

「う、うぅ」

「まあキュルルが恥ずかしいなら仕方のないことですわね」

「ごめん!」



「それはそうとオオミミギツネも私のことリョコウバトと呼んでくださっていいですのよ」

「え、私?」

「リョ、リョコウバト!」

「はいですの!」

「けっ、けっこう恥ずかしいのねっ!…ほら!キュルル君も呼んでよ!私も呼んだんだからさ!」


「リョ、リョコウバト…」


「はい、ですわ」

「きゃー恥ずかしがってーかわいいい!」

「やめてよ!」


オオミミギツネは僕をからかう。


「ふふふふ」


リョコウバトは楽しそうだった。僕は恥ずかしくて、下をむいてスープを飲んでいた。


「あれ?これ貝のスープだ」

「あ!気づきました?」

「実はこのホテルの生け簀ではハブの集めた貝やら魚やらを置いているんです」

「へーじゃあその貝なの?」

「そうです!美味しいのだけを味見したり調べたりしてつくってます!」

「え?すごい!」


「魚も捌けますよ!」

「すごいよ!」

「ふふっそうでしょう?私とハブさんを甘く見ない方が良いですよ!」


ブタは胸を張りあげる。


「あ、私は料理に関しては甘くみていいわよ…」


オオミミギツネは料理に関しては自信がないようだった。


「そんな卑屈にならないで、オオミミギツネさんも練習すれば達人ですよ!」

「本当?じゃあ今度練習するね?」

「オオミミギツネって単純だね?」

「そうよ!私はわりと単純だから誉めて!」

「オオミミギツネさんはいつももお客様のことを考えてて偉いですわ!」

「うん!オオミミギツネは明るくて楽しくて一緒にいると元気になれるよ!」

「な、なんか改めて言われると照れる、ふふ」



お皿の料理もたまに喋りながら食べているとすこしずつなくなってくる。


「そういえばキュルルさんお話ってなんですの?」

「あ、そうだった…え、えーと…」


僕は話そうとしたが悩んでやめた。


「いいよ…」

「え?なんでですの?」

「だって…」

「あのキュルルさん…私の部屋に今日きてくれませんか!」

「え?」


突然リョコウバトは僕を部屋にきてと誘ってきた。正直誘われるとは思わなかった。


「あら?キュルルくん嬉しそうね」


オオミミギツネはニヤニヤしながら呟く。えーと…な、なんか勘違いしてるのかな。


「え?本当にきていいの?」

「もちろん!」


リョコウバトの意見はそれでも変わらない。


「うぅ…ありがとう!」

「よかったわね?キュルル君!って泣いてる!?」

「ありがとうありがとう」

「あら?そんなに嬉しいんですの?」


僕は涙を拭って、テーブルの料理を食べていく。この後話は違う方向にいく。



「ブタの料理、本当おいしいから!ハブにもきてほしかったな」

「まあ帰ってきたらまた食べましょう?」

「うん」


辺りも完全に暗くなり、電気がより明るく僕たちを照らす。食べるペースも落ちて来てお話がいっぱい増える。僕はブタにずっと気になっていたことを質問した。


「ブタって人についてどう思ってる?」

「え、えーと別になんともというか…」

「あまり覚えてないですね…囲いにいた記憶しかないです」

「ふーん」

「急にどうしたんですか?」


「いやリョコウバトさんが前に僕のこと苦手だっていってたし…」

「?」

「リョコウバトさんは人が絶滅させた動物だし」

「ブタだってお肉のために人に飼われてた動物でしょ?」

「はい、まあそうですけど…」


「そ、それで…さ、最期のときとかって…えーとどうなの?」

「さいご?死ぬときですか?それは痛かったですよ?」

「それで僕に恨みとかないの?」

「恨む?うーんあるかもしれませんけど…キュルルさんとは関係ないですよね?」

「え?いや、そ、そうか…ごめん」

「……」


そうだ…確かにそうなんだけど…


「…キュルルさんは優しいんですね?」

「いや違うんだよ…僕はなんかお世話になってるのに罪悪感なく生きてたことが申し訳なくて」

「別に人だからって、人がやったことをキュルル君が自分で責める必要はないんじゃない?」


オオミミギツネは僕の罪悪感に対してその必要はないという。でも…


「でも…僕は肉を食べたこともあるよ?」

「それは生きている以上仕方のないことですよ、別にキュルルさんは私を今食べようとなんてしてないですよね?」

「それはそうだけど…」

「私は食べずに困らないならそれでいいです…困るなら食べるのも仕方のないことです」


なぜそんなに達観できるのだろう。僕だったら人を恨みそうな気がするような…でもブタは僕を目の前にしてるからそんなことを言うんだろうな。きっと本心じゃないと思う。


「それは豚のフレンズとしての意見なの?」

「違いますよ!ブタは豚として生きようなんて思っていません!ブタであるという自覚はありますけど」

「え?」

「ブタはみんなのために生きたいです!」

「そうね…私だってオオミミギツネであると同時にブタのトモダチだもの」

「……」

「同じように人がどんな人間でも今ここにいるキュルル君を歪めることはできないわ」

「……」

「キュルル君?」


なるほど確かにそうだ。でもどうなんだろう…


「僕も?」

「そうよ?貴方もみんなもトモダチなの、そうでしょ?」

「……う、うん」


その後も談笑が続いたが僕の頭の中にはみ「トモダチ」という言葉が余韻のように残っていた。

僕はフレンズを動物ではなくトモダチとして捉えることができているだろうか…

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