四日目「みまわり」
「なんで悲しかったんだろう」
キュルルは自分が泣いた理由がわからなかった。いままでも夢の中で苛められたことはあっても悲しくなることはなかった。リョコウバトが現れても悲しい顔をしてもそれだけなら悲しい気持ちにはならないと思う。
「それはキュルル君がリョコウバトが本当に好きになったからじゃない?だから離れていく彼女をみて、離れちゃうって思って、離れてほしくないと思ったから悲しくなったとか…」
僕がリョコウバトを好きになって悲しくなった?
「そうかもしれない」
「オオミミギツネさんは夢のことは覚えてる?」
僕はオオミミギツネに夢の中でキスをされたことをを話した。
「え、えーと…」
オオミミギツネは顔を赤くする。
「俺はそこにいたのか?」
「私はいました?」
ハブとブタが聞く。
「ううん」
「そうか…」
「そうなんですね」
「ハブとブタはいなかったのね…なんで私だけなのかな…私がキュルル君を思ってるから?」
「…ど、どうだろう……」
なんか頭がぼーっとしててぜんぜん考えが浮かばない。
「ちゃんと原因を考えてみようぜ」
ハブの冷静な意見が方向を修正する。そうだ、これは何かの暗示とかもっと何か直接の何かに違いない。夢が繋がるなんて異常なことだ。そう異常な…
「あ、そうだよ!これってセルリアンの仕業だよ!」
「セルリアンか…うーん…まあ、それしかないな、他に原因があるとしたらお前がただ淫乱な夢をみただけってだけだし」
それは…確かにそうだ。
「そうね!たまたま同じような夢をみてるってこともないだろうし…」
「それならハンターに連絡しますか?」
「う~ん…ハンターは連絡がつきにくいから博士にきてもらおう」
「博士ですね!わかりました…あのー私が行ってもいいですか…」
「いや俺がいく…」
「それは駄目よ…知識のある人がいないと困るわ…」
「でも戦闘はブタが一番強いし…ちょうど外に用事があるんだ、それに急を要するような感じでもないし…」
「う~んでも…」
「わかりました…私はここに残ります!」
「…じゃあ任せたぞ」
「まあいいわ」
ハブさんは出ていく支度をする。
「夢を繋ぐセルリアンってどんななんですかね?目的はなんなんですかね?」
「キュルル君…今夜は寝ない方が良いかな?」
「いやどうだろう…」
ブタさんと僕とオオミミギツネさんは三人で喋る。僕たちはハブをまっていると入口にハブがやってくる。
「ハブ!がんばってね!」
「ああオオミミギツネ!お前らもな!セルリアンに食べられないように!油断するんじゃないぞ!あとセルリアンがいるからって寝ないのは駄目だからな!」
「うん!ハブも道中気を付けてね!」
僕とブタとオオミミギツネは送るための言葉をかける。散々言った後、ハブは非常階段にあった小舟に乗って外に漕ぎ出す。船はしばらくたったらブタが縄を引いて戻せるようになっている。その間話す。
「そういえばオオミミギツネさん今日の会どうしましょう?」
「あーそうねー会があったわねー」
「……?」
会?って何のことだろう。
「じゃあブタが準備してくれない?」
「あーはい!わかりました!」
「ん?どうしたの?キュルル君」
「オオミミギツネさん、あのー会ってなんですか?」
「スタッフの食事会を今日やろうと思ったの」
「そうなんですか」
「でもハブさんが準備してたから、ハブさんの代わりにブタさんに頼もうと思って」
「オオミミギツネさんはやらないんですか?」
「私はりょうり下手だから…へへ」
彼女は苦笑いしながら答えた。
「そうなんだ…」
僕らはハブさんを見送るとホテル内の見回りをし始めた。もし見回りをしてセルリアンがいれば、ブタさんに倒してもらうか、なるべく近づかないようにすることになっている。オオミミギツネさんはキュルルと一緒にホテル内の上を回る。ブタさんは一人でホテル内の下の方を回る。
「オオミミギツネさん一緒にいこう!」
「うん!」
「そういえばさ!キュルル君って夢の内容の話って全部話してないでしょ?」
「え?なんでわかったんですか?」
「やっぱりそうなんだ!そうじゃないかと思ったよ…えへへ」
僕はオオミミギツネにキスをされたことしか話してない。オオミミギツネの方も実はそんなに覚えてないようだった。さすがにみんなの前だとどうかと思ったけど二人だけだったら話してもいいかもしれない。
「実は…」
僕は夢の内容についてほとんど話した。今回だけでなく前回の内容についても覚えてる限りほとんど。カラカルとの確執については誤魔化したけど。
「そ、そうだったの…だいぶ激しい夢だったのね?」
「ごめん!変な話をして…」
「ううん…私、そんなに大胆だったんだ…ふふ」
「すごかった」
「キュルル君はそういうことしてほしいの?」
「え?いやその僕は…してほしい気持ちもあるけど…でも僕はちゃんと絵を描けるようになりたいし」
「まあ適度にってところなのかな?」
「うん…まぁ…そうなるかな…」
「オオミミギツネさんはそういうことしたいときある?」
「そうねーなくはないけど、あまり…っていっても夢の中での私の聞くと説得力ないか…ふふ」
すこし考えてから…
「まあキュルル君が望むならそういうのもありかとは思うよ?」
「え??僕が?」
「よくわからないけど、キュルル君は頑張り屋だし、いつも頑張ってくれて嬉しいからすこしくらい甘えてくれたってかまわないよ?」
……
「…そ、そうだ!先にリョコウバトのところにいこうよ?」
「そうね!心配だしね!」
オオミミギツネと僕はリョコウバトの部屋にいってみるがそこにはいない。いろいろまわって、リョコウバトは屋上にいた。
「リョコウバトさーん!」
「あ、キュルルさん!」
「こんにちは!」
僕はリョコウバトに挨拶をする。
「キュルルさん!昨日はありがとうございますわ!ぜひ今日の夜で部屋にも来てこないだの夜のこっもごもご」
僕はリョコウバトさんの口を塞ぐ。
「え?リョコウバトさんとキュルル君って何かあるの?」
「いや昨日お風呂でお話をして、またお話しようねって話だよ!」
「ふ~ん…」
オオミミギツネさんは怪訝そうな顔をしている。
「キュルル君、また何か隠してるでしょ?」
「え、えーと…いやでも」
僕はオオミミギツネにまたいうか迷う。
「……」
「……」
「んんーっ」
オオミミギツネさんはまっすぐ僕を見つめてくる。
「まあいいや…別に隠し事なんてみんなあるでしょ?言いたくないことぐらいさ!」
「あ、ありがとう…」
なんか妙に気を使われてしまった。
「あ、そうだ!そろそろ戻らなきゃいけないから戻るね!じゃあ続きはキュルル君お願いね!リョコウバトさんとお話!」
「うん!じゃあオオミミギツネさんもがんばってね?」
「うんうん!もちろん!……じゃあね」
オオミミギツネは入口から階段を下りて行った。
「ふぅ…でもリョコウバトさんが元気で良かったよ」
「元気?そうですわね?でもすこし眠い…」
「眠い…あ、そうだ!あのリョコウバトさん昨日みた夢のことについて何か知ってることない?」
「え、えーと夢ですの?そういえば…昨日の夢は…ブタさんたちと一緒にいたんですがそれが突然消えて私一人で泣いている…あっすみません妙な話を…」
「う~んと」
「…でもそれ以上…覚えてなくて…ごめんなさい」
「いや…それは重要なことかも…あとセルリアンについて何か知らない?」
「セルリアン?どこかにいるのですか?」
リョコウバトはキョロキョロと見まわす。
「いや…えーと最近…」
僕は最近起こってる事案についてなるべく簡潔に話した。
「なるほどだからセルリアンと夢について聞いたんですのね?」
「うん」
「リョコウバトさんは何か知ってる?」
「はい、そのセルリアンについては知ってますわ!ただその方は姿を見せないので…」
「知ってる!?お話とかするの?」
「いえ!お話はできません!どこからともなく声がして悲しい気持ちにさせるのですわ」
「悲しい気持ち?何のためにそんなことをするとかわかる?」
「いえ」
「そうなんだ…でもということはリョコウバトさんの近くにいる可能性が高いってことだよね」
「そうかもしれませんわ」
……
「それはそうと…今日食事会があるんだけど?」
「食事会?」
「是非参加してくれない?」
「そうですわねー…」
「おいしいものもあるし、話したいこともあるし」
「おいしいもの!そうですわね!じゃあ…わかりましたわ!参加しましょう!」
「うん!じゃあ夕方にロビーに集合ね!」
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