三日目「ゆめ」

僕はそそくさと逃げるように出ていった。


「あれ?もうでるの?」

「うん…」


オオミミギツネやブタ、ハブたちが気になるけど、名残惜しさがあるけれど、僕は浴場を出ていった。

部屋に戻ると、お布団で心と体を落ち着かせる。心を落ち着け、体を落ち着けると、横になったそのまま、寝てしまった。


「……キュルルくん!キュルルくん!」


目の前にオオミミギツネがいた?ここはどこ?

僕はキョロキョロと辺りを見回す。


「ここは…夢の中だよ!」

「え?」

「いやー夢の中でまでキュルル君にあえるなんてねー」

「どうして?オオミミギツネさんが?」

「さぁ?なんでだろうね」

「そこにいるのは誰?」


声のする方をみるとカラカルがいた。


「うわ…カラカル!」

「あ、えーとカラカル様でよろしいでしょうか?」

「え?何?そうよ!私はカラカルよ!」

「あ、どうもキュルル君がいつもお世話になっております」

「この人は、僕の「お手伝いさせてもらってるホテル」の支配人のオオミミギツネだよ!」


僕はオオミミギツネをカラカルに紹介する。


「はい、ここのホテルの支配人をさせてもらってます。オオミミギツネです、よろしくお願いします」

「あ、いやそんな夢の中で堅い挨拶しなくても…」

「あら?そうですか?なら…カラカルさんよろしくね!」

「あ、うん、よろしくね」


カラカルは小さい声で「面白い子ね」という。僕は「うん」と頷く。オオミミギツネはわり明るくて僕なんかにも声をかけてくれる優しいフレンズだ。


「それにしてもなんで夢の中で出会ったんだろうね」


オオミミギツネは当然を疑問を話す。


「そうだねーなんでだろう?カラカルはわかる?」

「そうねー貴方が浮気症だからじゃない?」

「え?」


カラカルは当たり前のように話す。


「え?なになに??浮気?カラカルとキュルルは付き合ってるの??」

「違うよ!僕は絵一筋って決めたんだ」

「ウソつきね!私、知ってるわよ?貴方、オオミミギツネとリョコウバトで妄想して○○○〇してるのみてたもの」

「あーあーあー!や、やめてよ」


僕は必死でオオミミギツネさんの大きな耳にその言葉が届かないようにした。


「え~!キュルル君、私でそんなことしてたの~?ふふ」

「なんで嬉しそうなの?」


でもなんだかオオミミギツネは嬉しそう。すごく恥ずかしい。


「いやー意外だなーって思って!そういうことに興味ないと思ってたからさ!」

「僕は絵一筋だから!」

「そんなこといって昨日だってリョコウバトさんの前で?ほら…ねぇ?」

「そ、それはカラカルが」

「もーキュルル君、正直じゃないんだねー」

「……」

「ていうかそれよりも!」


僕は話を本題に戻そうとする。


「キュルル…しましょう?」

「駄目だって!」


その言葉を遮るようにカラカルが会話の主導権を握る。そのまま寝かされる。

オオミミギツネも笑顔のまま、僕の目を見ている。


「オオミミギツネ、あなたもお願い!」

「わかった、キュルル君よろしくね」

「駄目駄目!」

「大丈夫だよ…夢だから」


よくわからない理屈で僕に何かしようとする。首を振って抵抗するが、どうしてもオオミミギツネの顔と瞳に吸い寄せられる。


「大丈夫??」

「オオミミギッ!?!?」


答えは遮られる。


「さぁ…私も…」


頭が気持ち良すぎて何も考えられない。


「きもちいい??」


快楽が体中をめぐる。僕は耐えるように目を瞑る。駄目だ駄目だ


「さぁ!!さぁ!!どう?気持ちいいでしょ?」


駄目駄目!!

どんどん溜まっていく欲望の波に押し流される。ああやっぱりどうしても。もっと気持ちよくなりたい。僕がそんな気持ちになった時に何かが起こった。


「……」


あ、あれ?音が消えた。感覚が消えた。目を開けると僕が責められてる上の方でリョコウバトが浮いて見える。リョコウバトは深い水の中にいるみたいに彩を失って冷たく見える。


「どうして?なんで?そんな顔してるの?」


悲しそうな瞳で僕を見つめている。何がそんなに悲しいの?僕の何がいけないの?

ああいかないで。僕はリョコウバトがどこかに行ってしまう感覚に陥った。

寂寥感に駆られて涙の雫が伝った。


「…ルル君!…キュルル君!」

「寝せ…い…やれよ」

「でもキュル…君、すご…うなされてるから…」


意識が安定せず声が途切れ途切れで聞こえる。重い目を開けると


「オオミミギツネさん…ハブさんまで…」

「大丈夫?キュルル君」


僕はまだ夢の続きをみてる感覚にあってオオミミギツネさんの瞳が怖い。肉体が重い。


「悲しい夢をみてたのね?」


僕の瞳から雫がこぼれた。…そうか…僕は悲しかったんだ…


「お話しして?お話すればきっと楽になるわ!」

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