第4話

センリが普通の人間ではないことくらい、幼少の頃から気づいていた。

両親は私とセンリに均等に飯を与えていたが、腹が減ったと言っては私のものを食べ、末子を可愛がりたいからと両親もご飯をあげた。小学生になりお母さんの弁当から給食になり足りていないのではと父が心配した。

屈託のない笑顔でありがとうというから、家族みんなが微笑みを隠さなかった。そんな顔の裏で、センリは隠し事をしていた。

後日、彼の担任から電話がかかってきてどうして面談に来ないのかを母は問い詰められた。なにも聞いていないと答えたら、担任は呆れた声でご家庭で気がつかなかったんですかと問うた。

「センリくんが給食を一人占めするので非常に困っています」と意味の分からないことをいう教師に、母は当惑した。そうだろう、虐めや暴力の類いなら理解できるが給食を一人占めと言われてもピンとくるはずがない。

私は隣で漫画を読んでいるセンリに、一人占めってどういうことと聞いた。給食が始まってから2日、彼の属する1年1組の給食は全て一人で食べ尽くしていたらしい。お腹が空いていたからとのことだ。


「誰にも止められなかったの」

「別に」

今なら頭を叩いてでも注意しただろうが、なにせこんなに小さな自分の弟が化け物じみた食欲を持っていることに畏れをなした。

「……出された分しか食べちゃダメやねんで」

「らしいな。先生が言ってた」

「なら、言われた通りにしいよ」

「明日からそうする」

この日を境にセンリが給食を一人占めすることはなくなった。だが、彼の素行が改善したということではなかった。


勉強は問題にならない程度のむらっけであったが、体育など集団競技は途中で飽きてしまうなどの些細なものからか細い女子生徒に手加減なくサッカーで体当たりするなど危険なものまで様々であった。

さっきのような生き物を虐めるのも多かったらしい。 彼の道具箱や裁縫箱のなかから生物の死骸が出てこないほうが珍しい。当初は虫の死骸ばかりで、センリが嫌がらせを受けていると教師は勘違いしたが、彼が学内で育てていた鯉を分解した鋏で三枚おろしにしていたため、露見した。


しばらくすると学校に行かなくなったので、彼が学校で虐めにあっていると両親は心配していた。センリいわく自分が学校にいれば迷惑らしいと両親を説得した。


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