第11話


「う~ん、数時間しか離れていないのだけれど、なんか久しぶりの我が家って感じですね」


あの後、天南と子供は帰って行った。もちろん我々の事は、言わない様に念入りに釘をさしている。まぁ数年もすれば忘れるだろうか?

そんな事を思いながら、私は縁側でお茶をすすっています。


「・・・なにか、ああいうイベントが起きると、寂しくなっちゃいますね」


本当になんで私は、森の外に行けないのでしょうか。

私のこの力は座敷童子の枠を外れている事くらい、分かっているんですよね。


「私は妖である、筈なんですけどね。そう思い続けているんですけどね、現実はやはり辛いモノなんでしょうか?」


私は産まれてからずっとこの森にある、人間の集落に居ました。

今もう、妖怪の暮らす。避難所になっていますけどね。


「・・・おっと」


「おや、お客さんとは珍しいですね。こちらへどうぞ」


そんな暗く悲しい事を考えていると、人の姿をした何かがやってきました。

頭にはえている角からして、多分鬼でしょう。

この世界における鬼はもう、人間を見限り、全員地獄に行ってしまったと、聞いていたのですけど、嘘だったんですかね?

まぁ、どうでもいいか。


「いいのか?」


「えぇ、暇していましたからね」


そう推定鬼の言葉に返事をして、私は客間に案内します。


「お茶をどうぞ」


私の客間には、このような急なお客様を待たせないためにも、特別な扉を使用しています。地下の部屋を除いた、この家の全ての部屋につながる特別な扉を。


「あぁ、ありがとう」


私の出したお茶に、言葉にありがとうと返事をして、すすり飲み始めました。辺りをその音が支配します。そして静寂が・・・


「1つ、いいかしら?」


その静寂を破ったのは、他でもない私でした。


「なんだ?」


「あなたは鬼なの?」


聞いては行けなかったのか、辺りをおぞましい妖気が漂います。

低級の妖怪なら、確実に消し飛ぶ恐ろしい妖気です。


「あら、ダメなお話だったの?ごめんなさいね」


ビュン、っと拳が飛んでくる。問答無用って事ですね。

しかしまぁ良く見れば、この鬼は体の周りを、変化の妖術で誤魔化していますね。ばれたから殺す、単純ですね。

拳を避ける気は無いです、この程度の拳は効かないから、むしろコレだと私の持つ、厄を良い感じに消し飛ばしてくれそうですね。


ドゥン・・・鋭い打撃音が、木霊する。

だけどもその拳は前述の通り、私の持つ厄を半分程度、消し飛ばすだけに終わりました。


「たったの半分でも、自由になれそうにないですね。はぁ」


鬼は驚いた顔になっています。


「それでは、こちらの番と言う事で・・・」


「なっぁああああああああああああああ」


家が壊れるのは、面倒ですからね。私の体にあたっている鬼の拳を掴み、そのまま庭に投げ飛ばします。

そして間髪いれず、鬼が庭の地面につく前にそのまま・・・叩きこむ


「コレからは喧嘩する相手ぐらい、確認してからにしましょうね」


なんか、イラついてきたので、拳に残った厄を全部載せて、ぶん殴る事にしました。そうすれば、私は森の外に出られるという自由を得られる筈ですからね。


「ちょっ、まっ」


「もう無理、止まりませんよ」


何やら命乞いをしようとしていますけど、私は笑顔全開で絶望的な事をいいます。

まぁ単純に考えて、光速を越える拳を止める方法が、私には分かりませんから、仕方がない事なんですよ。


なんとも言えない鋭い音が辺りに突き刺さり、鬼はその姿を消しました。姿を消したというか、私の手によって、衛星軌道に乗っているんじゃないですかね。下手したら月までいっているかもしれません。まぁ今日は十五夜で、昼間ですから、どうなのかは知りませんけどね・・・

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