第3話

数時間ほどすれば森の中心に到着します、この森の中心地には小山と廃村があります。小山の頂上には社がありますね、廃村には住処を追われた妖怪どうぞくが暮らしています。もともと私もあの廃村で暮らしていました。廃村になる前からと言うのが正しいでしょうね。


「もう少しですね」


廃村になって以降、私はあの場所をいつか帰って来てくれると信じ、守り続けていました。来たのは妖怪どうぞくでしたけどね。


「あの時は本当に人間があの村に帰って来てくれると信じこんでいましたね。そんな事無かったですけど…」


いつしか諦めてこの森の守護に回り始めたのはつい最近の事です。それにそうそうこの場所を離れられませんからね。


座敷童子と言う種族特性のせいでね。とり憑いた者に幸運を運び、離れれば今までの幸運に比例するように不運が、やってくる。これは正しいようで正しくないです。


実際にはとり憑いた場所の厄を身体にため込んで、良い事しか起こらなくなるだけです。離れれば溜まった分の厄が、その場所に停滞します。


つまりとり憑いた期間が長いだけ身体に厄が溜まるわけで、現在私の身体は実に300年以上の厄が溜まっています。離れればこの300年分が一気に解き放たれて、下手すればこの国が終わります。っと神様に言われました。


「たしか黄昏時に天照大御神様と月読命之御神様が二名が土下座しながら、必死になって言ってきましたね。面白かったですね」



―[高天原]―

この場所は神々の住まう場所…の執務室


「くしゅん」


執務室の大机にを前に生類整理しながら、彼女はくしゃみをした。


「大丈夫か、アマテラス様」


彼女をアマテラスと呼び彼女を心配するカラスが一羽、八咫烏やたがらすだ。


「一応……疲れた…もういやじゃ…」


アマテラスは今現在とある事柄に対処していた。異世界召喚や転生の類いだ、おかげでこの世界時空から魂が減ってきている。母からの叱りを受けて、彼女の心は壊れかけである。

無断で魂連れ去った世界は滅ぼしている、交渉の余地など許していない。

すくなくともこの次元時空のアマテラスはそうしているのだった…


―――――


「よっと到着しました」


森の中心へとくると、村が見えます。ここで人間に住処を追い出され、人間との共存を断った者が、暮らしています。


「おはようね、麦」


村の門に立っている門番の麦に私は話しかけました。彼は『妖怪族 : 狒々 の【むぎ】』です。形式的な自己紹介ならコレですね。年齢は私とぴったり100年違いです。


「こっこれは刻茶さんいらっしゃい……すみあせん」


麦にはなぜ私がここに来たのか、分かっているようですね。特別に見逃してあげましょう。


「刻茶さまが来たぞ、門を開けろ」


ギギギギと音を立てながら門が開きました。


「さいきん新人が来ましてね、止めたんですけどね…これは言い訳ですよね、はい…」


なるほど新人のせいでもあると…


「またルールの改変が必要そうですね…はぁ」

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