死を導くコトワリと閃光のようなパクり

轟々と雪が振る。



シュウが力加減を間違えて大魔王の居城に飛んで行ってすぐに巨大な爆発が続き、異様な魔力の高まりを感じた。



慌ててオルテと合流して駆け付けた先は、あの日と同じ光景だった。



力ある悪魔が放つ闇の雪。


異質な黒い雪が降り積もる中、血だらけになりながら勇者と英雄兎の親子が必死に抗う。



あぁ、これはあの日の続きなのだ。

私がこの世界に産まれ落ちたあの雪の日。


あの日の――。




『クスクスクス。何をしているの?さぁ、殺しなさいな。哀れな兎も傲慢な狐も等しく殺せば良い。』



頭の中で誰かが話しかけて来る。


――だ、誰?わ、私はそんな事……。



『ワタシはアナタ。アナタはワタシは。本当はもう気づいているんでしょう?』



あ、ああああ……




アナタワタシこそが死の概念そのもの。死を導く理。破壊神シトリーだって。』



その刹那。

私の中で黒い何かが渦巻く。


雪、血、狐、兎、オルテ、シュウ……。


黒い奔流の中、様々なイメージが沸いては消える。




「ゆ、雪·····、狐、う、兎の親子·····、殺される·····、こ、ころし·····ちゃう·····」


だって……私は、ワタシは――。




【纏めて吹き飛べっ!!極大氷雪魔法マヒャエスト!!!】



大魔王が放つ氷雪魔法が私に向かって放たれる。




――あぁ、もうこれで良いのかもしれない……。

これがあの日の焼き回しなのだとしたら、私はあの二人が死ぬ所なんて見たく――。





「「シトリィぃぃぃぃい!!!」」




力を抜き、大魔王の魔法を受け入れようとした瞬間、地面に倒される。


――え?


動転した私の目の前にはシュウが覆いかぶさっていた。



「ダメージを与えられなくとも!ぬぅん!!」


宙を舞うオルテが、魔法の起点である大魔王の腕に斧を渾身の力で叩き付けた。

暗黒の衣を貫く事は出来なくとも、魔法の向きを強引に変える。



【くっ……!しゃらくさいわっ!!人間共めっ!】


「ぐあっ!!」「ぬぅっ!!」



完全に魔法の向きを変えれなかったのか、鋭く尖った氷の塊がシュウの背中を抉り、まとわりつくオルテが吹き飛ばされた。



【何故そうも足掻くのだ?人間共よ。勇者は我の魔法で動く事が出来ず、貴様らの攻撃は我の暗黒の衣を貫く事は出来ない。どれだけもがこうが貴様らの死は免れぬ!】




あぁ、そうだ。

大魔王の言う通り、逃れられない死を前にして何故こうもこの2人は足掻くのだろう。

そんなことをしたって――。



「ふ、ふふふ。はははっ!大魔王はどいつもこいつも同じ様な事を言うんだな。」



私を庇って傷ついたシュウが笑う。

な、何を笑って……?



「昔、炎の不死鳥を操る大魔王が同じ様な事を言っていたよ。」



よろめきながらも立ち上がるシュウ。

その背中は掠っただけとはいえ、大魔王の極大魔法を受けて鎧が裂け、血を流していた。


「確かに、人は死ぬ。お前らみたいな寿命があるのかないのか分からない大魔王からみたら儚く消える火花みたいなもんなんだろう。」



【左様!我は大魔王。凍れる闇の太陽よ!貴様達の様なか細い火花など物の数ではないわ!!】


大魔王が再び魔力を両手に込め、黒い雪が舞い散る。



「だからこそ、結果が見えてたってもがき抜く。

残りの人生が50年だって5分だって同じ事だっ!

一瞬、だけど閃光のように。まぶしく燃えて生き抜く!それが俺達人間の生き方だっ!」



轟っ!!



シュウの剣から天を焦がすような火柱が立つ。


あれが……人の放つ光……!?



悔いなく死ぬ為に懸命に生きる。

そして生命は循環し、また別の生命を育む。


それが命ある者達の生き方であり、人の生き方……!



『……何か今のセリフ、誰かのセリフのパクリらしいわよ?いつかは言いたかったセリフだって内心小躍りしているんだけど?』


私の頭の中で破壊神が呟く。



なるほど……。

人の想いや意思が受け継がれて行く。それもまた人の生き方……!


『あー。うん。まぁアナタワタシがそれで良いならそれで良いんだけどさ……。』

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