親方!空から女の子が!(希望)

大魔王ゾウマが放つ黒い吹雪が視界を埋め尽くす。



やべぇ·····!!

身体が動かない·····!



ぜったいれいどアイス・エイジ


大魔王ゾウマ専用の魔法だ。

その効果は闇の吹雪による大ダメージに加え、ダメージを与えた相手を1ターンの間行動不能にする。


これを連発されれば何も出来ないまま死ぬしかない程凶悪な魔法である。


ゲームではゾウマの行動はある程度ローテーションで決まっている為、連発される事は無い。


しかし、残念ながらここはリアルである。

一向に止む気配がない黒い吹雪が俺の体力を奪い続けて行く。



ちくしょう!やっぱりリアル何てクソゲーだな!


あ、ダメだ·····。

意識が·····もう·····。


意識が薄れ、仰向けに倒れる俺。


戦意何か一欠片も残っておらず、ただただ何も出来ないまま意識を手放そうとしていた。




不意に、薄れ行く視界の隅で空中から降りてくる光り輝く何かを捉えた。



·····あ、あれは、なんだ?

――天使·····?



まるで大きな羽根の様に、羽衣の様な何かをはためかせ、薄らと光を放つ人型。


遠目からでも分かる均整のとれたプロポーションを薄い布の様な物で包んでいる。


ゆっくりと空から降りてくるその様は否応にもそれが神秘的な存在だと俺に認識させ――。




·····いや、ゆっくりじゃないな。

結構早い。


降りてるんじゃなくて·····落ちてる·····?


――げっ!?



それが何かに気付いた時、朦朧としていた意識が一気に覚醒した。



翼のような羽衣?

ありゃあ薄汚れたマントだ。


均整のとれたプロポーションを薄い布で包む?

どんなオブラートに包めば半裸のマッチョがそう見えるんだ?



そう。あれはオルテガスだ。




「喰らえぃ!極大雷魔法キガボルト!!」




·····うん。薄らと光ってたのは魔法の光だな。



【ぐぉおっ!?ま、また面妖な奴が空から·····!】


聖なる雷を受け、堪らず魔法を止めるゾウマ。


·····またって何だよ。

俺は半裸の蛮族オルテガスより面妖じゃあないぞ。



しめた!闇の吹雪が止んだ!

今のうちに回復を·····!



【させるか!カァアアアアアッ!】


俺の回復を妨げようと氷のブレスを吹き付けるゾウマ。


ぐっ!この氷マニアめっ!


大魔王ゾウマは氷雪系の魔法や特技がメインだが、リアルになるとこんなにもウザイのか·····!


ゾウマが放つ氷の魔法や特技が周りの温度を一気に下げ、俺の体力を奪い、行動を制限して行く。




「ぬぅ!!これしきの吹雪で私を止められると思うなっ!」


轟々と吹きすさぶ氷の嵐の中、オルテガスが舞う。


優雅とすら言える3次元的な動きでオルテガスはゾウマの氷の息を避け、確実に斧を当てて行く。


しかし――。



【鋭く華麗な斧舞だ。だが、軽いっ!!】


ゾウマは腕を振るいオルテガスごと斧の一撃を吹き飛ばす。


【いかな歴戦の戦士たるそなたでも、我の暗黒の衣を断ち切るには少々力不足のようだなっ!】



そうだ。オルテガスの力単体では暗黒の衣を吹き飛ばせない。


くそっ!動け!動けよ!

極大放出魔法か大地の祝福を使えば·····!!


どれだけ身体を動かそうとしてもぜったいれいどアイス・エイジと氷の息をまともに受けた身体はまとも動かない。


せめて回復が出来れば·····。

そう言えばシトリーはどこに――?




辺りを見渡すと――いた。


少し離れた所でシトリーは呆然と無防備に立っている。いや、あれは·····怯えている?




「ゆ、雪·····、狐、う、兎の親子·····、殺される·····、こ、ころし·····ちゃう·····」



目を見開き、何事かを呟きながら震えるシトリー。



くそっ!あんな所に突っ立ってちゃいい的だっ!


せめてシトリーを逃がそうと這って進もうとしたその時。



【纏めて吹き飛べっ!!極大氷魔法マヒャエスト!!!】






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