大魔王

「お、おおぉおおおおおぉおおお!!!」


海上と言うより空中を走っていた俺はシトリーの発言で力加減を誤り、俺は大魔王の居城目掛けて吹っ飛んでいた。



や、やベぇ!これどうしたら良いんだ!?

いくらレベルカンストでもこんな勢いで大魔王の城に叩きつけられれば死んでもおかしくねぇぞ!!



この時の俺は間違いなくテンパっていた。

崖から蹴落とされ、必死に海を走り、空を吹っ飛べばそりゃあ誰だってテンパる。



「そ、そうだ!逆噴射!」


咄嗟に手を前に――大魔王の城に向けてありったけの魔力を込めて魔法を唱える。



極大放出魔法テラマダン!!!」


放出された俺の全魔力が目の前にそびえ立つ大魔王の居城ごと視界を真っ白に染める。


よし!少し勢いが弱まった!



極大放出魔法テラマダン極大放出魔法テラマダン極大放出魔法テラマダン極大放出魔法テラマダン!!もう1つおまけだ!!極大放出魔法テラマダン!!!」





ズザザザザっ!!!


土埃を上げながら更地に何とか不時着をする。



「·····はぁはぁはぁはぁ!ちくしょう!シトリーのやつめ!とんでもない事をしやがる!」




··········うん?更地?


何だか嫌な事実が頭をよぎる。


周りを見渡すとさっきまでそびえ立っていた大魔王の居城の3分の2は無惨にも更地になり、残り3分の1は単なる瓦礫の山となっていた。


·····や、やべぇ!!やっちまった!!

流石にこれはダメだろう·····。





【ふっふっふっ。貴様も大概だと思うがな。黒金の勇者よ。】



!?


この声は!?



ドガァン!!


瓦礫の山が吹き飛び、周りの空気が一変する。

瘴気とでも言えば良いのだろうか?

まとわりつく様な黒い異質な空気だ。



【ふははははは!!まさか空を飛んで攻め入り、城ごと吹き飛ばすとはな!ここまで痛烈な奇襲を受けたのは初めてだ!!】



瓦礫の下から出て来たのは一体の人型の悪魔。


青白い肌を漆黒のローブで身を包み、第3の目を持つ特徴的な帽子を被った異形の魔法使い。


その右手には大きな錫杖の様な杖を持っている。


そう。こいつこそ魔王の上の大魔王と言う肩書きが付いたデモクエシリーズ初のラスボス。



大魔王ゾウマである。



自分の家を吹き飛ばされたのにも関わらず、この鷹揚な発言。流石、大魔王様である。


·····しかし、妙だな。

ゲームではこんな杖を持っていなかったはずだ。


そして何より、さっきあれだけ何発も極大放出魔法テラマダンを放ったにも関わらず、どう見てもダメージを受けている様に見えない。


まるで――。



【くっくっく。随分不思議そうだな?まるで堕天使エルギオネル・クロウの様に傷1つない我に。】



!!?

こ、こいつ·····!



【そうだな。本来であれば汝の放つ極大魔法は正に必殺。魔王と言えど無傷では済まないだろう。かの堕天使はこの世界の理を狂わせて耐え切った様だが、我はどうだろうなぁ?】



心底愉快そうに俺を試すような発言をする大魔王。



世界の理を狂わせる?

まるでチーターだな。

まさかコイツもあの見慣れない杖でチートを·····。


いや、待てよ?

極大魔法·····、大魔王·····、杖·····、耐える·····。

どこかで同じ様なシーンを見た事が·····。



あっ!ダイ大!!!


デーモンクエスト外伝漫画、ダイの大冒険アドベンチャーだ!!




「――ふっ、ふふふ。そうだよな。龍神王はこの世界を改変し、あらゆる因子や歴史をひとつにした。お前がその杖を持っていても不思議じゃあない」



【ほう?】


ニヤリと大魔王がその口元を歪める。



極大放出魔法テラマダンは回避不能の全体魔法。それをくらって生き残る方法は2つに1つ!」


魔力を込めた右手を大魔王に向ける。

狙いは真っ直ぐ大魔王から外さない。



「反射魔法で弾くか、何かしらの手段で耐え切るかだ!!極大放出魔法テラマダン!!」



【杖よ!!】


大魔王の声と共に手にした錫杖が奴の魔力を吸って不気味に光だし、荘厳な音を奏でる。


音の波紋は不可視の壁となり、俺の極大放出魔法テラマダンの白い爆発を受け流す。



「その杖は降魔の錫杖だな!?そいつは装備者の魔力を無尽蔵に吸って力に変える!そしてその音色は神々の生み出した超生物、竜騎士ドラゴンナイトの最強魔法すら防ぐ無敵の障壁となる!」


【ふはははは!詳しいな!勇者よ!】


あぁ!そうさ!

そして当然、その杖の攻略法も知っている。



何せあの漫画はリアルタイムで連載を読んでいたし、何なら単行本全37巻、文庫版22巻もしっかり持っている。あ、今度またアニメするらしいッスね!

って、異世界じゃあ観れねぇよ!!


さぁ大魔王!俺の怒りを受けてみろ!!



「連撃だぁっ!極大放出魔法テラマダン!!」



【ぉぉおおおおおおおっ!!】




パキっバキッ!パキィィイン!!



降魔の錫杖にヒビが入り、錫杖の両脇に着いていた輪の幾つかが弾け飛ぶ。



「障壁は無敵でも、錫杖自身はそうじゃあない!お前の莫大な魔力を吸い続ける事は、いかに伝説の杖でも厳しいようだなっ!」


【ふははははは!!やりおるやりおる!流石は黒金の勇者よ!さぁ降魔の錫杖よ!壊れきる前にもうひと働きせよ。ぬぅん!!】



大魔王の掛け声と共に錫杖がさらに黒く輝く。


何をするつもりだ·····!?



ぜったいれいどアイス・エイジ



込められた莫大な魔力に耐えきれず、降魔の錫杖が砕け散る。しかして放たれた大魔王の魔法は正に極大。全てを凍らせる闇の吹雪が辺りを染める。



せ、専用魔法!!?

やべぇ·····!防御が間に合わ――。

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