2人の聖戦士
「急げ!急げ!もう始まってるぞ!」
決戦当日。
なりふり構わずお楽しみダンジョンを疾走する。
くそ。このダンジョンに入ってから走ってばっかだ!
「完全にお父さんのせいだからね?」
「そうですね。魔神を倒してからすぐに引かき返せば間に合ったでしょうに·····。」
ミレーヌとフィルからの切れ味の鋭い正論が俺の心にささる。
ちゃうねん。
テモクエシリーズの伝統的なダンジョンからの
それが何故かブラックドレアムを倒しても不思議な力でかき消されてたんだ!
これは俺じゃなく、この世界が悪いと言えよう!
『·····いや、そうじゃなくて無駄にブラックドレアム倒してから熟練度上げしてたからでしょ。自業自得じゃない。外では皆頑張ってんのに·····。つぅか、そもそもブラックドレアム完全に倒しちゃったら、このダンジョン来た意味ってほぼ無くない?』
突如として頭の中に呆れ返った女の声が響く。
ブラックドレアムを倒して、その隠しボスクリア特典でデッドムーアを倒してもらおうとしただけだ!
本当に倒し切ってしまったら駄目とか知らなかったんだ!
ちなみにデモクエ6では本当にブラックドレアムがデッドムーアを倒してくれる。
隠しボスVSラスボスの世にも珍しい蹂躙劇が見れるので、未見の人はオススメだ。
それに熟練度上げには意味が·····ってこの声は!
「おぉ!ルビシアか!助けてくれ!ってか外はどうなってる!?」
「·····え。こ、この声がルビシア様?」
「ま、まさか。って、シュウ様!?ルビシア様を呼び捨てに!?」
取り敢えず2人のリアクションは無視する。
後で説明するから!
『初戦は割とこっち側が優勢よ。ただ、魔王達が直接動き出してるから油断は出来ないわ。』
そうか。まぁ所詮魔王と言っても前半のボス格のムードエルとか半魚人のグラエルとかだろ?
アイツらが負けるとは思えんがな。
「まぁいい。取り敢えずここから脱出させてくれ!」
『あ、それ無理。まだブラックドレアムの封印の力が生きてるらしくてさ。取り敢えず私のいる2階層のデッドゴッドまで来てくれたら何とか·····。』
駄女神ぇ·····。
マジで役に立たねぇな。
『は、はぁ!?わ、私だってちゃんと働いたもん!封印されながらも応援を呼んどいたんだから!』
·····応援?
◇◇◇◇◇
「くらえっ!
勇者たるロンフーが勇者専用魔法を唱えた瞬間、空から極大の雷が雨の如く降り注ぐ。
何百もの魔物が黒焦げになり、その余波で辺りを更地にする。
【やはり強いな!血湧き肉躍るとはこの事か!!】
ロンフーの圧倒的ステータスから繰り出されるあらゆるスキルや魔法攻撃を寸前の所でいなし、心底楽しそうに魔王デューエルが嗤う。
【君達は強い。まともに戦えば我々は間違いなく打倒されるだろう。だが、我々の目的は君達と戦うことではない。君達の様な圧倒的強者を生み出す、あの危険な神殿だ·····。】
自身を一撃で打倒し得る
「ちっ!纏めて吹き飛べぇい!!」
自分よりも確実に格下なのに余裕を崩さないデューエルに業を煮やしたロンフーが再度魔法を唱える。
唸りを上げて雷が不敵な顔で佇む魔王デューエルに向かう。
【素晴らしい力だ。だが――。】
パキィン。
余りにも呆気ない音ともにロンフーの雷魔法がデューエルの目の前に貼られた透明なバリアに弾かれる。
【覚えておくといい。これが
反射された極大の雷がロンフー達守備隊を包み込む。
守備隊のメンバーは強い。
いかな勇者の魔法とは言え、たった一撃でやられることはない。
しかし――。
ロンフーの雷をまともに受けた守護隊メンバー達は一瞬怯んでしまう。
そして、魔物の群れを攻め続けていた羊の群れの勢いが削がれてしまった。
【勝機!!皆の者!!脇目を振らずに突き進め!】
守護隊が硬直した刹那。
機を見逃させずに魔物の群れが神殿方向に一斉になだれ込む。
硬直から脱した守備隊がフォローにはいるも、魔物達の勢いを殺しきれず、数百匹の魔物が神殿方向に向かってしまう。
「クソッタレ!!やらせる――」
ザシュッっ!!
ロンフーが守備ラインを突破した魔物の群れを止めようとした瞬間、空から降ってきた巨大な槍がロンフーを突き刺す。
【グハハハハハハっ!行かせるか!お前達はワシらが命に変えても止めさせてもらう!】
まるで水中を泳ぐ様に飛ぶ巨大な半魚人の魔物が何本もの槍を携えて浮かんでいた。
【ワシは魔王グラエル。人間の強者達よ。神殿を守りたければワシらを倒してからにしてもらおう!】
「ま、魔王が2体!?
ち、ちくしょう·····。す、すまねぇ。旦那·····。」
槍に貫かれた肩を押さえながら、片膝をついてロンフーが独り言ちる。
「嘆くな。今この時、我等が汝たちの剣となり盾となろう。」
「大いなる大地の息吹よ!傷ついた戦士に癒しと祝福を!!『 大地の祝福』!!」
ロンフーの目の前に赤い髪を銀のバレッタで纏め、紅に染めた鎧を付けた真紅の戦姫と、陽の光の様な金髪で癒しの光を振り撒く黒金の鎧を着た祝福の聖騎士が立っていた。
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