RTA
薄暗いダンジョンを圧倒的なステータスに任せて俺達3人は疾走する。
強化された視力が細かな道の凹凸まで捉え、狭い曲がり角をカンストした筋力で強引にねじ伏せる。
体力値もMAXだからだろう。
数時間は休憩もせず走っている。
しかし、数時間も走ってまだ階段にたどり着けないとかどんだけ広いんだよ·····。
ダンジョンの構造自体はゲームと変わっていないので、迷う事がないのが救いだな·····。
「うー。まだつかないの!?」
「もう少しだ。基本的にこのダンジョンは一本道だからな。迷う事はない。」
走り通しで弱音を吐き出したミレーヌをなだめつつ、俺は視界の隅で影を捉えた。
「待て!ミレーヌ!フィル!」
2人に待ったを掛け、ズザザっと土埃を撒き散らしながら急停止する。
「宝箱だ!」
「またぁ!?」
「シュウ様?急いでいるんですよね?あまりグズグズしていると魔物が襲って来ます·····。」
む。中身は種か·····。
まぁ何かに使えるし貰っとくか。
宝箱を回収している俺の横に貼りついて周りを慎重に警戒する2人。
うむ。若いって良いなぁ。
「歳は関係なくないですか?と言うより、なんでシュウ様はそんなに余裕なんでしょうか?」
少しムッとした様な顔でフィルが絡んでくる。
「あるぞ。歳をとると面倒臭い事はしたくなくなるんだ。」
思わせぶりに右手の指輪を撫でる。
お楽しみダンジョン地下一階層半ば。
「何だか静かだね·····。」
「辺り一面に魔物の気配がします。気を引き締めましょう。」
「おぉ!豪傑の腕輪だと!?」
確かデモクエ6ではスマホ版にしか出ないアイテムだったはず!いいぞ!コイツがあれば今のカンストされた力に更に補正がつく!
お楽しみダンジョン地下1階層後半。
「·························」
「·························」
「よし!山彦の指輪だ!」
お楽しみダンジョンの名前に偽りなしだな!
これでかなりの戦力強化になるぞ!
早速バグ技で増やそう!
お楽しみダンジョン2階への階段前。
「よし。ようやく階段を見つけたぞ!」
「「どういう事!?」」
うん。まぁそうなるよね。
種は簡単。
神歌の指輪の効果だ。
デモクエ6で職業レベルを一定に上げてから法の神殿の神官に声を掛けると貰える指輪である。
ダンジョンに入る前にツンデレ大神官に貰った物だ。
この指輪の効果はエンカウント率をゼロにする。
つまり、これを身に付けている間は一切魔物に襲われなくなる。
効果は絶大だが、手に入るのが無双出来る様になったクリア後なので、ほぼ意味のないアイテムだ。
既にレベルもステータスもカンスト、熟練度も必要数を超えている為、これ以上の戦闘は不要である。
「オッサンは効率的にサボりたくなるもんなんだ。」
「なにそれ!ズルい!」
思いっきり空回りしていた事を知ったミレーヌが不満気な顔をしながらむくれる。
「先に言っておいて欲しいです。」
実は緊張していたのであろうフィルも珍しくご立腹だ。
はて?フィルには考えている事が伝わるのではなかったか?
「別に何でもは分かりませんよ!今みたいに明確に頭の中で言語にしてくれないと読めませんし、それもせいぜい単語と気持ちを拾える程度です。」
うーむ。ちょっとした悪戯心で黙っていただけなのだが、何だか申し訳ない事をしたな。
「今晩は一緒に寝てよね!お父さん!」
「あぁ。そうですね。そうしましょう。その指輪があれば魔物は気にしなくて良いようですし?装備は全部外してゆっくり3人で寝ましょう。」
待て!装備を外す!?
それはどこまで外す気だ!
このダンジョンは地下に行けば行くほど広くなっており、地下1階攻略を終えたタイミングで休みをとる事になった。
このペースならあと2、3日もあれば攻略出来そうだ。
まぁ早歩きで散歩しながら宝探ししているだけだしな。
テントの中では既にミレーヌとフィルが寝息を立てている。
食事の時は一緒に寝ようと言っていたのだが、疲れていたのだろう。横になったらそのまま2人は寝てしまった。
うーむ。良かった。フィルは勿論だが、何だかんだで大人の姿を知っているミレーヌに対しても意識をしてしまう所があるからなぁ。やっぱり添い寝するのも緊張してしまう。
それに、次の階層に行く前にしっかりと休みたかったのだ。
次の階層にあるこのダンジョンの中継地点。
真なる夢の村、デッドゴッド。
多分、そこでこの世界の真実の一端が分かるはずだ。
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