ゲームはセーブをするまで止めれない

デッドゴッド村。


お楽しみダンジョンの中にある村で、攻略の拠点として使える村だ。


この村に最初に訪れた際に見える風景は、デモクエ6の主人公の生まれた村だ。


しかし、主人公の自宅には見慣れない女性がおり、話しかけると、いきなり【真実が知りたい?】と問いかけられる。


そして、「はい」を選ぶと村の様子は一変する。



この村は、訪れた者が一番見たい夢を見せてくれる場所であり、真実の姿は幽霊達が彷徨う廃墟の国だった。


かつて、戦争に明け暮れた国があった。

力を求めるあまり悪しき戦神を召喚したその国は、呼び出した神の怒りに触れ滅ぼされてしまう。


国を滅ぼしてもその神の怒りは収まらず暴れ続け、世界が滅びる寸前、その女性が自らを犠牲に封印したのだそうだ。



その女性こそ、精霊神ルビシア。



神の死んだ世界デッドゴッドに取り残されたただ1柱の女神だ。





地下2階層への階段。

ゲームではザッザッと効果音を立てて画面がすぐに切り替わるが、現実では延々と続く薄暗い階段だ。



先日、フィルにはああ言ったが、やはり何処かで実は全て夢なんじゃないかって想いがある。


この世界がただの幻想で、俺は単なる夢遊病者なんじゃないのか。



その確証のなさが彼女達への今ひとつ煮え切らない態度になっていたとも言えるだろう。



·····いや、それは俺がヘタレてただけだな。

この歳まで女性との接点が無さ過ぎたからな。

そりゃあビビるわ。




「シュウ様。真顔で何をヘタレた事を考えているのですか?また胸を揉みます?」


「またって何!?」



――と、兎も角。


この先には高確率でこの世界の管理者たる精霊神ルビシアがいる可能性が高い。


先日戦った魔王ジャミエルの発言やその立ち位置、能力から考えても俺がこの世界に来た事情を知っていそうな立場の神だ。


階段の終わりと共に、辺りが明るくなって来る。


そして、階段を降りきった先には――。




俺のマンションの部屋があった。




狭い廊下の左右にトイレと風呂の扉があり、廊下の1番奥にワンルームに続く扉がある。


ふと後ろを見ると、ミレーヌとフィルがいなくなっており、さっきまで降りて来た階段が消えて延々と無限に廊下が続いていた。



あ、あれ?ミレーヌ?フィル?どこ行った?

こ、これが俺の望んだ夢·····なのか?



薄い扉からはゲームのBGMが聞こえる。

あの音は·····デモクエ11?


恐る恐る扉を開けると、そこは間違いなく俺の部屋だった。


ベットとその横の本棚にはデモクエの各シリーズの漫画や小説やらドラマCD、DVD、フィギュアが整頓されて並べられている。


机の上の鉛筆立てに置いてあるバトル鉛筆はフリマアプリで見つけて大量に衝動買いしたっけ。


だが、見慣れた部屋にたった1つ。

明確な異物が存在した。



各種ゲーム機を並べた大画面テレビの前の座卓に座って、今まさにデモクエ11をプレイしているピンクブロンドの人物·····。


オーバーサイズのロンTに身を包み、胡座をかいてゲームに熱中している。


しかし、その異様に整った横顔が彼女を人以外の何かだと明確に伝えていた。



「あら?お帰りなさい。ちょっと今いい所だからセーブするまで待っててね。」



精霊神ルビシア。


恐らく、この世界へ俺を引き込んだであろう、ゲームマスターがそこにいた。


·····何やってんの!?

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