黒金の勇者
最後の敵はいつも時間
どこまでも深く深く続く、奈落の底。
古の邪悪な魔人が封じられた禁足地。
洞窟の中には魔人より発せられた瘴気が充たされ、いつしか強大な魔物に形を変え、幾千幾万と洞窟内にひしめき合っていた。
膨大な時間を掛け、蠱毒の毒は熟成され、洞窟に巣食う魔物の平均レベルは遂には70オーバー。
この世界でも有数の魔境。
その洞窟の名前は、お楽しみダンジョン。
「狩れ狩れ狩れ!!」
「そこ!タイミングを乱すな!常に一定のタイミングで魔法を放て!!」
「魔物の数が減ってきたぞ!口笛班!追加を頼む!」
「いいか!油断はするな!少しでも傷を負ったら回復するんだ!油断するとそこから食い破られるぞ!」
「熟練度が上がり切った者から神殿で転職を!」
ダンジョンに突入して2日目。
多少の試行錯誤の結果、レベリングは作業になる程度には安定して来た。
ダンジョン内の広場で陣を敷き、口笛を吹いて魔物を呼び出し続ける。
数が数の為、魔物達が通路にひしめき合い、身動きが取れなくなる。
哀れにも通路で渋滞している魔物達を横一列に並んだ魔法使い達が一斉に魔法で屠る。
魔法の弾幕を潜り抜けても、その先には高レベルアタッカーが待ち構えている。
彼等はボロボロに焼け焦げた半死半生の魔物の首を、まるで草むしりの様に刈り取って行く。
うむ。
これは間違いなく攻略ではないな。
蹂躙とか侵略とかそう言うインベーダー的な何かだ。
「順調ですね。旦那。」
「あぁ。しかし、問題もある。」
――そうなのだ。
レベリングは確かに好調なのだが·····。
「お父さん!ただいま!」
「戻りましたわ。シュウ様」
辺りを探索しに行っていたミレーヌとフィルが戻って来た。
2人の表情はすぐれない。
これは·····やはり思った通り、か?
「はい。シュウ様の予想通り、ここは広大過ぎますね。恐らく、この一階層だけでも法の神殿の敷地面積を軽く超えております。」
·····最悪だ。
RPGあるあるだが、設定では隣街まで数日かかるとなっていても、実際ゲームでは数分も進めば辿り着くようになっている。
当然だ。
リアルに数日掛けないと辿り着かないとかクソゲーどころの騒ぎではない。
デモクエ3等では、実際の地球の世界地図と似た世界感だが、空を飛べば数分で世界一周出来る。
では、この世界ではどうだ?
デモクエの設定のままリアルになっているのだ。
歩いて数日掛かる隣街は本当に数日掛かるし、世界有数の巨大ダンジョンもその設定のまま巨大になってしまっている。
「このダンジョンが何層あるかは知りませんが、今のペースでは間違いなく間に合わないかと·····。」
だろうな。
ここに来て2日。
まだ1層目すら攻略出来ていないのだ。
確かこのダンジョンは全4層。
残り5日で攻略何て出来る訳がない。
幸い面倒臭い謎解きギミックはない多少長いだけの一本道ダンジョンだが、強力な魔物が徘徊し、強くないと先に進めない漢仕様なダンジョンだ。
仕方ない。
ボス戦の安全マージンは少し下がるがやるしかない。
「勿論、私とミレーヌもお供しますわ。」
「何だか分からないけど、また無茶をするの?
なら、私も行く!」
·····分かってるよ。
まぁ2人ともレベル99でステカンストの猛者だ。
来て貰えるなら助かる。
ロンフーに関しては本隊の指揮官みたいな立ち位置になっているから残留だな。
レベルだけなら99になっている奴は何名かいるので連れて行きたいが、種でドーピングしていないからステータスが足りん。
やはり俺達3人で行くしかないか。
「ロンフー。このままでは間に合わん。俺達3人は大魔王軍襲来の期限まで別行動をとる。すまんが、レベリングは任せたぞ。」
「旦那、それはつまり·····!」
「俺達3人でこのダンジョンを走って踏破する。」
さぁデスマーチの始まりだ!
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