先へ

そして3日後。

Xデーまで残り1週間となったこの日、遂に俺は計18種の職業を極めた。




「本当に行くのですか。シュウ殿。」


神妙な面持ちで新たな大神官となった元神官長のツンデレオッサンの前に立つ。

祭壇の周りの18個の燭台は、俺の極めた職業と呼応して全て灯っている。


「ええ。この先にいる戦神に用があるのです。」



そう。今回のダンジョンアタックの目的は、隠しダンジョン踏破と裏ボス撃破特典が目当てである。


ラスボスを倒す為に先に裏ボスを倒すと言う事態に疑問を覚えるが、全て時間がないのが悪い。


これが終わったら何かしらの移動手段が欲しいものである。



後ろに目を向けると、気合いの入った顔をしたミレーヌとフィル、ロンフーや神官達がズラリと並ぶ。


全員複数の職を極めた最低レベル60オーバーの猛者達である。


「壮観、ですな。ここまでの戦力は近隣でも名高いトロボーン王国にもおりますい。一騎当千の猛者と言えるでしょう。」


あ、その国10年経てば滅びますよ?

トロボーン王国はデモクエ8の主人公が住んでた国だ。恐らく彼は今8歳くらいだろう。


「ですが、一騎当千ではまだ足りません。このダンジョンで万夫不当の領域まで高めて参ります。」



うむ。と神妙な顔で頷く神官長改めて、大神官のツンデレオヤジ。


「シュウ殿。貴方はなんの見返りも求めず、この地を覆った闇を晴らし、さらに迫り来る災禍を防ごうとしてくれている。貴方こそ真なる英雄だ。」


何やら愁傷な事を言うとそっと何かを手渡してくる。何だ?何か変なものを食べたのか?



「良ければこちらをお納めくだされ。我々からのせめてもの気持ちです。この神殿に代々伝わる指輪ですが、どこかで売って路銀の足しにでも·····」


「それを売るなんてとんでもない!」


『神歌の指輪』!効果は凄いのに入手出来るタイミングが遅すぎてほぼ意味なしアイテムと名高い『神歌の指輪』じゃないか!


そうか。デモクエ6では18個の職業を極めたら神官長から貰えるんだった!


「ま、まあ喜んで頂けたなら何よりです。」



コホンと咳払いをして、今度はフィルを見るツンデレオヤジ。


「フィル様。本当にシュウ殿に着いて行かれるのですか?この先には絶望の闇しかありませんぞ?」


「その絶望の闇とやらに用があるのです。」


「用?」


「ええ。何やら気に食わない顔をしているので、1発ぶん殴ってやろうかと。」


「――ふ、ふはははははははは!何を言われても耐える事しか出来なかった小娘がそんな事を言い出すとは!成長されましたな、フィル様!」


豪快に笑い出すツンデレオヤジ。

ツンデレなのがバレたからなのか、最近フィルへのデレを隠さなくなってきている気がする。


「ええ。育ての親たる師匠にも化け物扱いされた女ですもの。これくらいが丁度良いでしょう?何なら生みの親も殴り飛ばそうかしら?」


「――ならばこれをお持ちなさい。まだ赤ん坊だった貴女が捨てられていた場所に一緒に落ちていた杖だとの事です。前任の大神官より私が預かっておりました。――いつか、貴女が自身の出生に興味を持った時に渡して欲しいと·····」


「!?·····そ、そんな事を師匠が·····。で、でも、心の声は――。」


狼狽するフィルにツンデレオヤジ改め、デレデレオヤジが優しく語りかける。


「フィル様。人の心とは多面的な物。心の声だけが全てとは限りません。·····貴女は、間違いなく愛されておりましたよ。」


「し、師匠――。」


杖を抱きしめて静かに泣き崩れるフィル。




·····何やら確執があった育ての親との誤解が解けたようだが、デレオヤジとフィルのやり取りが全く頭に入らない。


それ程までに俺は杖に目を奪われていた。



――ド、ドラゴンの杖·····だと!?



間違いない·····!

デモクエ5で初めて出て来た同作最強の杖。


世界の管理者たる龍神王の力を封じたバベルの塔に安置されていたはずだ!


それが何でこんな所に!?


他のシリーズでも出てくる事もあるが、基本的には店売りはしてない伝説の武器だぞ!?



ドラゴンの杖·····、竜神王·····、天空の城·····。


·····フィルは天空人?


いやいや、待て待て。

デモクエ5と7は完全に別シリーズだ。

それになんの確証もない。単なる珍しい杖があったと言うだけだ。


·····まぁこの件が片付いたらフィルの出生を一緒に探っても良いかもしれないな。





「――さて、遥か昔からの規則でしてな。この扉の先に進まれるのならば、ステータスを開示して頂く。」


まぁ理由の大部分が私達の興味ですがね、とニヤリと笑うツンデレ大神官。


うむ。苦しゅうない。

何気に人にステータスを見せるのは人生初である。

ゲームでも動画公開とかもしてなかったしな。

一緒にゲームをする友達?

RPGって1人でするもんじゃないの?



名前:シュウ

レベル:99

肩書:黒金の勇者

トータル経験値:8,890,958

次レベルまでの経験値:0


職業:勇者

熟練度:10


最大HP:999

最大MP:999

攻撃力:999

守備力:999

攻撃魔力:999

回復魔力:999

力:999

身の守り:999

素早さ:999

器用さ:999

魅力:999


極めた職業:戦士、武道家、僧侶、羊飼い、踊り子、盗賊、魔法使い、遊び人、村人、魔物使い、魔法剣士、バトルマスター、パラディン、ゴッドハンド、賢者、大魔道士、スーパースター、勇者



さぁひと狩りいこうか!

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