ステータス考察と負けイベント考察

「ミレーヌ。取り敢えず真ん中のロンフー以外の2人を頼む。足止め程度でも構わないし、倒せるなら倒してしまって構わん。」


「う、うん。頑張ってみる·····。」



ニヤニヤとやらしい笑みを浮かべたロンフーの取り巻き2人がこちらに歩いてくる。


どうやらロンフーは様子見らしい。

少し離れた所で腕を組んでこちらを観察している。


粗野な見た目の割にクレバーな奴だ。



くっくっくっ。この戦いはある意味俺後待ち望んでいた戦いかもしれん。


ゲームではコイツとの戦闘はイベント戦闘であり、所謂負けイベントと言うやつだった。


デモクエでもそれ自体はよくあるのだが、大抵2戦目や3戦目でリベンジ出来る様になっているのだが、唯一コイツにだけは勝ち逃げされてしまう。


腹が立ってレベルを99まで上げきって倒しはしたが、悲しいかなストーリーの展開には戦闘結果は反映されず、負けたものとして処理されてしまうのだ。


ちなみに倒すのに何百ターンもかかる。

だってアイツ、負けイベントのボス仕様だからHPが3万でしかも毎ターン自動回復とかの裏ボスも真っ青なスペックしてんだもん!


だが、ここは現実。

ストーリーの流れと言う最大級の恩寵がなくなった今、俺はロンフーにレベル99の恐ろしさを見せつけねばならぬ!


リベンジできずに涙をのんだデモクエ廃人達のためにも!!(使命感)




「おいおい。こんなガキが相手かよ?」

「勘弁してくれよ。あぁ。そうだ。何なら1発先に殴らせてやるよ。ほら。遠慮すんな。」



うん。舐めまくってんな。


身長180前後のマッチョな大男2人。


まぁ普通に考えれば身長140cmで小学6年生くらいのミレーヌに勝てる道理はない。


しかし、違う。

違うのだ。


この世界はステータスやレベルがある、ある意味理不尽な程にデジタルな世界だ。


例えば職業によっても多少前後するが、レベル1の場合、ステータス上の力の項目は大体10前後。


地球の一般男性のベンチプレスの平均が40キロ程度なので、これをイコールにした場合どうなるか?



具体的に行こう。

試算されたこの2人のレベルは15前後、ステータスでの力は50くらいらしい。


つまり、ベンチプレスなら200キロを持ち上げられる筋力がある。これはプロの格闘家と同レベルであり、おおよそ見た目通りの筋力だ。



そしてミレーヌだが、レベルは31の僧侶だったが、現在無職になっている。


だが、それは何も悪い事だけではない。

現在のミレーヌは、僧侶職の力に対するマイナス補正が解除された状態なのだ。



ステータス上の力は100オーバー。

ベンチプレスなら脅威の400キロ超えである。



ズドンっ!ズドンっ!と、まるで大砲の様な大きな音が2回響き渡る。


ミレーヌが取り巻き2人を吹っ飛ばしたみたいだ。

広場の端の壁まで吹っ飛んでピクピクしている。


潰れたカエルみたいだ·····。



「お、お父さん·····。や、やり過ぎたかな?」


うん。まぁしょーがない。

死んでないみたいだし、後で回復してやれば良い。



「ふん。馬鹿共が舐めやがって。相手の力量も読めねぇのか!」


悪態を付きながら俺の方に歩いてくるロンフー。


「動きを見ててすぐ分かったよ。嬢ちゃんは元より、アンタも尋常な戦士じゃねぇ。あの馬鹿2人があんな舐めた態度をするとは思ってもみなかったぜ。」


「ならこんな茶番は終わりにしないか?俺達にも目的があるんだ。」


「はっ。ここは荒くれ者の掃き溜めだぜ?それこそまさかだ。」


ロンフーが拳を作り、駆け出して来る。


「舐められちゃあお終いなんだよ!」



早い!


ロンフーのレベルはおおよそ35前後。

ステータスの力はミレーヌを超える120。


前に腕試しをした初期のステラを超えるレベルとステータスだ。


だが、しかし。



ロンフーの右手から繰り出される拳を右手で受け止め、そのまま握り潰す。


バキバキとロンフーの拳から骨が砕ける。


「ぐがああああああああああっ!?」



俺のレベルは既に99。

ステータスの種によるドーピングなしで力は400近くある。ベンチプレスの例ならば1.6トンを持ち上げられる化け物だ。



「は、離せぇえええ!!」


やぶれかぶれにロンフーが俺の脚を蹴りつけて来たが·····。


ゴギンっ。


ロンフーの足から嫌な音が聞こえた。


「がぁあああああああっ!ち、ちくしょう。てめぇの身体は何で出来てんだよ·····!?」


そりゃあこのパワーを支える為に身体強度も爆上げされているからな。


生物としての格が違う。

鉄の塊を思いっきり蹴りつけた様なもんである。



「さて。腕も足も潰れてしまったし、もうこの辺で良いんじゃないか?勝負はついただろ?」


腕も足も明らかに折れている。

もうまともに立つことすら出来ないだろう。


「ハッ!舐めんなっ!!」


うそぉ!?


ロンフーは折れた足で元気にバックステップをし、潰した右腕で腰に着けた魔法の袋から馬鹿でかいトゲのついた鉄球を2つ取り出した。


鉄球は太くて長い鎖で繋がっており、ブンブンと振り回している。



馬鹿な!?折れているはずだぞ!

確かにゲームでのロンフーは異様なタフさに加えて1ターン毎に自動回復をすると言う負けイベント仕様の能力を持っていた。


しかし、ここは現実。

俺と同様にアイツもスキルや魔法を吸い取られているのは間違いない。


薬草何かの道具を使った回復以外持っているはずがない!まさか負けイベントは現実でも適用されると言うのか!?


どうやって回復したんだ!?



「くらぇえ!!オラぁっ!!」


ブンブンと振り回して遠心力を溜めた鉄球が俺に向かって飛んでくる。


あまりの事態にパニックになりながらも、俺は反射的に腰の剣を振るう。



キン!っと澄んだ音と共に運良く当たった剣が、ロンフーの鉄球を切断する。


おぉ!流石は最強格武器。

二軍用とか言ってごめんなさい。


·····よし。切り替えて行こう。

ゲーム同様にロンフーは何かしらの手段で回復をしているのが分かったんだ。


俺達ゲーマーには、取り敢えず殴ってから考える考察すると言う素晴らしい作戦があるじゃあないか。


うん。いつも通りだ。


気持ちを切り替える為に無理矢理口角を上げて笑みを作り、剣を構える。


よーし!パパ頑張っちゃうぞ!



「て、テメェ!剣なんか卑怯だぞ!ま、まさかお前その剣で俺を切ろうって言うんじゃないだろうな!?お前の力で!!」


焦りながら訳の分からん事をほざくロンフー。

わなわなと右手で俺を指さして来る。


握り潰した拳は既に回復し切っている様子だ。



あぁん?何言ってんだこいつ?

どうせ斬った所で何かしらの手段で回復する·····。


待て。何かしらの手段?

道具·····。自動回復する道具。斬られると不味い。

壊れる?いや、そこまで回復量がないのか?


『奇跡の鎧』·····、は裸だから違う。

『生命の指輪』、『癒しの腕輪』·····、いや指や腕にはアクセサリーを付けていない。


じっとロンフーを上から下まで眺める。

上半身は裸、下半身はズボンに革のブーツ、腰にオシャレの為なのか腰布を巻いている·····。



「な、何だよ·····。ジロジロ見やがって·····」


無言で観察されて何だか気まずい雰囲気になっているロンフーを無視して考察を続ける。


布?布製品·····。


デモクエ5のリメイク版!


「そうか!ベリーオラトリオのお土産物屋の暖簾!」

「な、なんでそれを!?」


デモクエ5のリメイク版で追加された新要素。

各地の名産品を集めると言うコレクトクエストがある。


そこにあるベリーオラトリオのお土産物屋の暖簾と言うアイテムがあり、その暖簾に自動回復の能力があるのだ。


「やはりか!お前の異常なタフネスの理由はアイテムによる自動回復だったんだな。」


「あ、しまっ·····。」


タフネスの理由さえわかればこっちのもんだ。

暖簾の回復量は大した事はないしな。


さぁ。第2ラウンドと行こうか!

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