昨晩はお楽しみでしたね
「済まないが、一旦国に帰ろうと思う。」
ローザタウンにある唯一の宿屋。
デーモン・プリーストを倒した俺たちは村人達の好意に甘え、ここで宿をとることになった。
そして何故か当然の様に相部屋にされた俺とステラ。
解せぬ·····。
真剣な表情でステラが告げる。
突然の話に内心動揺しつつも、落ち着いて返事をする。
「えらく急な話だな。何かあったのか?俺に手伝える事があるなら言ってくれ。」
「いや。そうではなく。この度の事を国元へ報告しておいた方がいいと思ってな。1度砂漠を超えてしまうと国元へ帰るのが大変になる。」
あぁ。確かに闇の王が討たれたと言う夢のお告げはそこまで広範囲には知らせれない。
確かゲームでは精々隣の村くらいだったか?
ステラの故郷、アントヘイル王国でも魔王復活は噂になっていたが、その魔王が討たれたという話はまだ届いていないはずだ。
「カーサブランカ王国による闇の王復活のお告げは広く伝わり、民草の不安は日に日に大きくなっていた。ピエトロとローザのお告げでどこまでそれが払拭できたかも分からん。」
せめてここからアントヘイルまでの間だけでも不安の種は何かしてやりたいとの事だ。
「ステラらしくて良い考えだ。なら先に俺もそっちへ━━」
「いや。行くのは私だけだ。シュウには大切な使命がある。それを邪魔する様なことは出来んよ。」
言わんとする事は分かる。
この世界に来てから短期間で2体の魔王クラスと戦っている。
俺がいたから魔王が出てきた可能性があるが、そうでなかった場合は目も当てれない事になる。
そして。次の目的地であるカルカナにはいるのだ。
デモクエ6に出てくる魔王クラスの敵が。
「1度旅の同行を了承したのに勝手を言っているのは分かっている。だが、必ず追いつく。少しだけ私に時間を貰えないだろうか?」
そこには民草の安寧を願う『真紅の戦姫 』がいた。
「そこまで言われたら何も言えんな。だが、早目に戻ってくれよ?相棒。」
「あぁ!必ずだ!」
弾けるような笑顔でステラが答えた。
「それに、父上にはシュウの事を先に伝えとかねばならんしな。勝手に婚約者を決められてもかなわん。」
お前、まさかそっちが本命の目的とか言わないよな!?
「でだ·····。あー。その·····。しばらく会えない訳じゃないか?」
おぉう·····。
このパターンはやばい。そろそろ俺の理性も限界値だ。いや、もうこれは折れてもしょうがない様な·····。
「いや!分かっているんだ!確かに結婚もしていない男女が不純な行為をするのは良くない!シュウもそう考えているんだろう?」
おや?
「確かに。今までの私の行動は慎みに欠けていた。大人なシュウからすると子どもの短慮にしか見えなかったと思う!そこは認めよう!」
おやおやおや?
「だから、だからせめて今晩だけは抱き締めて寝てくれないか?·····これも子どもの我儘みたいだが。
そ、その·····。ダメ、か?」
と、顔を真っ赤にして上目遣いで懇願するステラ。
その子どもっぽい仕草に無条件の信頼を感じる。
あぁ。ステラは俺の事を本当に大人な紳士だと思っているのか。だから騎士の顔ではなく、年相応の、いや、もしかしてそれよりも幼い本心を語っているのだろう。
そう言えば、ステラは国ではスキルのせいもあって、あまり良い扱いを受けていなかったんだよな。
·····なら、俺のやることはひとつだ。
「しょうがない奴だな。ほら。こっちに来い。」
ステラは急に無言になり、そそくさと俺のベットに潜り込む。
ベットサイドの灯りを吹き消し、布団に入りステラをそっと抱き締める。
ステラは俺の胸に顔を埋め安心したように体を預けてくる。
「こんな風に甘えたのは多分初めてだ。好きな人に頼れると言うのはこんなに心地好いものなんだな。」
そう言いながらすぐに寝息を立て出す。
その寝顔は年齢よりもずっと幼く見えた。
「おやすみ。ステラ。」
勿論、俺はステラの年齢以上に大人びた胸の感触のせいで一睡も出来なかった。
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