愛の話。

カーサブランカの東の森の奥深く。

そこには元々名前のないとある隠れ里があった。


戦うことを嫌ったホビットやエルフ、ドワーフ、魔族、人間、果ては魔物までが仲良く暮らす村だ。



そこに、ひょんな事から訪れた魔王ピエトロが心優しき魔族とエルフのハーフの少女、ローザと出会う。


確証はないが、小説やゲームの流れから考えると2人の出会いは1章開始以前からで、この時点で既にローザと魔王は恋仲になっているっぽい。



遥か昔に封印されてしまった大魔王を復活させ、魔族の復権を画策する魔王ピエトロだったが、平和を愛するローザに次第に惹かれ初め、徐々に感化されだす。


小説版ではピエトロの魔族の復権を押す部下達と平和路線のローザとの間で板挟みになって悩んでいる描写が結構ある。



小説版では、4章付近で魔王ピエトロはかなり平和路線に傾きつつあり、種族の隔たりなく平和に暮らすこの隠れ里をローザタウンと名付け、平和の象徴として大きくしようとしていた。


だがしかし、5章中盤に物語の黒幕であるデーモン・プリーストに唆された人間達がローザタウンを襲撃する。


そしてそれを知った魔王は暴走し、事態は急展開を迎える。



つまり、デモクエ4のストーリー展開から考えると、今の段階で黒幕たるデーモン・プリーストを倒しさえすれば、大魔王の復活も防げるし放っておけば勝手に平和路線へ進むだろう。



「――と、まぁこんな感じのお告げを受けてな。取り敢えず、その隠れ里を目指そうかと思う。」


「·····やけに具体的過ぎないか。普通、お告げってもっと抽象的なものなんだが?」




すっかり日もくれ、月明かりを頼りにローザタウンを遠目から監視する俺達。


気分はソリッドなスネイクの叔父様だ。


デーモン・プリーストはこの村から北に少し行った神殿を根城にしている。


原作準拠なら、奴は魔王を裏切る気満々なので、ローザの護衛はしておらず、せっせと陰謀を企てているはずだ。


あまり無闇に近づいて敵に見つかっても面白くないので、村から少し外れた祠付近でキャンプをしている。



「·····まぁ、話の出処は兎も角、確かにこんな所に村があるのは初耳だし、遠目から見ても人間以外が住んでいるように見えるな·····。」


「目的は全部で3つ。村外れの祠で朽ち果てている像から腕輪を入手。次にこの村でお告げの確認。そして、お告げが正確だった場合、件のデーモン・プリーストを倒す。以上だ。」


「 祠にある腕輪の入手って、祀られている神器を盗むって事か!?なんて罰当たりな!何のためにそんな事を!?」


「まぁ、そこに転がってるんだけどな。」


「!?」



暗がりで見ると単なる瓦礫の山に見えるが、倒壊した小さな祠がそこにあった。


祠の中には精霊神ルビシアを象った像があり、その足元には小さな紅い宝石を付けた銀色の腕輪が落ちていた。



『 止炎の腕輪』


猛る心を落ち着かせ、装備者に明鏡止水の心を授ける腕輪だ。これだけ聞くとお手軽悟り開眼グッズみたいだ。


効果は状態異常の完全耐性。

心を落ち着かせれば毒や麻痺も防げるのかは甚だ疑問だが、これを付けるとステラの『 血の衝動』スキルの弊害は一切なくなる。


実はデモクエ4には初期版とリメイク版があるのだが、初期版にはこの腕輪にはバグがある。


有益なバグなのだが、これは今は確認しようもないので、後々のお楽しみだ。



「コイツはステラには有効な装備だし、魔王を倒す為となればルビシア様も許してくれるさ。」


デモクエ4にはルビシアは出てこないけど·····。


「う、うむ。まぁ気乗りはしないが、確かに有益そうな加護だな·····。あれ?しかし、血の衝動の話なんかしたっけ?」


腕輪の力を伝えたら気になるのか、渋々と言った雰囲気を出しつつも素直に装備をするステラ。


危ない危ない。

そう言えば、血の衝動のスキルの話はしてなかったな。


脳筋で助かった·····。



「そう言えば、魔王ピエトロ本人やローザと言う娘には何もしなくて良いのか?何か出来る事があったりしないんだろうか?」


まぁ言わんとすることも分かる。

ピエトロ本人を倒さないにしても、ローザの説得の手助けをする事でよりスムーズに話を終わらせる事も出来るだろう。


しかし·····。



「魔王ピエトロを止めれるのは、ローザの愛だけだ。他人の俺達に出来る事はないだろうさ。」


「なるほど!!そうだな!ローザの深い愛情が魔王の心を救い、争いが止まるのだな!素晴らしい!」



何だかキラキラした目で愛を叫ぶステラ。

この数日で分かったが、普段はキリッとしたまさに姫騎士と言ったステラだが、時たま耳年増な乙女になる。



そもそも男女の関係に、恋愛経験がろくにない童貞と処女が介入出来るはずがないのだ。


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