パワーレベリング
東の森。
カーサブランカの東側を覆う特に名前のない森だ。
ここのレベル帯は高レベル帯の魔物の巣窟となっており、第5章開始時に迷い込んで瞬殺されるなんて事もよくある話の魔境だ。
ザザザザザンっ!
雨音の様な斬撃の音が響き渡る。
俺に迫ってきた犬歯が異常に発達したブレードウルフの群れを、戦士唯一の範囲技、熟練度8スキル『 五月雨』で切り刻む。
「·····この辺りの魔物はやはり強いな。」
剣に着いた血糊を拭いながらため息をつく。
この森の適正レベルは40オーバー。
デモクエ4でも後半に入ってから訪れる事になる森である。
「どの口が言う。全て瞬殺じゃないか。私じゃあこうはいかないな。」
ステラのレベルは第5章合流時点で30固定だ。
合流する時点で28歳、その時にレベル30なら、18、9歳の現在はレベルは20前後くらいではないだろうか。
「俺の腕じゃあ受けに回れば劣勢になるとステラに教わったからな。」
「そのステータスがあれば技などほぼ無用だろうに。どこまで強さを求めるつもりだ?」
呆れた顔をしながら血糊を拭った剣を鞘に収めるステラ。
どこまでだって?無論カンストまでである。
レベルやステをカンストするのは廃人としての嗜みだ。
「最近レベルが伸び悩んでいた所だったんだ。やはりお前に着いてきて正解だったな。既に23まで上がっているぞ!」
ふむ。ゲームと違ってパーティの経験値割り振りが謎なのだが、問題なくレベルが上がった様である。
経験値割り振りについては今後検証する必要があるかもしれんな。
しかし、やはりもう少しステラのレベルは上げる必要があるな。技と剣で何とか倒せてはいるが、火力が足りていない。
現在もパワーレベリング中ではあるが、欲を言えばもう少し効率を上げたい。
【幸福の1歩】は今のパーティでは使えない。
あれは少なくてもステラよりレベルの低い味方が必要だ。
となると、使えるバグ技は限られてくる。
その時、俺の目の端に銀色の光る物体が通り過ぎた。
いた!!!
「ステラ!見つけたぞ!ケーニッヒメタルだ!
追い込め!!」
ケーニッヒメタル。
スライム族の1種で、通常のスライムとは違い、その体は流動性の金属で出来ている。
俺愛用の剣の素材となった魔物である。
ドイツ語の王という意味であるケーニッヒの名前通り、非常に大きな体をしている。
ちなみにドイツ語のケーニッヒ+英語のメタルではなく、メタルもドイツ語だ。
金属は英語でもドイツ語でもメタルらしい。
何故、英語ではなくドイツ語の命名なのかはお察しだ。
初登場はデモクエ4だったと記憶している。
ご存知の諸兄も多いだろうが、コイツは素早さと防御力が非常に高く、すぐに逃げてしまう反面、デモクエシリーズでも最大の経験値を落とす。
通常プレイの場合、デモクエのレベルアップ=ケーニッヒメタルの効率的な狩りの確立と言っても過言ではない。
メタル系に対して特攻のある『斬鉄 』やクリティカルヒット狙いの『 魔人斬』等を駆使する仕様に乗っ取った方法や、【必中魔人斬】や【聖水バク】等のバグ技の発見等、様々な先人達の努力があると言える。
しかし、俺は常々思っていた事がある。
コイツら養殖出来んじゃね?、と。
用意する物は、高さ10メートル程の深い落とし穴。
中は広ければ広い程良い。
これは俺がレベル99のステータスに任せて強引に掘った。
後はそこに追い込み、落としてしまえば逃げられる心配はなくなる。
似たような事を漫画でやっていたので、やはり考える事は皆同じなのだろう。
メタル系のスライム全般に言えるが、コイツらは『 仲間を呼ぶ』と言うスキルを持っている。
適当に弱らせれば、勝手に増えていくと言う寸法だ。
勿論、ケーニッヒメタル以外の魔物が来る事も多いが、それは俺が除去し、ステラにはチクチクとケーニッヒメタル狩りを行ってもらう。
結果は·····。
「れ、レベル87になっている·····だと·····?」
今日1日でもこんなもんだ。
「何か·····何か違う·····!レベルを上げるってこんなんじゃなくて·····!」
何だかステラが、もっと激戦を繰り広げてやら何やらバトルジャンキーな苦悩をしているがそこはそっとしておこう。
実際問題、10年後のデモクエ4の主人公に任せても良いのだが、いるかどうかも謎な勇者に世界の命運を任せると言うのもゾッとしない。
殺れる時に殺るのは基本だろう。
後、第1章終了時点で黒幕たるデーモン・プリーストを倒すとか、歴代最速クリア確定じゃね?と言うデモクエ廃人的な思考もあったりなかったりする。
「確かアリアンデスの英雄ボルテガでもレベル40少々と聞いたぞ?」
おおっと、デモクエ3要素が出てきたぞ!
それはそれで気になるな・・・。
「その話もめちゃくちゃ気になるが、丁度辺りも暗くなってきたし、そろそろ·····。」
「ま、待て!するならせめて水浴びを·····!」
汗かいちゃったしと、のたまう桃色娘を小突く。
俺はいい歳をした大人なので、その汗は我々の業界ではご褒美ですと言う言葉をグッと飲み込んだ。
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