肉食系王女


『 ステータスの種』等のドーピングアイテムを使わない場合、デモクエ4で1番ステータスが良いのがステラと言われている。


戦士ゆえに魔力系の数字は0だが、力や体力、守備力やHP等の伸びが良く、速さも決して低くない。戦士と武道家のステータスの良い所取りをした様な性能だ。最後まで第1線で使う諸兄も多いかと思う。


はっきり言ってステラは強い。


ステラは小説や漫画では主人公の剣の師匠をしていた武人だ。小説準拠なら元々は国の騎士団に入っており、10代にも関わらず、国1番の剣士として名を馳せていたらしい。


剣の腕は向こうが遥かに上だ。



城から出た先の広場で距離を置いて向かい合う。


俺としてもレベルこそカンストしているが、剣の腕はただの素人。実際の戦士と腕比べをすると言うのは決して悪い話ではない。


当然そこに下心はない。

ないったらない。


本当だよ!リリーたん!



お互い鞘をつけたままの剣を抜けないように紐で縛り付け、構える。


この世界に来るまで剣なんか握った事は無い。

取り敢えず、見様見真似で正眼に構えてみた。



「ふむ。変わった構えだな。盾は使わないのか?」


「ああ。これで良い。」



嘘である。本当は盾を持っていないのだ。


カジノで手に入るのはケーニッヒメタルの剣と鎧だけである。


本来はそこに兜と盾があるのだが手に入れられなかった。他の武具で代用するにしてもベリーオラトリオの武具屋の品揃えが今ひとつだったので、そのままだったのだ。


ちなみにケーニッヒメタルの盾と兜は、伝統的にゴールドメダルと言う世界中に散らばったメダルを集め、メダルを集めているコレクター王と言う王様の所に持って行くとメダルと引替えで手に入る。



「なら条件を合わせよう。」


そう言うとステラは赤く染め上げた盾を外し、剣を

肩に担ぐ様に構えた。



「胸を貸してもおう。」



むしろ借りるのはこっちだ。

·····あのけしからん胸を借りれるなら是非貸してもらいたい!



ゴゥっと広場に強い風が流れる。

その刹那。


ステラと俺の剣がぶつかり合う。

まるで車がぶつかった様な大きな音と共にステラが吹き飛ぶ。

このままステータス差で一気に畳み掛ける!


そのままの勢いで体勢を崩したステラに襲い掛かる。


「とんでもない力だな。ここまで吹き飛ばされたのは初めてだ。」


くそっ!立ち直りが早い!

もう体勢を戻し、迎え撃って来るステラ。


そのまま数度剣を打ち付け合う。

剣が合わさる度に火花が散り、轟音が響く。


鍔迫り合いの駆け引きなんざ俺には出来ない。

動きこそ俺の方が早いが、剣筋も動き出しもステラの方が圧倒的に早い。

やべぇ!当てられる!


ええい!このままぶっ飛ばす!

闇雲に力を込めて全力で剣を振る。


今日1番の轟音が響き渡り、俺とステラの剣が弾け飛ぶ。




「·····相打ち、かな?」


剣自体はステラの方が早かったが、体に当たる寸前に俺の剣がステラの剣に当たり、運良く弾け飛ばせたようだ。


「同情なら辞めてくれ。どう見ても私の負けだ。」


吹き飛んだ剣を見ると、俺の剣はなんともなかったが、ステラの剣は大きくひしゃげていた。

もう使い物にならないだろう。


「剛よく柔を断つとは言うが、ここまでステータス差があれば、技だけでは太刀打ち出来んのだな。力の強い者が勝つ。確かに真理の一つだ。」


「俺は力比べに勝っただけで、剣士としてはアンタが上だ。俺は力の強い素人に過ぎん。後は剣の質だろうな。」


ステラはせいぜい鉄の剣か鋼の剣。

対して俺はケーニッヒメタルの剣だ。

そりゃバチバチ当て合うとステラの剣が負けるのは必然だ。

と言うか、よく1合目で折れなかったと拍手を送りたい。



「まぁ良い。今回は勉強になったよ。さて。宿屋に向かうか。部屋は取っているか?」


ん?確かにそろそろ夕方だし、この街で宿は取るつもりだったが·····?


話が若干見えなくて不思議そうな顔をしていると、

ステラが呆れた顔で告げてくる。


「おいおい。まさかこの場でするのか?これでも一応、生娘なんだ。水浴びくらいはさせてくれ。」



優しくしてくれると嬉しいぞと、顔を少し赤らめるステラ。


据え膳は恥だと言うが、流石にこれはなぁとヘタレた俺は、誤魔化す様にステラを軽く小突いた。


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