最終話
2人を人気のない展望台に呼び出す。
人がいないからこそ話しやすい。
聞かれる心配もしなくていい。
外という条件もいい。
苦しくなる胸を少しでも軽やかにしてくれる。
「待たせたかしら?」
と先に来たのはいじめられっ子。
最近はいじめに屈しない姿勢からいじめるのが無駄だと気付いたのか、いじめてる自分の惨めさに気付いたのか、収まっていって、今では全くいじめられていない。
とは言っても、今までいじめてしまっていた反動でお互いどう話しかければいいか分からないというのが現状らしい。
「来てくれてありがとう。でもまだあの子も来てないね。」
「貴女のために来るなんて当然じゃない。あの子……気合いの入れた服装と髪型してくるかもね。」
コンタクトの子の方はと言うと見事にイメチェンを果たし、今では控えめな性格も相まってクラスの人気者になっている。
背が小さい、胸が大きい、顔も可愛い。
妹キャラ扱いされている。
しかし、そこまで変貌できたのも彼女自身が自分を変えようと少しでも前に進んだからだ。
私もあんなに変われるのだろうか。
しばらくして、その子が来た。
「お待たせ〜。ごめんね!!服が決まらなくって…。」
いじめられっ子と笑ってしまう。
「やっぱり私の言った通りでしたわね!!」
何の話?とキョトンとするコンタクトの子を置いておいて笑い合う。
このまま決めたことを言わずに時間が過ぎ去って、3人で遊びに行けないだろうかなんて淡い期待を裏切るように、さて、といじめられっ子が切り出す。
「私達を呼んだ理由はどっちにするか決めたってことでいいのよね?」
ごくりと唾を飲み込む。
しかし、こんな助け舟を出された以上、引く訳には行かなくなった。
「うん。」
「じゃぁ、まず私から。貴女が仮にどちらを選んだとしても私はこの3人で遊びたいのには変わりないわ。それだけは分かってちょうだいね。」
「わ、わたしも!!この3人だわからこそここまで支えあえたと思うの…。」
「そっか。2人ともありがとう。私もね、すごく悩んだ。どっちと付き合うかって。そもそも最初は付き合えるなんて思えてなかった。私には自分がなかった。周りに流されて、ちやほやされて、適当に生きることが出来てしまっていた。でも、この選択は私自身、誰の意見や指図を受けていない、正真正銘私の選択。」
「私と付き合ってください。」
と片膝をつき、手を差し伸べるように求る。
おそるおそる差し出された手の甲にキスをし、その人の顔に自分の人生で初めての満面の笑みを向けたのだった。
10年後。
私と同棲しているのは未だに大人とは思えない幼さい見た目とサイズ感のコンタクトの子。
毎夜行為をし、毎夜愛を囁きあい、毎夜お互いが好きなのを確認している毎日。
時折、バリバリのエリートキャリアウーマンとして働いているいじめられっ子から連絡が来て、3人で仲良く遊んだり、愚痴を言い合ったりしている。
いじめられっ子は未だに恋人ができないそうだ。
曰く、貴女みたいに私に相応しい人がいないとのことだ。
そして、私とコンタクトの子を見る度に
「貴女達ほんとお似合いね。私じゃ役不足だわ」
と褒めてくれるのだった。
Fin.
みんなの王子様 ネルシア @rurine
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