第5話

「えっと…。」


と固まる私。

確かに女の子は好きでこの子もコンタクトの子も恋人として付き合いたいとも思う。

けれど、いま現段階でおいそれとはい、付き合いますとは言えない。

だってコンタクトの子の意見を聞いていないのだから。

それすら理解しているかのように話し始めるいじめられっ子。


「やっぱりあの子と私で悩んでいるんでしょう?無理もないわ。あの子が貴女に告白して心を決めたら改めてお返事聞かせてくれないかしら?私はもし振られても今まで通り仲のいい友達として一緒にいたいのだけれど…。」


「もちろんいいよ。やっぱり優しいね、貴女は。」


「だって私だけ先駆けして不公平ではなくて?公正に選ばれたほうが私もあの子も嬉しいだろうし、貴女を愛しているからこそ貴女の意見を大事にしたい。」


「わかった。」


2人して心を落ち着かせるようにコーヒーを飲む。

やはり、どこにでもあるようなチェーン店やファストフード店のコーヒーとは比べ物にならないほど美味しく、お互いに落ち着いたと言わんばかりにふぅと息を吐き出す。


「さて、そろそろイメチェンの結果をチェックしに行くわよ!!お会計お願いしまーす。」


声をかけると先程の初老の男性がやってきて、お会計を済ます。

割り勘にしようと言ったのだが、私の無理矢理な発言をしてしまったお詫びと言うことで奢られてしまった。


喫茶店を出て、美容院に戻ると、丁度髪を整え終わったコンタクトの子が鏡を見て最終確認していた。

その髪型を見て、こんなにも人って変わるものなのかと驚きを隠せなかった。


「やっぱり私の目に狂いはなかったようね!!」


と自信満々に胸を張るいじめられっ子。


「すごく可愛くなってる…。」


ぽつりと自分もつぶやく。


「え?えっと…その…うぅぅ…。」


褒められていないのかそわそわ落ちつかない様子。

かなり高額になってしまったが、ここまで人が変われるのなら充分な額を払い、美容院を後にする。


切り終わった新しい髪で落ち着かないのか手で髪の毛をいじるコンタクトの子。


「ねぇ、ほんとに似合ってる?」


と次にどの洋服店に入るか悩んでいる間、何回も聞いてきた。


その度に私といじめられっ子は大丈夫だよ、ちゃんと似合ってると褒める。

それに照れてまた髪をいじり出す。

というイタチごっこをしていた。


「次は洋服ね!!」


確かに顔と髪は別人かと思えるほどに変貌を遂げたが、私服が言っては悪いがナンセンス。

ここでも私の出番は無く、2人で何十着も試着をし、2人が納得した洋服を何着か選ぶことに成功した。

店員に購入した服をすぐに着れるように頼み、元から着ていた服を袋の中に入れてもらった。


「これで完璧!!」


うんうんと外に出て、コンタクトの子を見ながらいじめられっ子が頷く。

少し胸元が大胆な洋服だが、あんたの大きさならこれくらい男を引き付けないと!!という主張と自分を変えたいというコンタクトの子の思いで辿り着いた洋服らしい。

私も恋愛対象を女性としているため、どうしても洋服から見えている谷間に目が行ってしまう。


「あ、私急用が出来てしまいましたわ!!あとは2人で楽しんで!!」


といじめられっ子がウィンクを私に送ってきた。

こいつ、やりやがったなと思いつつもコンタクトの子と次にどこに行くか尋ねる。


「どこか行きたいとこある?」


「……この近くにある縁結びで有名な神社に行きたいです。」


ドキッとした。

1日に2人から告白されるの?

私が?

願っても無い事だが、いじめられっ子との事を話さないといけないことを思うと少し胸が苦しくなる。

しかし、断る理由はない。


「わかった。行こうか。荷物持つよ。」


「少し重くて疲れてたんだ。ありがとう。」


素直に好意を受け取ってくれてホッとする。

荷物を変わりに持ち、神社へと足を運ぶ。

道中、何を話せばいいかわからない私と告白しようと決意してるのが伺える顔のコンタクトの子。

そんな2人が神社につくまで会話が無かったのは自然なことだった。

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